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【プライド月間】6月26日、世界各地でプライドパレードやデモが行なわれました

6月26日(日)、3年ぶりのリアル開催となるニューヨーク・プライドをはじめ、世界各地でプライドパレードやデモが行なわれました。日本でも小樽プライドや、TRPの「プライドトークライブ」などが開催されました。

 6月26日(日)、ニューヨークで3年ぶりにニューヨーク・プライドのパレードがリアル開催されたのをはじめ、世界各地でプライドパレードやデモが行なわれました。

 1969年6月28日(日)未明にニューヨークのゲイバー「ストーンウォール・イン」で起こったストーンウォール事件を記念し、翌1970年からニューヨークやサンフランシスコなど米国各地で6月の最終日曜日にプライドを冠したパレードが行なわれてきました。2019年にはストーンウォール50周年を祝い、全世界から400万人とも言われる人々がニューヨークに集い、ワールドプライドが開催されました。2020年、2021年とコロナ禍の影響でパレードがリアル開催されずにいましたが、今年、3年ぶりにニューヨーク・プライドのパレードがリアル開催され、およそ2万〜3万人が五番街などを行進し、沿道には100万人を超える観客が集まり、プライドを祝いました。
 パレードに参加したレズビアンの方は、「自分にとってはここがホーム。歓迎されていて安心できる場所です」と、ゲイの方は、「祝福するためだけでなく私たちの権利を求めて戦う必要性があることを伝えるために参加しました」と語っていたそうです。
 24日、連邦最高裁が人工妊娠中絶を憲法上の権利として認めない判決を言い渡したことを受けて、「安全で合法な中絶を守れ」などと書かれたプラカードを掲げ、抗議の声を上げる参加者が目立ちました。沿道から声援を送った高校教諭のジョシュ・ヘイグさんは「最高裁の判断は信じられない。何年も、何十年もかけて『自分の体のことは自分で決める』という世界をつくってきたのに、後退した」「同性婚などLGBTQの権利も失われかねない。いま行動する必要がある」と語りました(※現に、最高裁のトーマス判事は「同性婚の権利についても再検討すべき」と発言しており、コミュニティ内に危機感が広がっています。GLAADのサラ・ケイト・エリス氏は声明で「アンチ中絶とアンチLGBTQは同じ勢力だ。どちらも私たちの体に対するコントロールを否定し、私たちがありのままに生きることを危険にさらしている」と訴えました)
  
 ニューヨークでは、ニューヨーク・プライドが商業的になりすぎたとの批判から、ストーンウォール事件直後のプライドパレードの原点に立ち返ろうとするデモ行進「Queer Liberation March」も行なわれています。今年は、トランスジェンダーや有色人種の社会的課題、(中絶禁止判決を受けた)性と生殖に関する権利、ボディ・オートノミーなどをスローガンに掲げて行進しました。

 
 サンフランシスコでも26日、ニューヨークプライドと同じ長さの歴史を誇るサンフランシスコ・プライドのパレードが開催されました。3年ぶりに再開されたパレードでは、活動家のVinny Eng(黃永利)さんがグランドマーシャル(パレードの先頭を務める人)の一人となりました。アジア系の人々へのヘイトクライムが増加している米国において、BLMだけでなくアジア系という人種的マイノリティも支援していこうという意味が込められています。ナンシー・ペロシ下院議長などもパレードに参加し、レインボーカラーな衣装を着た参加者とともに市内中心部の目抜き通り・マーケットストリートなどを行進しました。
 サンフランシスコでもやはり、中絶禁止判決への抗議が行なわれました。1990年から参加しているというジョン・マガロングさんは、中絶禁止判決について「女性は自分たちの選択肢を持てるべきだ。とても残念だ」と、同性婚などにも影響が広がる可能性を「懸念している」としながらも、状況は「いつか変わると信じている」と語りました。地元のラジオ局で働くセシリア・ビジルさんは「腹立たしく思っている」「彼らは同性婚もやめたいのだと思う。我々は前進ではなく、後退しているように感じる」と語りました。

 
 一方、エルドアン政権下のトルコのイスタンブールでは、今年もプライドパレードを警察が阻止し、解散に追い込みました。参加者らはイスタンブール中心部のタクシム広場近くでシュプレヒコールを上げたものの、警察は参加者や活動家ら200人以上を拘束したと報じられています。

 
 日本でも26日、北海道の小樽で第3回を数える小樽プライドのパレードが開催され、過去最高となる100名近い方たちが参加しました。
 花園グリーンロードでの開会式では、参加者の一人が「小樽プライドという自分の居場所があることを歩いて伝え、誰もが自分らしくいられる街にしたい」と決意を語り、来賓として招かれた迫俊哉市長は「偏見をなくし、平等で暮らしやすい街にしていきたい」とスピーチしました。
 参加者は花園銀座やサンモール一番街などの商店街を約1時間かけて歩き、LGBTQへの差別の解消を訴えるうちわを配りました。終了後、事務局長の方が「沿道で手を振ってくれる人が前回よりも増えた一方で、自分は関係ないと目を背ける人もいた。今後もセミナーを開くなど、理解を広げる活動にしっかり取り組みたい」と話していました。

 
 また、同日、新宿駅南口では、Transgender Japanと、トランスジェンダーへの人権侵害に抗議するデモを行なう「ありえないデモ」の2団体がトランスジェンダーをめぐる法制度の課題を訴え、差別に抗議するデモを開催しました。
 Transgender Japan共同代表の浅沼智也さんは「戸籍の性別を変更する要件はすごくハードルが高い。要件の緩和や撤廃をしなくてはいけない時だ」と訴えました。
 「ありえないデモ」呼びかけ人の頼(たのみ)さんは「トランスジェンダーを差別しているありえない制度に、『ありえない』と声をあげてほしい」と語りました。
 現行の性同一性障害特例法では、未婚であること、未成年の子がいないこと(子なし要件があるのは日本だけ)、生殖機能を失う手術を受けなければいけないこと(世界保健機関(WHO)をはじめ国際社会で人権侵害だと批判されています)など、法的性別変更に厳しい要件が課されています。そのため、法的性別変更ができない人、断種手術を受けることをためらい、法的性別変更を保留にしている人、断種手術を望んでいないのに仕方なく受ける人などもいます。WHOの国際疾病分類(ICD)からはすでに“性同一性障害”という言葉が消えているにもかかわらず、法の見直しは一向に進んでいません。日本学術会議が提言しているような「性別記載変更法」の制定が望まれるのではないでしょうか。

 
 それから、25日、26日の2日間、TRPの「プライドトークライブ」がオンライン配信されました。
 1日目は「JAPAN PRIDE NETWORK」の全国各地のプライドの代表が集まり、「プライドイベントを持続的に開催するための資金の確保が難しい」など、様々な課題について話し合われたほか、「する?しない?カミングアウト -自分らしさとLGBTQ-」では、ロバート・キャンベルさんが登壇し、「カミングアウトできる人が多ければ多いほどいいけど、個人個人で見たら、安全かどうかが大事」「もっとゆるやかな段階があるといいね」「パッと燃えて、すぐに凪になることもある。案ずるより産むが易し」など、素敵な言葉をたくさん語ってくれたほか、多重のマイノリティ性を抱えた方が声の出演で「社会にいないことにされているという状況で、いるってことを伝えなくてはいけないからカミングアウトが必要。そこに当事者がみんな乗らなければいけないわけではなく、言ったらどういうことになるかわからない恐怖を与えているのは社会のほう。誰の責任かというと社会であり、個人ではない」など、素晴らしいコメントをしていました。「LGBTQと同性婚」では、SHELLYさんや大江さん&小川さんカップルが登壇し、大阪地裁判決にも触れつつ、現行の婚姻制度の不平等さについて話し合いました。「LGBTQと老後」では、介護経験者である元文京区議の前田さんやバビ江さん、鳩貝さんらが登壇しました。バビ江さんの「今までにゲイの友達がたくさん亡くなっていて。母の介護の時は、QOLを大切にしたいと思いました」というコメントや、ブルボンヌさんの「社長が突然、意識不明の重体になったのですが、20年来の同性パートナーの方がなかなかコンタクトがとれなくて、大変だったんです」といったコメントに、身につまされる思いがした方も多かったと思います。
 2日目は「LGBTQとアライ」「ユース世代とLGBTQ」「LGBTQとメディア」「LGBTQと子育て」というテーマでした。「LGBTQとアライ」では企業のダイバーシティ推進に精通するAllies Connectの東由紀さん、一般企業に勤務する2名のアライの方が登壇し、アライとして何ができるのかを話し合いました。「ユース世代とLGBTQ」では、ユースプライドジャパンの3名が登壇し、「L/G/B/T/Q」という枠組みにこだわらない「性のグラデーション」などについて話し合いました。「LGBTQとメディア」では日テレの谷生俊美さんや松岡宗嗣さん、小島慶子さんが登壇、谷生さんが「5年前は深夜にLGBT映画祭をやるのにもすごく苦労しましたが、今年TRPにブースが出たことには本当に感動しました」と語っていらしたのが印象的でした。小島さんの「当事者はずっとSOGIについて聞かれ、説明を求められる」という指摘に対し、松岡さんが「マジョリティはなんで?って聞かれないですよね」「トランスジェンダーの方も、トランスジェンダーの視点でばかり語っているわけではない。”トランス女性という本質”があるわけではなくて、世間でマイノリティとされて社会的困難に直面しているがゆえに、あえてそのことを拾い上げて語ることもある。矛盾しているようだけど、そうではない」と語るなど、たいへん奥深い、有意義な議論が展開されました。「LGBTQと子育て」では、実際に子育てをしている当事者とオンラインでつながり、日々の暮らしや子育てにまつわるエピソードなどをお伺いしました。
 「プライドトークライブ」はYouTubeライブとTwitter配信を含め、2日間でのべ140万人超が視聴したそうです(とてもいいお話だったのですが、土日にお仕事だったり用事があったりしてご覧いただけなかった方も多いはず。YouTubeにアーカイブが残らないのが残念ですね)

 
 
参考記事:
性的マイノリティーの人たちに理解を NYで3年ぶりにパレード(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220627/k10013690161000.html
ニューヨークで「LGBTQ」などの権利向上を訴える世界最大規模のパレード(日テレ)
https://news.ntv.co.jp/category/international/5c6681d344454e8e8fa0258ac2dc8c73
3年ぶりNYプライドパレード 「中絶の権利」主張も(テレ朝)
https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000259281.html
全米でLGBTQ+パレード、最高裁の中絶判断に抗議も(ロイター)
https://www.reuters.com/article/gay-pride-usa-idJPKBN2O801E
LGBT「臆せずに」行進 NYで3万人、3年ぶり(共同通信)
https://www.47news.jp/news/7969612.html
「同性婚の権利も危うい」 米各地でデモ、中絶巡る最高裁判決に抗議(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASQ6W2FBVQ6WULFA001.html

The best photos from San Francisco Pride 2022(SFGATE)
https://www.sfgate.com/local/article/best-photos-from-San-Francisco-Pride-2022-17263710.php

性的少数者パレードを警察が阻止(共同通信)
https://nordot.app/913933046037233664?c=39546741839462401

多様な性、認める社会へ 小樽でパレード、90人参加(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/698293

「トランスジェンダーへの差別に抗議」法制度の課題訴えデモ 東京(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20220626/k00/00m/040/170000c

【イベントレポート】「“性”と“生”の多様性」を祝福する祭典、2ヶ月にわたる「東京レインボープライド2022」が終了(PR TIMES)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000075635.html

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