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「帰国すれば終身刑」タンザニアから逃れたゲイカップルが難民申請を切望しています

2022年07月23日

 アフリカのタンザニアから逃れてきた兵庫県在住のゲイカップルが日本で難民認定を求め、「帰国すれば終身刑となる可能性がある」と訴えましたが、すでに2回、申請を却下されたそうです。日本でも2018年に初めて、母国での迫害を理由に同性愛者の難民認定が出ています。今回のケースも同様に認定していただけるよう、お願いしたいです。
 
 
 アフリカでは、全55ヵ国のうち35ヵ国で同性間の性交渉が違法とされ、ソマリア、ソマリランド、モーリタニア、ナイジェリア北部では死刑にされる可能性が、ウガンダ、タンザニア、シエラレオネでは終身刑を科される可能性があります。
 アムネスティのレポートにあるように、タンザニア政府は2018年、LGBTQを摘発する専門チーム(通信局、警察庁、メディア)を立ち上げ、LGBTQの特定と拘束を開始、市民に対して周囲にLGBTQがいれば通報するようにと呼びかけました。政府が堂々とLGBTQを迫害…チェチェンよりもひどいです。また、ゲイ・バイセクシュアル男性へのHIV予防啓発の活動が停止を余儀なくされています(活動家が逮捕されたり、診療所が閉鎖れたり、治療が中断されたり…)。このような国でゲイカップルが暮らしていくことは困難でしょう。
 
 難民認定を求めているのは「特定活動」の資格で日本に滞在する三木市の20代男性(仮にMさんとします)と稲美町の40代男性(仮にIさんとします)。お二人は2017年頃にタンザニアのダルエスサラームで知り合い、おつきあいを始めました。が、Mさんが同性間性行為で2019年に逮捕され、母親の助けで保釈された後、仕事で取得していた短期商用ビザを使って2020年1月に日本へ逃れました。その後、同時期に来日したIさんとともに、名古屋出入国在留管理局(入管)と大阪入管神戸支局に難民認定を申請しました。しかし、タンザニア警察による捜査や政府の迫害を受ける恐れがあるとの訴えに対して「信ぴょう性が認められない」と却下されました。お二人は知人を通じ、在留外国人らの支援に当たる「神戸移民連絡会」)に相談し、同会は「彼らは同性愛者であり、タンザニア政府は同性愛者を取り締まっている。客観的に帰国すれば危険なことは明白だ」とし、3回目の申請に向けて準備を進めているそうです。
 
 タンザニア研究で知られる立命館大大学院の小川さやか教授は、同性愛者が迫害を受けるだけでなく、「十分な捜査や適切な裁判が行なわれないまま収監される場合もある」と指摘します。そのうえで「いわゆる『偽装難民』でないことを慎重に判断するのは重要だが、発展途上国では証拠書類などで逮捕歴を証明するのは難しい。帰国することで危険にさらされる場合は難民として保護すべきで、入管は各国の事情を考慮して適切に判断してほしい」と求めています。

 
 難民の認定手続きは、母国で人種や宗教、政治的意見などを理由に迫害を受けるおそれがある外国人を出入国在留管理庁が審査し、決定します。同庁が2021年に認定した難民は74人で、認定制度が始まった1982年以降で最多ですが、年間1万人以上を認定する欧米各国と比べれば極めて少ないのが現状です。
 LGBTQの難民申請をめぐっては、2005年、死刑を怖れてイランから逃れて難民申請していたシェイダさんに対し、最高裁が「同性愛者であることを黙っていれば生きていけるだろう」として強制送還を言い渡すという残酷な判決を下しました。幸い、シェイダさんは第三国に出国し、強制送還を逃れました。
 そこから10年余りが経って、日本社会でもLGBTQのことが広く認知され、裁判官や省庁の方々も基本的な事柄(SOGIは本人の意思で変えられるものではないということなど)を理解するようになったのではないかと思われますが、2018年に日本で初めて、同性間の性行為を理由に出身国で逮捕され、保釈中に来日した外国人が難民認定されました。出入国在留管理庁の公表資料によると、同性愛者であることが「迫害のおそれがある特定の社会的集団の構成員」だと認められたものです。
 
 ただ、認定NPO法人難民支援協会は「日本の場合、母国政府から個別に迫害のターゲットとして把握されていないと難民認定されず、国連難民高等弁務官事務所の求める基準に達していない」と指摘し、「カミングアウトするだけで『ムラ社会』から迫害を受けるLGBTQのような申請者にはハードルが高すぎる」としています。

 タンザニアのMさんとIさんの場合、個別に迫害のターゲットとして把握されていることを証明するのが難しいでしょうし、小川教授のおっしゃるように「帰国することで危険にさらされる場合は難民として保護すべき」ですよね。ぜひ2018年の時と同様、難民認定を出していただきたいと強く願います。
 
 
参考記事:
「帰国すれば終身刑」タンザニアから逃れた同性愛カップル 2度却下も難民申請を切望する理由(神戸新聞)
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202207/0015491985.shtml

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