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都パートナーシップ制度導入が「少子化につながる」「制度悪用の可能性がある」「殺人が増加する」と議会で発言した江東区議に謝罪と撤回を求める声が上がっています

2022年09月22日

 東京都で11月に運用開始予定の「パートナーシップ宣誓制度」について、江東区の星野博区議(自民、7期)が区議会一般質問で「少子化の進行につながる」「制度悪用の可能性がある」「保険金殺人が増加するのでは」などと発言しました。2年前の「足立区が滅ぶ」を彷彿させる差別的な(だけでなく荒唐無稽な)発言に対して、議会でもメディア上でも批判の声、謝罪や撤回を求める声が上がっています。
 
 
 星野区議は9月20日の区議会で、都の「パートナーシップ宣誓制度」の運用がスタートすることに関して「伝統的な結婚や家族の概念を変質させ、国家の根幹である婚姻制度、家族制度の衰退と少子化の進行につながることを危惧している」と発言し、大阪府高槻市の民家で2021年7月、保険金目的で女性を殺害したとして殺人容疑などで養子が再逮捕された事件を例示しながら、同制度の導入によって「このような事件が増加するのでは」という趣旨の発言をしたそうです。また、同性カップルの都営住宅入居が認められる点について「疑似カップルによる悪用の恐れがある」とも述べました。
 議場では別の区議が「偏見だ」と声を上げたそうです。

 同区議会の三戸安弥(さんのへあや)区議は、「当事者を傷つける差別的な発言には憤りを感じる。区議会として謝罪や撤回を求めたい」と話しています。
 同区のLGBTQや支援者の団体「クロスオーバー・こうとう」は、星野区議に質問の趣旨などの見解を求める公開質問状を送る準備をしているそうです。
 議会のネット中継を見た松岡宗嗣さんは、「制度と少子化を結びつけるのは見当違いだ。差別的な認識の基に性的少数者の存在や権利を認めない姿勢は問題だ」と謝罪や撤回を求めています。

 星野区議は取材に対し、「子どもの出生率は今落ちており、(パートナーシップ制度の導入が)少子化につながるという危惧がある。同性カップルが増えることが、(出生率にとって)マイナス要因であることは確か。差別がどうこうという話ではないと思う」とし、発言の撤回や謝罪は考えていないと話しています。
 また、制度の導入と殺人事件の増加に関する発言については、「制度が導入されれば、それを悪用する人たちがいるわけで、そのことを言っている。パートナーシップ制度を利用する人たちが絶対に悪いことをするということではなくて、悪用する人に区はどう対応するのかと聞いただけ」だと説明、「誰かを侮辱する気持ちは全くない」と話しました。
 批判の声が上がっていることに対しては、「賛成、反対両方の立場で議論するのが民主主義の基本」「一方的にけしからんとかなんとかと言って議論を封殺することは、決してあってはならないと思う。一部の人が騒いで、尻馬に乗って謝れとか(発言を)取り消せとか、けしからん話だと思いますよ」とのことです。

 性的マイノリティに関する情報を発信する一般社団法人『fair』代表理事の松岡宗嗣さんは、「​​パートナーシップ制度や同性婚の法制化と少子化に因果関係がないことは、同性婚をすでに法制化している海外の国々の事例を見ても明らか」と指摘し、制度によって殺人事件が増えるのでは、という趣旨の発言については、「論理が飛躍しており、事実誤認も甚だしい」と批判、「議員という影響力のある立場で、事実に基づかない差別発言をすることは性的マイノリティの生活や安全を脅かしかねず、許されないこと」と語っています(松岡さんのコメントの詳細はこちら

 早稲田大の森山至貴准教授(社会学)は、「今回の発言では「危惧」「議論」と一見、中立で理性的な言葉を使っているが、事実誤認を指摘されても撤回しないのであれば、差別的な本心を隠していると判断されても仕方ないだろう。政治家の発言として不誠実だと思う。また、どんなテーマでも賛成、反対に分かれて議論すればいいというわけではない。性的少数者など特定の属性の人たちの権利を脅かす主張が、対立する一方の主張になると考えるべきではない」と述べています。

 
 東京新聞の記事では、2018年の杉田水脈衆院議員による「“生産性”がない」発言(雑誌への寄稿)、2019年の平沢勝栄衆院議員による「この人たちばかりになったら国はつぶれてしまう」との発言、2020年の足立区・白石区議の「LもGも法律で守られているという話になれば、足立区は滅んでしまう」という発言(のちに撤回し、謝罪)など、過去にも自民党議員によって差別発言が繰り返されてきたことが指摘されています。
(ほかにも、宝塚市の大河内茂太市議の「宝塚がHIV感染の中心になったらどうするのか」発言(詳細はこちら)や、海老名市の鶴指眞澄市議(かながわ自民党市町村議員協議会ニュー市政の会とされているが事実上自民党)による「同性愛者は異常動物」発言(詳細はこちら)など、枚挙にいとまがありません…)

 神道政治連盟の国会内の会合や「性的マイノリティに関する特命委員会」の会合で「同性愛は精神障害で依存症」「“治療”によって回復が期待される」「トランスジェンダー女性によって女性の安全が脅かされる」といった誤った情報が党内に流布されていることや、旧統一教会が同性パートナーシップ証明制度を阻止しようと巧妙に地方議会に入り込んでいる実態なども明らかになっていて(北海道の旭川でも同様の動きがあったそうです→こちらのスレッドをぜひご覧ください)、今回の星野区議もそのようにしてLGBTQに関する偏見や誤った情報を持ってしまっているのでは?と考えられます。(さすがに「殺人事件が増える」と発言する方はそうそういないでしょうが)このような無知や偏見に基づく差別発言が次から次へと繰り返されていくと、人々が「またか」と思ってだんだん反応しなくなる(ある意味、麻痺していく)懸念もあります。LGBTQコミュニティとしてもっとこのような「根本的な問題」を追及していくことも重要ではないでしょうか(それでも松岡さんは「言動の一つ一つを具体的に否定し、許されないことだ、と伝えていく必要がある」と述べています。立派です)
 松岡さんや、抗議集会を開催してくださったワインさんたち、「#私のお賽銭のゆくえ プロジェクト」の方たち、LGBT法連合会プライドハウス東京など、たくさんの方たちがアクションを起こしていますが、昨日の城内議員に対する地元選挙区のLGBTQ団体による公開質問状提出や、いわてレインボーマーチが14日に盛岡駅前で神政連の差別的冊子配布などを受けて性的少数者への差別に抗議する集会を開催したこと、ピンクドット沖縄も神政連差別冊子に抗議声明を発していることなど、地方のLGBTQ+Allyの方々からも、この「根本的な問題」を追及する動きが起こっていることには決して小さなくない意義があると感じます。地方に行けば行くほど当事者の方たちが声を上げづらく、生きづらさも深刻さを増していくと思われますが、そうした方たちを勇気づけることにもつながるはずです。
 

参考記事:
パートナーシップ制度が「少子化につながると危惧」。江東区議の発言が物議「侮辱する気持ちない」(ハフポスト日本版)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_632a88ade4b0913a3dd5fdb3
パートナーシップ制度「少子化につながる」と江東の自民区議 「制度悪用の可能性」とも 撤回求める声(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/203877
「少子化が進む」「悪用される」 自民区議、都のパートナー制度に(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASQ9P7HCHQ9PUTIL021.html

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