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犯罪被害者給付金不支給訴訟で名古屋高裁が控訴を棄却、「社会的な意識が醸成されていなかった」 

2022年08月27日

 同性パートナーを殺害された内山靖英さんが、パートナーが同性であることを理由に「犯罪被害者給付金」を支給しなかった愛知県公安委員会の裁定の取消しを求めて起こした訴訟の控訴審判決で、名古屋高裁(永野圧彦裁判長)は8月26日、原告の控訴を棄却しました。原告は上告する方針です。

 控訴審では、パートナーが同性であることを理由とした不支給が法の下の平等を定めた憲法14条に違反するかどうかが大きな争点となりました。
 判決は、犯給法が定める遺族の範囲は民法上の親族に関する概念に基づくとし、配偶者は「婚姻の届け出ができる関係であることが前提」だとして、同性間の事実婚を含めれば「条文の解釈から逸脱する」と結論づけるものでした。ただし、殺害されたパートナーが同性か異性かで精神的苦痛は左右されないとも指摘し、同性パートナーを保護する立法措置が講じられ、異性婚姻関係と同視する社会的な意識が醸成された場合には、同性か異性かで異なる扱いをすることが「立法府の裁量権を逸脱したと評価される可能性がある」と付言しました。

 最高裁は2021年3月、同性カップルも婚姻に準じた関係であり、法的保護の対象になると認めています。にもかかわらず、名古屋高裁が「社会的な意識が醸成されていなかった」ことを理由に同性パートナーシップを事実婚と認めなかったのは、昨年6月の一審の「社会通念」を理由として不支給を容認した判決と変わらない、司法の役割を放棄するものなのではないでしょうか。
  
 弁護団は判決後、報道陣の取材に「本当に残念。(同性パートナーが)多数派の常識になるまであと何十年待てばいいのか。非常に高い壁を感じた」と語りました。

 判決後の記者会見で 代理人の堀江哲史弁護士は、「パートナーシップ制度が次々につくられるなどの、地方自治体や企業の社会のニーズに応える工夫や努力を全く無視している判決で、いったいどのような状況になれば同性パートナーをめぐる社会的意識が醸成されたと認定するのか不明確です」「なぜ同性間について事実婚が成立する余地すら認められないのかは、説明されていません。具体的事実関係にかかわらず、一切の適用の余地を否定しており、端的に差別的です」と批判しました。
 そして、パートナーを失ってから言葉を発することができない状態が続く原告の内山さんのコメントを、堀江弁護士が読み上げました。「共同生活者が殺害された場合、同性パートナーか、異性パートナーかということが、精神的な苦痛の大小を左右すると認められないと書いてありました。それでも遺族とは認めてもらえなかった。パートナーが殺された悲しみが同じでも、社会的な意識が足りないからダメだと言うなら、これを差別というのではないのですか」
 
 長年一緒に暮らしたパートナーを殺害された悲しみは、異性であろうと同性であろうと変わりません。東海テレビのコメンテーターの方も述べていたように、いまは国も、たとえDVで親が亡くなった場合でも夫婦間の犯罪だからといって子どもへの支給をしないということはなく、できるだけ広く犯罪被害者給付金を支給しようとする姿勢です。にもかかわらず、不支給という差別が、人権の砦であるはずの法廷によっても容認され、二次被害的に内山さんは傷ついています。最高裁では差別を差別だと認める、正当な判断がなされることを願います。
 


参考記事:
同性事実婚 犯罪被害者給付金めぐる訴訟 2審も棄却(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/tokai-news/20220826/3000024475.html
判決理由は「差別的」…同性パートナー殺害された男性 “犯罪被害者遺族”の給付金支給求めた控訴審も敗訴(東海テレビ)
https://www.tokai-tv.com/tokainews/feature/article_20220826_21303
同性事実婚認定せず、名古屋高裁 犯罪被害給付の不支給裁定(共同通信)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/198206
遺族給付金、二審も認めず 同性パートナーの犯罪被害―名古屋高裁(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022082600135
同性パートナーへの遺族給付、高裁も認めず 原告側「差別では」(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASQ8V6R99Q8VOIPE004.html
犯罪被害者給付金 同性パートナーに不支給 事実婚に含まず 名古屋高裁(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20220827/ddm/041/040/129000c

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