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ウクライナのゼレンスキー大統領が婚姻と同等の権利を認める「シビルパートナーシップ法」を認める方針を表明しました

2022年08月04日

 ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領が、婚姻の平等を求めた署名嘆願に応え、同性カップルの権利保障に道を開く方針を明らかにしました。大統領は、同性婚を合法化するためには憲法を改正する必要があり、戦争が続く間は不可能だとしながらも、政府は人権と自由を保障する観点から男女の婚姻と同等の権利を認める「シビルパートナーシップ法」の合法化によって解決策を見いだしたと述べました。


 ウクライナでは、ロシアによる侵攻の長期化によってLGBTQの従軍者が増え、結婚した市民と同等の法的保護を認めるよう求める声が強まっていました。たとえ同性パートナーが戦死しても、法的な婚姻関係がないため、パートナーが最愛の人の遺体を引き取れないなどの問題が生じています。英BBC放送のインタビューでウクライナのLGBTQ団体の幹部は、「LGBTQの人たちも、戦闘で負傷したパートナーを見舞ったり、パートナーの遺体を引き取ったり、あるいは政府から補償金を受け取ったりできるようになることが必要だ」と語りました。
 そして6月3日、「今の私たちには、毎日が人生最後の日となるかもしれません。どうか、同性カップルにも正式な家族の証明を与えてください。同性カップルも伝統的なカップルと同じ権利が必要なのです」と訴え、同性婚の合法化を求めるオンライン請願書が大統領の公式サイト上にに公開されました。これまでに2万8000以上の署名が集まりました。署名が2万5000を超えると大統領に請願の内容を検討する義務が生じます。
 ゼレンスキー大統領は大統領府の公式サイトへの投稿で、署名を寄せた2万8000万人余の積極的な行動に謝意を表し、「ウクライナ憲法によると結婚は女性と男性の自由な同意に基づくとされている。戒厳令あるいは非常事態が続く間はウクライナ憲法の改正はできない」としながらも、閣僚と連携して国民全員の権利と自由を保障すると強調し、「現代世界において、民主主義社会の水準は、全国民の平等な権利保障を目指す国家の政策を通じて測られる」と述べました。
 
 ウクライナではソ連崩壊後に同性間の性交渉が非犯罪化されましたが、教会が政治に影響を与え、社会は保守的で、LGBTQへの嫌悪は依然として根強いものがあり、法によるLGBTQの保護や権利保障はほとんど進んでいませんでした(国は、住居や雇用に関するLGBTQ差別禁止法には支持の姿勢を見せていましたが、いま現在存在するLGBTQの権利に関わる唯一の法律は、「職場でバックグラウンドなどによる差別をしてはならない」という規定のみです)。米国のピュー研究所による2019年の調査によると、ウクライナで「同性愛は社会の中で受け入れられるべき」と答えた方の割合は14%に留まりました(ロシアとあまり変わらない数字です)
 2012年には初のキーウ・プライドが開催されましたが、何百人もの極右・ネオナチなどの集団が現れて脅迫行為をしはじめたため、パレードは中止を余儀なくされました。何人かの活動家が暴行を受け、負傷しています(詳細はこちら)。再び同性間の性交渉を非合法にする動きもありました。しかし、ロシアとは異なり、LGBTQ団体の活動やプライドパレードの開催自体が制限されることはなく、キーウ・プライドなどの団体の努力で少しずつ社会も変わってきました。2019年のキーウ・プライドには約8000名が参加したそうです。
 今年2月にロシアの軍事侵攻が始まり、もしロシアに占領されてしまうと国内のLGBTQの命が危険にさらされるとの懸念が高まり、国外に避難する方たちもいました(国連でも活躍するLGBTQ団体「Outright」が避難するウクライナのLGBTQのためのシェルターを用意する活動を立ち上げました)。しかし、トランス女性の方は、パスポートが男性表記であるため、国外に出ることができず…という問題も生じました(詳細はこちら)。日頃から脆弱な立場に置かれた人々が、戦禍によりさらに追い込まれてしまう状況が浮き彫りになりました。
 しかし、ポジティブな変化もありました。軍事侵攻後、メディアで「LGBTQ+も戦争のフロントラインにいる」ことが報じられ、「同じように命を危険にさらしているのに、なぜ同じ権利を持っていないのか」と人々の意識が変わってきたそうです。LGBTQを弾圧する「ロシアとは違う価値観」を志向する動きが高まっていました。

 今年は戦時下のため、ウクライナのキーウプライドがワルシャワでの開催となり、6月25日にワルシャワプライドと合同で開かれたそうです。認定NPO法人Dialogue for Peopleの安田菜津紀記者によると、数万人の人々が集い、人権と平和のために声を上げたといいます。

 今回、ゼレンスキー大統領が初めて同性カップルの権利保障を認める意向を表明したのは、このような背景がありました。
 「シビルパートナーシップ法」が無事に成立し、自身やパートナーが戦場に行く可能性のあるゲイの方たちのパートナーシップが結婚と同等に扱われるようになりますように(また、トランスジェンダーの方のパスポートの性別変更も認められるようになるといいですね)
 そして、一日も早くウクライナに平和が戻り、復興が始まり、LGBTQの権利回復がさらに進んでいくことを祈ります。

 
参考記事:
ウクライナ大統領、同性間の婚姻関係認める方針を表明(CNN)
https://www.cnn.co.jp/world/35191425.html
ゼレンスキー大統領は同性婚を認めるか?(Yahoo!)
https://news.yahoo.co.jp/byline/inosehijiri/20220727-00307479
「それでも、変化のうねりは止められない」――ウクライナへの軍事侵攻と性的マイノリティの声(Dialogue for People)
https://d4p.world/news/17438/
フォトジャーナリスト 安田菜津紀さん 先送りできぬ問題(中日新聞)
https://d4p.world/news/17438/

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