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ベネチア国際映画祭でブレンダン・フレイザーが巨漢のゲイの英文学教授を演じた映画『The Whale(原題)』が上映され、6分間のスタンディングオベーションが起こり、フレイザーは感激にむせび泣いたそうです

2022年09月06日

 現在開催中のベネチア国際映画祭でブレンダン・フレイザーが巨漢のゲイの英文学教授を演じた映画『The Whale(原題)』がプレミア上映され、6分間のスタンディングオベーションを浴びたそうです。12月に米国で上映が決定、日本での公開も期待されます。

 世界最古の歴史を持つベネチア国際映画祭。今年は『ベニスに死す』の舞台であるリド島で9月10日まで開催中です。
 コンペ部門に深田晃司監督の「LOVE LIFE」が選出・上映されたこともニュースになっていますが、同じコンペ部門で、『ブラック・スワン』のダーレン・アロノフスキーが監督し、ブレンダン・フレイザーが主演した映画『The Whale(原題)』も上映され、体重250キロでゲイでの英文学教授を演じたフレイザーはその演技を高く評価され、6分間のスタンディングオベーションを浴び、早くもオスカーの最有力候補との声も上がっているそうです。
 『The Whale(原題)』は、ゲイの劇作家サミュエル・D・ハンターの実体験に基づく戯曲を映画化した作品で、同性の恋人と暮らす人生を選んで家族を捨てた英語教師のチャーリーが、恋人の死後、寂しさのあまり暴飲暴食してしまい、体重600ポンド(約272キログラム)という体型になるも、疎遠だった17歳の娘との関係を修復しようとしはじめ…というストーリーです(ちなみに娘役は『ストレンジャー・シングス 未知の世界』のセイディー・シンク)。フレイザーは役柄について「チャーリーはこれまで演じた中でも群を抜いた英雄だ」「他人の良い面を見つけ、それを引き出せるというスーパーパワーを持っている」と語り、アロノフスキー監督も、それこそが「世界に伝えたい最も重要なメッセージだ」と話しています。原作のサミュエル・D・ハンターは「過食で自分自身を癒やそうとした経験があり、非常に個人的な体験を元にしている。私は同性愛者で、原理主義的な宗教の高校に通っていた」「この作品を書くのは怖かった。愛と共感の物語という形でしか書けなかった。チャーリーには暗い海から見える灯台のような存在になってほしかった」と述べています。
 ブレンダン・フレイザーは『ハムナプトラ』シリーズなどに主演し、1990年代に絶大な人気を誇ったハリウッド俳優ですが、2000年代後半以降は、すっかり出演作も減ってしまっていました(実はゴールデン・グローブ賞を主催するハリウッド外国人記者協会(HFPA)の元会長フィリップ・バークから2003年にセクハラを受けてウツ状態になったことがハリウッドの表舞台から去ることになった一因だったとのちに発表しています)。実はブレンダン・フレイザーは1998年、『ドリームガールズ』のビル・コンドンが監督し、『フランケンシュタインの花嫁』などで知られる映画監督のジェイムズ・ホエールをモデルにした『ゴッド・アンド・モンスター』という映画で、イアン・マッケラン演じる老映画監督が惚れてしまうセクシーな庭師の役を演じています。何かと(良い意味でも悪い意味でも)ゲイに縁がある方ですが、今回、パートナーを亡くしたゲイの役を見事に演じ、6分間の熱烈なスタンディングオベーションを受け、感極まってむせび泣き、アロノフスキー監督と抱き合い、止まらぬ拍手にお辞儀で応じたという様子が伝えられ…胸を打たれました。感慨深いです。ブレンダン・フレイザーが今後、アカデミー賞などで高く評価されたり、俳優として復活を果たしていくことを祈ります。
 『The Whale(原題)』は12月9日に全米で公開されます。日本での上映も決まるといいですね。

  
 ベネチア国際映画祭は『モーリス』のジェームズ・ウィルビー&ヒュー・グラントが男優賞を受賞したり、『ブロークバック・マウンテン』が最高賞である金獅子賞を受賞という輝かしい瞬間を生んだのをはじめ、『ブラック・スワン』でレズビアンを演じたミラ・クニスがマルチェロ・マストロヤンニ賞(新人賞)、『シングルマン』のコリン・ファースが男優賞、『あなたを抱きしめる日まで』のスティーヴ・クーガン、ジェフ・ポープが脚本賞、『彼方から』が金獅子賞、そして『パワー・オブ・ザ・ドッグ』のジェーン・カンピオンが銀獅子賞(監督賞)を受賞しているほか、2007年からは(ベルリン国際映画祭のテディ賞のような)クィア獅子賞も設けられ、実にLGBTQ作品に縁の深い国際映画祭です。
 今年は実は、『The Whale(原題)』以外にももう1作、ゲイの映画がコンペ参加作品として上映されます。イタリアのジャンニ・アメリオ監督による『イル・シニョーレ・デッレ・フォルミーチェ(原題)』がそうで、同性愛が違法とされていた時代に必死にゲイとして生きようとする人たちを描いた作品だそうです。1968年、イタリアの詩人、劇作家、映画監督でもあるアルド・ブライバンティは、ファシスト政権下のイタリアでの法律により、同性愛で有罪判決を受け投獄される…彼のパートナーの父親がブライバンティを密告して自分の息子と引き離し、そのうえわが子に電気ショック療法を受けさせる…というストーリーです。こちらの作品もぜひ日本で観られるようになるといいですね。
 
 
 
参考記事:
「ハムナプトラ」のB・フレイザー、ベネチア映画祭でカムバック(AFP)
https://www.afpbb.com/articles/-/3422273
『ハムナプトラ』俳優がむせび泣き…カムバック作で6分間のスタンディングオベーション(シネマトゥデイ)
https://www.cinematoday.jp/news/N0132153
2022年 第79回ベネチア国際映画祭コンペティション部門23作品紹介(シネマトゥデイ)
https://www.cinematoday.jp/sp/venezia

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