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【同性パートナーシップ証明制度】山形県で初めて酒田市が導入へ、小樽市は来年1月から、その他埼玉県新座・朝霞・志木市、愛知県日進市、兵庫県丹波篠山・丹波・加古川・高砂市、愛媛県今治市も

2023年02月16日

 山形県酒田市の丸山至市長が14日の記者会見で新年度に同性パートナーシップ証明制度を導入する方針を固めたと表明しました。山形県内では初です。 
 酒田市・地域共生課によると、現市営住宅への同性パートナーとの入居や所得課税証明書などの交付を制度として設ける考えです。近く、正式に決定し、4月1日からの導入を目指します。
 山形では昨年、やまがたカラフルバレードが初開催され、東北六県全県でのプライドパレードの開催が実現しました。そのパレードを主催した方によって今年、山形市に対して制度の導入を要望する団体が立ち上げられましたので、近く、きっと山形市でも動きがあることでしょう。

 東北地方では、青森県と秋田県が県として制度を導入し、弘前市や秋田市でも導入済み、岩手県では一関市が導入済み&盛岡市も導入予定、福島県では富岡町が2023年度に導入する方針となっています。今回、山形県酒田市が導入を発表したことで、まだ1つも導入の報が聞かれないのは宮城県だけとなりました(東北で唯一というだけでなく、全国で宮城県だけです)
 
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 北海道小樽市の迫俊哉市長は来年1月から同性パートナーシップ証明制度を導入する方針を固めました。市営住宅への入居や、市立病院での手術同意などが可能となる見通しです。市は現在改訂中の市男女共同参画基本計画に同制度導入を明記したうえで、4月から詳細な内容の検討を始め、当事者からの聞き取りや市民が参加する有識者会議、パブリックコメント(意見公募)などを経て市の要綱として定める方向で、12月上旬に制度内容を正式決定するそうです。
 北海道では札幌や函館など7市で導入済みで、北斗市は4月、旭川市は来年1月の導入を予定しています。

 道としての制度導入について、鈴木知事は、2月10日の知事定例記者会見でで記者からの質問を受け、「パートナーシップ制度については、基礎的自治体である市町村において導入が進んでいるところであります。基本的には、住民の皆さまの転出入などの窓口を担う基礎的自治体である市町村において、そういった制度が理解を得た上で進められているものと考えているところであります。道としては、先ほどの秘書官の発言の背景として、秘書官にお伺いしたわけではないので想像ではありますけれども、性の多様性への理解不足といったものも背景としてあるのではないかと考えているところであります。ですので、国会において法案の議論はされているのですけれども、法案で求められる役割については、道として、今お話ししたような理解促進に関する取り組み、さまざまな取り組みを進めているところでございますので、今後も適切な配慮につながるように積極的に取り組みをしていきたいと考えています」と答えました。これに対して記者の方が「道外を見るとですね、県単位でパートナーシップ制度を既に作っているところもあって、そういうところですと、基礎自治体はもちろんですけれども、県の、広域で、さまざまな保障が受けられるというか、そういうことを行っているところもありますが、道としてそういうものを作るというのは、検討していないのでしょうか」と食い下がりましたが、「例えば、パートナーシップ制度を導入する中で、(性的マイノリティの方が)道営住宅に入居を希望される場合の取り扱いについては、市町村ともご相談しながら、道としても対応の見直しなど、取り組みを進めてきたところであります。ですので、市町村の皆さまとも情報交換しながら、また、パートナーシップ制度導入を検討されている市町村とも情報共有しながら、広域自治体としての必要な役割について、今後も果たしていきたいと思いますし、(性の多様性についての)理解促進をはじめとする適切な配慮について、積極的に取り組んでいきたいと考えています」との答えでした。
 
 この会見の後、13日の報道です。道は2023年春に同性カップルや外国人らも同居親族の有無に関わらず道営住宅に入居できるように規定を改正しました。しかし、同性カップルの入居は「道営住宅所在の自治体が認めるパートナーシップ宣誓書受領証の交付を受けた者」とされており、札幌、岩見沢、江別、苫小牧、函館、北見、帯広の各市にある道営住宅にしか入居できないため、「明らかな地域間格差だ。公営住宅の趣旨に反している」との批判の声が上がっています。
 道営住宅は道内52市町に約1000棟(2022年3月末時点)整備されており、同性カップルや外国人らは40以上の市町にある道営住宅に入居できないことになります。
 道住宅課によると、道営住宅は道が建設、管理しているが、道営住宅整備活用方針で「市町村の補完的役割として整備、活用を図る」と定められており、市町村営住宅の管理規定を踏まえた入居要件で運用しているとのこと。関係者は自治体の動きの鈍さについて「住民の理解が今の社会の流れに追い付いていない現実もある」と説明しています。しかし、同課の大場一郎課長補佐は「これで終わりではない。課題だと捉えている。最終的には全ての道営住宅で(同性カップルや外国人らの)入居申し込みが可能になるようにしたい」と話しています。
 LGBTQへの差別や偏見をなくし、当事者が社会的に孤立しないように活動している団体「にじいろほっかいどう」で理事長を務める国見亮佑さんは、「道営住宅なのに、入れるところと入れないところがあるのはおかしい」「道がパートナーシップ条例を制定しないから、このようなねじれが生じているのではないか。東京や大阪を含む10都府県は制度を導入している。北海道も検討すべきだ」と語りました。

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 埼玉県の新座、朝霞、志木の3市は13日、「パートナーシップ・ファミリーシップ制度」を4月1日から始めると発表しました。今後、先行して制度が始まっている和光市と4市で広域連携を検討中だそうで、実現すれば、制度利用者が4市圏内で転出入した場合も、必要書類などの提出が省略でき、手続きが簡略化されるそうです。

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 新潟県では新潟市と三条市、長岡市が「パートナーシップ宣誓制度」を導入していますが、2月8日の新潟放送の報道によると、新潟県の花角知事は、(荒井元首相秘書官の発言に関して)「性の多様性を尊重する、個性を尊重する社会を目指していかなければならない」としながらも、県としての制度導入や同性婚の法制化については、「性の多様性の中でも結婚ということについても意識が進むかということは、現実をしっかり確認しないといけないとは思います」と述べ、慎重な姿勢を示しました。花角知事は今後、幅広い世代の県民に意識調査を行う可能性もあると述べました。
 すでに県内3市で始まり、実績もある制度を県として導入することに、なぜそのように慎重になる必要があるのか、また「現実をしっかり確認」とは(これだけ同性婚賛成派が多数となっている世の中で)どういうことを確認するのか、といった追及は、記事中ではなされていませんでした。
 長岡市のLGBTQ支援団体アマヤドリは、「パートナーシップ制度を求めている声がある。差別を受けているマイノリティがいる。それがもう紛れもない現実です」「「現実を確認しないといけない」「研究が必要」などというのは差別に向き合わない為の言い訳でしかありません。差別をやめない言い訳でしかありません。今すぐに変えてください。今すぐに制度が必要です」とコメントしています。

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 山梨県では、甲州市が2021年に「パートナーシップ宣誓制度」を導入していますが、県も先月、制度導入に向けて有識者らの研究会を設けたそうです。
 そんな山梨県では13日、性的マイノリティへの理解を進め、多様性を認め合う社会づくりを目ざす「山梨県多様性を認め合う共生社会づくり条例」の素案がまとまったことがわかりました。何人も他人に対し、人種、信条、性別、性的指向、性自認、社会的身分、門地、職業、年齢、障害または疾病の有無などを理由として「差別的取り扱いを(中略)してはならない」と規定し、LGBTQ差別の禁止を盛り込み、共生社会づくりに向けた施策を進めることが県の責務であるとして施策の推進を求める内容です。
 この日開かれた条例作りのための委員会で明らかにされ、委員長を務める宮本秀憲県議は、「山梨の未来を見据えて、多様な人々が住みやすく訪れやすい地域づくりを進めることが条例制定の目的だ」と語りました。委員会では全議員が素案に賛成しており、今後、議会内で最終的な了承を得たうえで県民の意見を聞く方針で、2月定例議会の会期中に議員提案する考えです。
 地方では性的指向や性自認による差別的取扱いを禁止する条例が広がりつつあります。条例はすでに60以上の自治体にあり、都道府県では東京、三重、秋田、埼玉など7都府県で制定されています。

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 愛知県日進市は来月1日から「市パートナーシップ宣誓制度」を導入します。宣誓には予約が必要で、今月15日から受け付けます。宣誓を行なうと、虹やアジサイがあしらわれたパートナーシップ宣誓書受領証と受領カードが交付されます。
 愛知県内では名古屋市や豊明市など16自治体が制度を導入しており、日進市は17例目ということになりそうです。

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 兵庫県の丹波篠山市と丹波市は、4月から「パートナーシップ宣誓制度」を導入します。多様な性のあり方への理解を広め、多様性を認めるまちを目指します。先行する阪神地域の自治体との連携も行なうそうです。
 同じく兵庫県の加古川、高砂市は、「パートナーシップ・ファミリーシップ制度」を2023年度に導入する方針を固めました。届け出をすればカード形の「受理証明書」が交付されます。これにより、市営住宅への申込みができるようになります。両市は、医療機関での病状説明などで配慮も受けられるよう、民間事業者に協力を求めていくそうです。 

 同じく兵庫県の三田市は、すでに「パートナーシップ宣誓制度」を導入していますが、2023年度から新婚夫婦に向けて始める新生活支援事業の対象に「パートナーシップ宣誓」を行なったカップルも含める方向で検討に入ったそうです。
 この支援事業は、若い世代の定住や市外からの転入促進を図り、ともに39歳以下のカップルに最大30万円、29歳以下のカップルに最大60万円を補助するものです。世帯所得が500万円以下との制限があり、市内での新居取得や賃借費用、引っ越し代などが対象です。新婚世帯への同様の支援事業は今年度、県内で姫路市や加古川市など17市町で実施されていますが、県は「性的少数者のカップルも含めた制度は聞いたことがない」としています。

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 愛媛県今治市の徳永繁樹市長は10日、4月1日から「パートナーシップ宣誓制度」を導入する考えを示しました。徳永市長は同制度に関し、今治での課題を検討した結果、「その人らしく生きていける取組みが遅れている」とし、多様な人が活躍し、夢を実現できるようにしたいと述べました。
 愛媛県では大洲市に次いで2例目となります。
 
 一方、愛媛県の中村時広知事は15日、県庁での定例会見で、荒井元首相秘書官による差別発言について「国民の権利と尊厳に高い意識を持ち、個性や多様性を尊重しながら職務を遂行すべき公務員が人を傷付け、排斥するような発言をしたと報道で知った。論外だ」と批判しましたが、県としての同性パートナーシップ証明制度については「今のところは(導入を)考えていない」と慎重な姿勢を示しました。「当事者間でも賛成、反対、いろいろな意見が飛び交う非常に複雑な状況」「制度導入を一足飛びに進めるのではなくて、県内各地で性的マイノリティや制度に関する理解を広げるのに力点を置いて、状況に応じて検討を進めることが望ましい」と述べました。(政府と言ってることがそっくりだと感じられるのは気のせいでしょうか…)

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 長崎放送は15日、九州の中で長崎県が最も同性パートナーシップ証明制度導入自治体が少ないのはなぜか?を探る番組を放送しました。
 昨年12月5日の長崎県議会で、県としての制度導入について質問を受けた大石知事は「まずは県庁内の意見集約を行うとともに、市町や関係団体等から意見聴取を実施するなど丁寧に課題整理を進めながら、制度導入の方向性について検討を深めて参りたい」と答弁しました。川崎祥司県議は「(いつまでにという)ゴールは決めて。そこでどうするかということをやらないと時間ばっかりかかる」と述べました。県は「庁内や各市町など、多方面から意見を集めるのに時間がかかっている」としていて、制度導入は「慎重に検討したい」としています。
 こうした状況についてジェンダー論が専門の風間孝中京大学教授は、行政側に性的マイノリティへの「認識不足」と「誤解」があると指摘します。「自治体の担当者が、自分の自治体に性的マイノリティの人たちが暮らしているという認識を持っていない場合には、なかなか取り組みが進みません。あともう一点がですね、政治家とか議員さんとかが性の多様性について、あるいは性的マイノリティについて、まだまだ誤解を持っている場合もある」「(性的マイノリティの方が声を上げるのは)簡単ではないっていう現実はあるんですけれども、だからこそ担当者の人とか自治体はですね、そういう状況も鑑みて踏まえた上で性的マイノリティの人たちが声を上げやすいような生きていきやすいような状況を作るために、やっぱり(先に)制度を導入してほしい」
 県内で性的マイノリティへの理解促進などに取り組んでいる「Take it! 虹」の儀間由里香さんは、「性的マイノリティの人が身近に存在し、同じように生活を送っている」ことを伝えたい、と語ります。「情報を知っているということは、“すごく便利な眼鏡”をかけるようなものだったんだなというふうに思います。自分を見つめたり、相手を見つめる精度が高まるので、未来の選択肢だったりとか、いろんなサービスを提供するときの質というのがすごく向上しやすくなる」

 
 虹色ダイバーシティと渋谷区が共同で行なっている調査によると、1月10日時点で制度を導入した自治体は全国で255、人口カバー率は65.2%に上っています。交付件数は昨年末時点で4186組となりました。同性カップルも婚姻に相当すると承認した自治体が全国の約2/3に上り、8372名もの方々が役場で登録を行ない、パートナーシップ証明を受けています。国もこのことをしっかり受け止め、同性婚の法制化を進めていただきたいです。
 

参考記事:
LGBTのパートナーシップ制度県内初運用へ・酒田市(YBC山形放送)
https://www.ybc.co.jp/news/?news_id=news119fwvs9tv2om3ttntc

小樽市がパートナーシップ制度導入へ 来年1月から市長方針(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/800773
公営住宅の同性カップル入居、容認は一部地域のみ 北海道(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230212/k00/00m/040/041000c

パートナー制度 4月1日に開始 新座、朝霞、志木市(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230214/ddl/k11/010/097000c

「現実を確認しないといけない」性の多様性に関する制度整備に慎重姿勢 新潟県 花角知事(TBS)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/318695?display=1

性的指向・性自認の差別禁止 県議会で条例案まとまる(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASR2F6WYSR2FUZOB00F.html

日進市がパートナーシップ制度 3月導入、予約は15日から受け付け(中日新聞)
https://www.chunichi.co.jp/article/635641

性的少数者のカップル公認制度、丹波地域2市で4月から開始 宝塚など先行自治体との連携も強化(神戸新聞NEXT)
https://www.kobe-np.co.jp/news/tanba/202302/0016051250.shtml
性的少数者のカップル支援制度、子どもらも家族と公認 加古川、高砂市で「ファミリーシップ」23年度導入へ(神戸新聞NEXT)
https://www.kobe-np.co.jp/news/touban/202302/0016051382.shtml
性的少数者のカップルにも定住支援 兵庫県三田市、新年度に向け検討(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASR2G2G5DR2FPIHB00K.html

今治市が「パートナー制度」導入へ 4月の組織改正案発表(愛媛新聞)
https://www.ehime-np.co.jp/article/news202302100124
パートナー制度の県採用 知事「まずは住民の理解促進図る」(愛媛新聞)
https://www.ehime-np.co.jp/article/news202302150093
LGBTQ 秘書官差別発言「論外」 愛媛県知事、人権侵害解消求める(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230216/ddl/k37/010/371000c

LGBT “パートナーシップ宣誓” 長崎県内で制度導入は九州最低「性的マイノリティへの認識不足と誤解がある」(NBC長崎放送)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/330300
 

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