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【同性パートナーシップ証明制度】パートナーが同性の東京都職員の待遇平等化がついに実現、その他杉並区、釧路市、福井県あわら市などの情報をお伝えします

2022年09月14日

 東京都にパートナーシップ制度を求める会によると、9月20日に開会する東京都議会令和4年第3回定例会において、「東京都パートナーシップ宣誓制度」が11月1日からスタートすることにあわせ、すべての東京都職員17万人(都庁職員、教職員、警察、消防など)が対象となる福利厚生制度などにおいて同性パートナー関係が事実婚と同等の関係として扱われるよう、様々な条例や規則の変更がなされる見込みです。
 東京都は2018年、五輪に向けLGBT等への差別を禁じる人権尊重条例を制定しましたが、同性パートナーシップ証明制度をはじめとする同性カップルの権利保障はなかなか進みませんでした。2019年、都職員の方々が同性パートナーを事実婚と同等に扱うことを求めて措置要求を提出しましたが、2020年7月、この要求が却下され、批判の声が上がり、9月の都議会定例会で小池都知事がパートナーが同性である都職員にも慶弔休暇や介護休暇などを適用するよう「検討を進める」と回答していました。しかし、11月に都議会に提出された介護休暇に関する条例改正案には、介護対象者の範囲の拡大を「同性パートナー」ではなく、「同一の世帯に属する者」(ほとんど「同居人」と同義)とされており、東京都は同性パートナーを家族と認めて平等に扱うつもりがなく、逆に同性カップルをただの「同居人」だと貶め、尊厳を傷つけることにほかならないとして、当事者の都職員の方たちが都に抗議書面を提出しました(詳細はこちら)。そうして当事者の方(や上川あや世田谷区議などの支援者)が声を上げてきて、今回、ようやく、その願いが聞き入れられることになりました。本当によかったです。
 東京都にパートナーシップ制度を求める会は、「パートナーシップ制度活用による当事者の生きづらさ解消を目指す東京都が、まずその姿勢を示していくよう、そして民間企業もこれにならって社内制度が対応されていくよう、期待します」「皆さんの周りでも周知そして取り組み促進のご協力をお願い致します」としています。

 東京都パートナーシップ宣誓制度は10月11日から届出の受付がスタート、11月1日から交付が開始されます。
 戸籍抄本、住民票の写し、本人確認書類などは必要ですが、オンライン(スマホでも)で届け出ることが可能です。
(手続や提出書類等の詳細については、9月末に公表する「東京都パートナーシップ宣誓制度利用の手引き」をご確認ください。「東京都パートナーシップ宣誓制度届出等管理システム」は、ただいま準備中で、10月11日からシステム稼働開始予定です)
 
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 東京都といえば、今年6月に新たな女性区長が誕生した杉並区で、同性パートナーシップ証明条例が制定されるかもしれません。
 岸本聡子区長は9月12日の所信表明演説で、「制度の創設に関する陳情が、区議会で採択されたことも踏まえ、区民や当事者の方たちからのご意見をうかがいながら、杉並区版パートナーシップ制度の年度内の条例化を目指して準備を進めていきたいと考えています」と述べました。「その際に「生きづらさや困難を抱えるすべての人」を包摂できるよう、例えば千葉市のようにパートナーシップ制度の中で、事実婚も含めたパートナーの証明ができるよう、議論をしっかり行なっていきます」

 プレジデントウーマンの取材に対しては、「賛成の声も多く、導入で不利益を被る人がいるわけではないので、進めやすい施策の一つだと思います。近隣や他の自治体から学んで、質の高い制度を作りたいです。また、まだ知られていないような差別や、同性カップルの人たちが受けられていない恩恵についても、もっと考えていきたい」と語っています。

 9月13日の区議会での代表質問で早速、同性パートナーシップ証明条例について自由民主党杉並区議団から質問がありました。
「私どもはこれまで複数にわたる勉強会、また当事者の方々のご意見をうかがう中で、制度の創設によって救われる方がいる一方で、生きづらくなる方もいるという状況では、制度創設を強行するのではなく、より区民に理解を広げるための働きかけが必要と判断し、今年2月17日の区民生活委員会における陳情審査では、制度創設を求める陳情、また慎重な対応を求める陳情、そして反対する陳情の全てに、継続審査を主張しました」「パートナーシップ条例に関しては丁寧な聞き取りや対話を重ねる前から条例化を目指すというふうにおっしゃるのは、対話を重んじるとする岸本区政の自己矛盾とならないのか」「今、当事者がどのような思いでいらっしゃるのか、より丁寧に聞き取りを行うべきと考え、改めて実態把握のためのアンケート実施を求めます」「多様性は力であるとの考え方から、区長のように制度の創設が自然の流れと思う区民もいらっしゃれば、そう思わない区民もいらっしゃいます。それがまさに多様性ということではないか」といった内容でした。
 これに対して岸本区長は、このように回答しました。
「条例を根拠規定とするパートナーシップ制度は、要綱を根拠にする場合と比較して、区議会の議決を経て定めることによる制度の安定性や周知などの効果が期待できます。今後の制度内容などの検討に当たっては、区内の当事者団体などの意見を聞きながら進めることを想定しており、条例骨子案に対する区民などの意見提出手続きも実施していくことになりますので、これらを通して必要な対話をしっかりと積み重ねていくことができると考えております」「制度の創設に関する陳情が区議会で採択された経過や、既に全国で220以上の自治体がパートナーシップ制度を導入している実態などを踏まえ、現時点でのご指摘の当事者アンケートを実施する必要性はないと考えており、よりよい制度内容などの具体化に向けた取り組みを、丁寧に進めていくことに注力してまいります」
 条例を制定するためには区議会で賛成多数で承認される必要があります。区議会の会派は自由民主党杉並区議団(9人)、杉並区議会公明党(7人)、杉並区議会自由民主党(6人)、日本共産党杉並区議団(6人)、立憲民主党・無所属クラブ(4人)、いのち・平和クラブ(4人)、自民・無所属・維新クラブ(4人。「同性愛は趣味」発言の議員はこちらに所属)、1人会派が7人という構成になっています。区長の意向が多数会派にも賛同してもらえるようになるとよいのですが…(私たち当事者区民もできることをしていきましょう)

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 そのほか、各地の同性パートナーシップ証明制度に関する動きをお伝えします。
 
 北海道の釧路市が同性パートナーシップ証明制度の導入を検討することを明らかにしました。
 9月7日の定例釧路市議会での一般質問で、岡田遼市議(市民連合)の質問に答えるかたちで菅野隆博総合政策部長が明らかにしました。10年に1回程度実施する男女平等に関する市民への意識調査で、今年10月の調査から同性パートナーシップ証明制度制度やLGBTQに関する質問を初めて設けるそうで、その結果を踏まえ、市の男女平等参画審議会で議論するそうです。

 旭川市の団体「パートナーシップを考える会・旭川」は14日、市に対し、同性パートナーシップ証明制度の導入を求める要望書を提出したそうです。同団体は2016年に結成され、2018年に市に対し「パートナーシップの公的認証」「市立小中学校での性的少数者の子どもに配慮する基本的な環境整備」の2通の要望書を提出しました。これを受けて市教委は2019年度から市立小中学校に男女混合名簿を導入、中学では女子がスカートとスラックスを選べるような制服の選択制を導入、という対応を行ないましたが、「パートナーシップの公的認証」については、市の回答は「先進的取組みについて調査研究する」にとどまっています。今津寛介市長は今年7月の定例会見で制度のあり方を検討する考えを示しており、同団体のメンバーで元市議の久保厚子さんは「前回の要請から道内の状況も変わり、市長も検討する姿勢を示している。制度導入の後押しをしたい」と話しています。

 北海道では札幌市、江別市、函館市、北見市が導入済みで、帯広市(2022年12月1日)、苫小牧市(2023年1月)が導入予定です。

 「パートナーシップ宣誓制度」を導入して半年が過ぎた江別市では、宣誓したカップルはまだ1組ですが、市内では民間でも制度を活用する動きが出るなど、徐々に広がりを見せているそうです。
 江別市勤労者共済会は7月から、宣誓を行なった会員を対象に「結婚お祝金」を給付する取組みを行なっています。
 市の市民生活課は当事者らに情報が届いていない可能性があると見て「市の出前講座のほか、民間団体と協力しながら性の多様性などについての発信を続けたい」としています。また、すでに導入済みの4市と広域連携に向けた協議を6月に開始し、今年度中にも協定を締結したいと考えているそうです。
 当事者団体「江別SOGI(ソジ)の会」の舘内孝夫会長は、石狩管内に当事者が多いことに触れ、「制度をきっかけに『多様性を受け入れるマチ』とPRすることで、当事者だけでなく若者世代の転入増にもつながるはず。江別が広域連携を進めることで、管内の他自治体にも制度導入が波及すればうれしい」と語っています。

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 福井県のあわら市も、来年度の制度導入を目指す方針を明らかにしました。9月8日の市議会の一般質問で、平野時夫市議の質問に答え、森之嗣市長が県と連携しながら導入を目指すと答弁したものです。

 なお、福井市の中村綾菜市議によると、本議会(9月議会)の一般質問で、制度導入について検討していくとともに、「性の多様性に関する意識啓発などもしていく」という答弁があったそうです。

 福井県では越前市(2022年10月スタート)と勝山市(2022年度中に)が導入を決めていて、鯖江市も検討すると表明しています。福井県も当事者や支援団体などの話を聞いて調査・研究していくとの方針を示しました(5月から市町と勉強会を始めています)
 北陸では「近所の人が同性愛だったら嫌悪感を抱く」と答えた人の割合が全国で最も高く(「性的マイノリティについての意識 2015年全国調査」広島修道大学河口和也教授)、2020年末まで北陸三県での同性パートナーシップ証明制度導入の動きは皆無でした。それが今や、福井でもこんなに広がりを見せているのはスゴいことです。地元のELLY福井なろっさあらいなどの団体や、福井出身のかずえちゃんの活動のおかげではないでしょうか。



参考記事;
東京都議会: 都職員17万人が対象 パートナー関係を事実婚同等に(東京都にパートナーシップ制度を求める会)
https://www.change.org/p/%E5%B0%8F%E6%B1%A0%E7%99%BE%E5%90%88%E5%AD%90%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E9%83%BD%E7%9F%A5%E4%BA%8B-%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E9%83%BD%E3%81%AB%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%83%E3%83%97%E5%88%B6%E5%BA%A6%E3%82%92/u/30916248?cs_tk=As5iX0W06OW8AZTEKmMAAXicyyvNyQEABF8BvPK5xXY9hCh7N_zG15N8GXc%3D&utm_campaign=2988e5580b6940dd83230a15ac5e4891
議案32件を審議、都議会20日開会/東京(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20220914/ddl/k13/010/007000c

選挙公約はどう実現する? 岸本聡子杉並区長の所信表明全文 就任後初の区議会始まる(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/201655/5
地盤も資金もない48歳女性が杉並区長に…「高齢男性に支配された政治」を壊す"ドブ板じゃない"やり方(プレジデントウーマン)
https://president.jp/articles/-/61334?page=4

釧路市がパートナー制度導入検討 定例市議会開会(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/727839/
パートナーシップの公的認証14日要望 旭川の団体、市に(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/730559
江別のパートナー制度導入半年 1組が宣誓、さらなる市民周知が課題(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/727844/

同性パートナー制度導入 あわら市来年度目指す(福井新聞)
https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/1626089

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