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ベルリン国際映画祭で、主演俳優賞と助演俳優賞がトランスジェンダー役の俳優に贈られました

2023年03月01日

 第73回ベルリン国際映画祭が2023年2月16日~26日(現地時間)に開催され、主演俳優賞と助演俳優賞がトランスジェンダー役の俳優に贈られるという歴史的な映画祭になりました。

 
 『ELLEgirl』によると、3年ぶりに通常開催されたベルリン国際映画祭は、例年よりハリウッド色が薄くヨーロッパ作品が多く集まり、ウクライナや、人権が蹂躙されているイラン女性への連帯が示されたほか、トランスジェンダーの物語が称賛を集めたことでも話題になりました。
 主演俳優賞は『20,000 Species of Bees』に出演したスペイン出身の新人ソフィア・オテロが受賞。9歳のトランスジェンダー女子を演じたソフィアは、受賞を喜びながら「演技に今後の人生を捧げたい」と涙ぐみました。ドイツの文化大臣クラウディア・ロスは、ソフィアの熱演を称え「この映画は、ソフィアの演技を通じて性的マイノリティへの差別に反対し、寛容、開放性、平等を求める情熱的な嘆願です」と語りました。『20,000 Species of Bees』は、バスク地方で夏休みを過ごすココが、自分は女の子であり、みんなが出生時のアイトールという男名前で呼ぶのが悲しいとカミングアウト、そのとき母親は…という、性自認の複雑さを描いた繊細な作品だそうです。
 助演俳優賞はオーストリアの俳優テア・エールに贈られました。テアが出演したスリラー映画『ティル ジ エンド オブ ザ ナイト』は麻薬捜査を背景に、ゲイの警察官とトランスジェンダー女性のラブストーリーを描く作品です。テアは、「この賞をトランスジェンダーのコミュニティ、つまり私を支えてくれた人々に捧げます。トランスジェンダーの人々が置かれている不安定な状況を多くの人に知ってもらいたい」と語りました。コンペ部門の審査員長をつとめたクリステン・スチュワートは、「その演技に打ちのめされた!」と絶賛しました。

 ちなみにコンペ部門の審査員長に抜擢されたキャリア20年の俳優クリステン・スチュワートはバイセクシュアルであることをカミングアウトしています。
 クリステンは、パリのセーヌ川に浮かぶ船のような形をしたユニークな水上デイケアセンターを訪れる精神に障害を抱える人々が音楽やアートで自らを表現しながら暮らす姿を温かなまなざしで描いた作品で金熊賞に輝いた『Sur l’Adamant(原題)』について、「人間にとって感情表現がどれほど大切か」とコメントしています。
 『ELLEgirl』の記事は、「自分らしさを表現しながら生きていくことが、人間にとってどれだけ大切か。クリステン・スチュワートが冒頭の金熊賞で述べた賛辞に帰結する」「平等と自由に向けて実際の壁を壊し、多くの人々を結び付けたベルリンの街。そこから放たれるメッセージは戦争や差別のない未来に向けて終始一貫していると言えるだろう」という言葉で締めくくられています。(素敵ですね)

 なお、ベルリン国際映画祭といえば、LGBTQ(クィア)を描いた作品に贈られる「テディ賞」が有名ですが(1987年の栄えある第1回はペドロ・アルモドバル『欲望の法則』に贈られ、以降、デレク・ジャーマンの『ラスト・オブ・イングランド』『エドワードII』『ウィトゲンシュタイン』、トッド・ヘインズ『ポイズン』、『パリ、夜は眠らない』、『苺とチョコレート』、『司祭』、『セルロイド・クローゼット』、『焼け石に水』、『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』、『アタック・ナンバーハーフ』、『トランスアメリカ』、『キッズ・オールライト』、『トムボーイ』、『彼の見つめる先に』、『キキ -夜明けはまだ遠く-』、『ナチュラルウーマン』、『日常対話』、『彼らが本気で編むときは、』、『ゴッズ・オウン・カントリー』など、錚々たる作品が受賞しています)、今年のテディ賞は以下の作品に贈られました(今後、レインボー・リール東京などで上映されるかもしれません)。モロディスト・キーウ国際映画祭のLGBTQ部門「Sunny Bunny」に特別賞が贈られたのは、ウクライナ支援のメッセージだと思われます。「Sunny Bunny」は2001年に設けられたコンペではない部門で、ウクライナで最も傑出したLGBTQのカルチャーイベントになっているそうです。

第73回ベルリン国際映画祭 テディ賞
長編映画賞 『All the Colours of the World Are Between Black and White』(監督:Babatunde Apalowo)
ドキュメンタリー賞 『Orlando, ma biographie politique (Orlando, My Political Biography)』(監督:Paul B. Preciado)
短編映画賞 『Marungka tjalatjunu (Dipped in Black)』(監督:Matthew Thorne、Derik Lynch)
審査員特別賞 『Vicky Knight für ihre Performance in Silver Haze』(監督:Sacha Polak)
特別賞 Sunny Bunny(モロディスト・キーウ国際映画祭)




参考記事:
第73回ベルリン国際映画祭の注目トピックス9(ELLEgirl)
https://www.elle.com/jp/culture/movie-tv/g43086414/berlin-film-festival-golden-bear-winner-230227/

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