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国際女性デーにLGBTQ関連の動きもいろいろありました

2023年03月08日

 3月8日は国際女性デーですが、この日、ジェンダー平等の周辺でLGBTQ(性的マイノリティ)に関する動きも様々ありました。まとめてお伝えいたします。

 
 まず、米『タイム誌』が、「より平等な世界を導く12人の並外れたリーダー」として「ウィメンズ・オブ・ザ・イヤー」を発表し、国際女性デーにLAで式典を開催しました。今年発表されたリストには、俳優のケイト・ブランシェットミーガン・ラピノー、オープンリー・バイセクシュアルの歌手フィービー・ブリジャーズ、ウクライナのLGBT活動家であるオレナ・シェフチェンコという4名のクィア女性も含まれていました。式典では、ケイト・ブランシェットら受賞者が登壇したほか、フィービー・ブリジャーズがスペシャル・ライブを披露したようです。

 国内では3月8日、各地で国際女性デーのデモが行なわれました。
 福岡市では、女性の労働条件改善やLGBTQの人権擁護などを訴えて歩くデモ行進が天神で行なわれ、その後、パルコ前など3ヵ所に分かれて該当アピールが行なわれました。街頭アピールでは、一部の自治体がいまだに同性パートナーシップ証明制度の制定に消極的である実態を伝え、早期実現を訴える声も上がりました。

 京都女子大で行なわれた国際女性デーイベントでは、学生20人が3チームに分かれて、ジェンダー平等の実現など3つの課題について考え、発表を行ないましたが、ジェンダー平等のチームは、多様な性への無理解や“らしさ”の押しつけの背景に、性教育をタブー視する日本の風潮があると指摘し、同性婚の法制化やLGBTQ理解増進法の立法の遅れに対して、多様な性の理解を推進するアイデアを紹介し、だれもが生きやすい社会をめざそうと呼びかけたそうです。
 
 宮崎市では大学生が、国際女性デーに合わせ、街頭意識調査をしました。「同性婚は理解できない」という声に対し、学生さんから「私たちは当たり前に感じている部分だったので、『わからない方もいるんだな』とびっくりした」「同じ場で上の方と若い人で一緒に話し合うことが大事なのではないか思う」などの声が上がっていました。

 新聞などのメディアでも、LGBTQ(性的マイノリティ)を取り上げたり、性の多様性にも言及するような記事が見られました。
 朝日新聞は元衆院議員の尾辻かな子さんへのロングインタビューを掲載しました。大阪府議時代の2005年に東京のパレードのステージでレズビアンであることをカムアウトし、2007年に参院選に出馬(6年後に繰り上げ当選)し、2017年に衆議院議員に初当選、同性婚の法制化をめざしつつ、ジェンダーの観点からの問題提起を続けてきた方です。尾辻さんは女性と同性愛者という二つの生き難さを抱えるダブルマイノリティとして「3月8日の国際女性デーの発信が年々強化される中で、性的マイノリティやレズビアンの視点を入れてほしいと以前から思っていた」「社会の評価が定まっていないことに斬り込み、可視化するのが私の役割なのかもしれません。問題提起すれば摩擦も起きるし、批判にもさらされる。しかし、誰かが声を上げなければ、何も変わらない」とも語っています。2005年のカミングアウトを振り返って「カミングアウトすると海外では「おめでとう」と祝福されますが、そんな雰囲気は遠かった。親戚は「出版を差し止めろ」と言い、メディアも困惑しながら報じている様子でした。議員のカミングアウトが何を意味するのか、みんなよくわからなかったのだと思います。一方、報道をきっかけに、数百人の当事者から「ありがとう」とのメールが届きました。でも文末にはそろって「気をつけて」と書いてありました」と語っているのも、当時のリアリティを伝える貴重な証言です。とても読み応えのあるインタビューです。ぜひご覧ください。
  
 同じく朝日新聞の「GLOBE+」では、国連加盟国が人権状況を互いに審査し合うUPR(Universal Periodic Review=普遍的・定期的審査)のことを紹介しながら、「性的少数者の人権状況も深刻だ。日本は主要7カ国(G7)の中で唯一、同性婚が合法化されていない国だ。それどころか、岸田首相のスピーチライターだった秘書官が2月上旬、LGBTQや同性婚への差別発言で更迭された。それでも首相自身、その後に開かれた衆院予算委員会​​で、「同性婚を認めないことは、国による不当な差別であるとは考えていない」と答弁。結局、自民党は同性婚や差別禁止法の成立を実現しようとするのではなく、建前だけの「理解増進法」でお茶を濁そうとしている姿勢が浮かび上がった」と述べられています。「首相秘書官の差別発言が報道されてすぐ、アメリカ大使館はTwitterで、国務省LGBTQI+人権促進担当特使・ジェシカ・スターン​氏の「国は差別から国民を守るべき」という声明を発信した」ということなども伝えられています。

 東京新聞は「<社説>国際女性デーに考える 国会の「壁」を破ろう」で、「女性差別は性的少数者らへの差別と同根でもあります。選択的夫婦別姓に反対し、性教育などジェンダー政策にも介入してきたのは安倍氏ら保守政治家でした。首相秘書官が性的少数者や同性婚を巡る差別発言で更迭されたのも、同性婚の法制化について「家族観や価値観、社会が変わってしまう課題」と岸田文雄首相が否定的に答弁した直後でした。差別発言には保守派に配慮する首相らの意向が強く反映されたことは容易に想像できます」と述べています。


 ゲイ・バイセクシュアル男性のみなさんは、もしかしたら国際女性デーは自分にはあまり関係がないと感じられるかもしれませんが、東京新聞が「女性差別は性的少数者らへの差別と同根」と指摘しているように(また、イヴ・セジウィックがホモソーシャルは女性とゲイを排除することで成り立っていると看破したように)、女性とゲイはずっと共通の敵(家父長制、ホモソーシャル、権威主義的な異性愛男性たち)に虐げられてきた歴史があるので、本来はともに手を取りあい、連帯し、差別や不平等と闘っていけるはずなのです。
 あらゆる性差別(セクシズム)からの解放を目的とした運動であるフェミニズムは、尾辻さんも語っているようにヘテロセクシズム(強制異性愛主義)からの解放も含む運動であってほしいですし、女性のなかには当然のようにクィア女性も含まれますし、(昨今、一部のフェミニストの方たちはトランス排除に傾き、あろうことか差別主義者とも手を組んだりしていますが)トランスジェンダーを排除しない「共に在るためのフェミニズム」こそが求められます。
 例えばレズビアンの方たちはすでに同性婚運動などにいっしょに取り組んでいるわけですが、男女の経済格差によってレズビアンカップルが経済的に厳しい状況に追い込まれがちであるという問題もありますし、ぼくらももっとジェンダー平等のことに関心を持ち、課題解決のためにできることをしていきましょう。
 
  

参考記事:
米タイム誌が「ウィメンズ・オブ・ザ・イヤー」を3/8の“国際女性デー”に開催 ケイト・ブランシェット、アンジェラ・バセットら選出(Hollywood Reporter Japan)
https://hollywoodreporter.jp/lifestyle/22278/

国際女性デー 権利擁護を訴え、福岡市天神で3年ぶりデモ行進(NetIB-NEWS)
https://www.data-max.co.jp/article/62518

ジェンダー平等実現へ学生がアイデア「だれもが生きやすい社会に」 京都女子大で国際女性デーイベント(京都民報)
https://www.kyoto-minpo.net/archives/2023/03/10/post-29007.php

国際女性デー「大学生から見たジェンダー像」宮崎県(FNN)
https://www.fnn.jp/articles/-/496893

摩擦呼んでも異論を「見える化」したい 同性愛公表の尾辻かな子さん(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASR375D24R35OXIE001.html

ジェンダーギャップ改善、動き鈍い日本政府 民間組織が手にした新たな「武器」UPR審査(GLOBE+)
https://globe.asahi.com/article/14856542

<社説>国際女性デーに考える 国会の「壁」を破ろう(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/235285

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