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【同性パートナーシップ証明制度】香川県で全市町での導入がコンプリートしたほか、全国のたくさんの自治体で制度がスタートしました

2023年04月02日

 4月1日、全国のたくさんの自治体で一斉に戸籍上同性のカップルなどを婚姻相当と認め証明書を発行する制度がスタートしました。同性パートナーシップ証明に加えてファミリーシップもスタートした自治体、新たに連携協定を結んだ自治体などもあります。以下、ニュースになったところをご紹介します。

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 札幌市は「パートナーシップ宣誓制度」を利用する市民が転出入する際の手続きを簡略化する連携協定を、新たに函館、北斗、帯広の3市と結びました。4月1日から開始します。札幌市は他に制度を導入している道内7市全てと連携することになります。
 基本的には転居前に継続申請する仕組みですが、帯広市のみ不安軽減のため転居後に申請します。
 札幌市は4月1日以降、宣誓できる条件について「双方が市内在住」から「どちらか一方が市内在住」へと拡大するほか、市が交付する宣誓書受領カードなどに子どもの氏名も記載できるファミリーシップ制度も加えるそうです。

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 岩手県は、県としては制度は導入していませんが、市町村の制度導入を後押しする指針を策定しました。強制力はないものの、一定の基準を設けることで、市町村間のばらつきをなくすのが狙いだそうです。
 指針は、制度利用者が共に成年に達していることなど基本的な要件を明記したうえで、届出を受けたら住民票、戸籍を確認して受理証明書を交付するといった基本的な流れを記述したものです(いわゆる「パートナーシップ宣誓制度」を念頭においていると思われます)。県による支援として、県営住宅の入居や県立病院の面会手続き、病状説明などに制度を活用できるということも記されました。
 県内では一関市が昨年、県内初となる「パートナーシップ宣誓制度」を導入し、今年5月には盛岡市が導入する予定です。ほかにも複数の自治体が導入を検討しています。
 県若者女性協働推進室の担当者は、指針策定の利点を「将来、制度の利用者が引っ越すこともある。自治体間にばらつきがなければ、利用者のためになる」と説明しました。
(全国には、パートナーシップ宣誓制度だけでなく、渋谷区のように公正証書の提出によって二人の関係を一定の法的根拠のもとで証明しようとする自治体もあれば、帯広市のように「証明制度」と「登録制度」が選べるような自治体もあります。自治体が地元の当事者の方たちの意見も聞きながら策定した制度は尊重されるべきですし、多様な制度があってよいはずです。どうしたらよりよい制度になるかという話し合いの過程自体に民主主義的な意義があるとも言えます。県が初めから「自治体間にばらつきがなければ、利用者のためになる」として市町村の制度のかたちを決めてしまうことには疑問を禁じえません…)
 
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 2019年に全国の都道府県として初めて「パートナーシップ宣誓制度」を導入した茨城県は、その手続きをメールや郵送だけで済ませられるよう制度改正を行ないました。
 これまでは宣誓の時と宣誓受領証(パートナーシップ証明書)の交付の時の2回、県庁を訪れる必要がありました。宣誓時は2人そろって来庁するのが条件になっていました。今後は宣誓に必要な一連の手続きをメールや郵送だけでも可能にするそうです(対面での宣誓もこれまで通りできます)
 県福祉政策課によると、県内の当事者団体から来庁による手続きが「アウティング」につながりかねないと懸念する声が寄せられていて、「身体的な理由で県庁に来られない人なども含め、さらに利用しやすい制度になれば」として、制度改正を行なったそうです。
 
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 千葉県では、柏市が3月15日から「パートナーシップ・ファミリーシップ届出制度」をはじめました。証明書があれば、病院で家族と同様の扱いを受けられ、市営住宅に家族として入居でき、罹災証明書の申請ができ、市の就学支援も受けられるようになるそうです。市共生・交流推進センターの仁尾順一所長は、「市民から『制度がなければ市を出たい』という声があった。多様な生き方を認め合い、個性と能力を生かして住みやすい街をみんなでつくっていければ」と話しています。
 2020年に「パートナーシップ宣誓制度」を導入していた松戸市は、4月1日からファミリーシップ制度も始めます。パートナーシップ宣誓者に同居する未成年の子どもがいる場合、宣誓証明書やカードに、ファミリーシップとして子どもの名前が記載でき、病院や保育園などで家族同様の扱いを受けることができるようになります。市行政経営課は「多様なパートナーシップ、家族のあり方に対する社会的理解が広がり、誰もが自分らしく生きることができる社会の実現を推進する」と話しています。
 また、千葉市と船橋市でも4月1日から、既存の「パートナーシップ宣誓制度」に加え、同居する未成年の子どもを家族とみなす「ファミリーシップ制度」をはじめました。船橋市では、パートナーシップ認定されたカップルにアンケートしたところ、導入を求める声が多かったことから、制度の拡充を決めたそうです。市は「誰もがお互いの個性や価値観を尊重し、自分らしく輝けるまちの実現を目指したい」としています。
 木更津市も4月から「パートナーシップ・ファミリーシップ宣誓制度」をはじめました。木更津市が素敵なのは、宣誓証明カードがラベンダー、ペールオレンジなどレインボーカラーをイメージした6色の中から選べるところです。制度について説明したガイドブックのデザインもおしゃれです。


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 東京都では墨田区、町田市、日野市で4月1日から、調布市でも3月15から制度が始まっています。調布市の担当者は「基礎自治体として当事者に寄り添って生活上の不便を改善し、多様性や人権尊重の姿勢を示す狙いもある」と説明。制度導入を機に、市職員がパートナーシップを宣誓した場合に育休制度などを使えるよう、市の条例を改正したそうです。
 また、杉並区では性の多様性尊重条例が1日から施行され、「杉並区パートナーシップ制度」が24日からスタートします。
 東京都はこの5区市と新たに連携に係る協定及び覚書を締結し、制度利用者の利便性の向上や多様な性に関する都民の理解推進につなげます。これにより、5区市が発行するパートナーシップ証明書等の活用が可能となります。詳しくはこちらをご覧ください。

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 福井県勝山市で4月1日から「パートナーシップ宣誓制度」がはじまりました。
 同じく福井県の鯖江市でも「パートナーシップ宣誓制度」がはじまりました。鯖江市では、宣誓して証明書を受け取ったカップルは、市営住宅の入居だけでなく、障害者控除対象者認定書の申請、寝具洗濯・乾燥・消毒サービスの申請、在宅理容・美容出張サービスの申請、U・Iターン移住就職等支援事業(全国型・東京圏型)移住支援金の申請などもできるそうです(詳しくは市公式サイトをご覧ください)
 福井県では越前市ですでに制度が始まっていて、ほかにも、あわら市と坂井市が2023年度中に導入する方針を決めているほか、永平寺町も来年4月から導入する準備を進めているそうです。北陸はかつて最もホモフォビアの強い地域でしたが(2015年の意識調査で、近所の人や同僚が同性愛者だったら「嫌だ」との回答の多さが全国1位)、福井でも地元の当事者やアライの方たちの活動のおかげで、性的マイノリティの権利を守ろうとする動きが広がりを見せています。
 
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 愛知県知立市は4月1日から「パートナーシップ・ファミリーシップ制度」を始めます。
 対象は双方かいずれかが知立市内在住で、18歳以上のカップルです。何らかの理由で結婚していない異性カップルも利用できます。法的効力はありませんが、所定の届出書を提出すると証明書が交付され、家族として市営住宅への入居が可能になります。市は今後、受けられる行政サービスの拡充に努めるということです。

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 滋賀県米原市も4月1日から「米原市パートナーシップ・ファミリーシップ宣誓制度」をはじめました。県内では彦根市に次いで2例目で、ファミリーシップも合わせて制度が導入されるのは県内で初めてです。

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 和歌山県那智勝浦町で4月1日から「パートナーシップ・ファミリーシップ制度」が始まりました。
 那智勝浦町では一昨年からレインボーフェスタ那智勝浦が開催され、性的マイノリティへの理解が広がり、町が制度導入に動きました。県内では橋本市が「パートナーシップ宣誓制度」を導入していましたが、那智勝浦町では子どもや親などを家族に相当する関係と認める「ファミリーシップ制度」も県内で初めて導入しました。
 町によると、住民票の続柄を「縁故者」などと表記できるほか、町営住宅に入居できたり、町立病院で治療を受ける際の同意の手続きなどで、家族と同等の対応を受けられます。
 堀順一郎町長は「制度の導入により、町民一人一人の人格や多様性を認め合い、誰もが自分らしくいきいきと暮らせるまちを目指します」と語っています。
 
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 兵庫県丹波篠山市と丹波市が「パートナーシップ宣誓制度」を開始しました。先行する阪神間と三田市の8市町との連携協定を結ぶそうです。また、高砂市でも「高砂市パートナーシップ・ファミリーシップ制度」が導入されました。加古川市も同様に7月にファミリーシップを含めたかたちで制度化します。
 神戸新聞が3月に県内41市町の担当者から制度の導入・検討状況を、導入済みの11市町には制度を利用したカップルの数なども電話で聞き取り調査を行なったところによると、兵庫県内で導入済みの11市町で公認されたカップルの数は129組に上り、この2年間で倍以上に増えたといいます。兵庫県内で導入を検討中の10市町のうち、播磨町が2023年度中、宍粟市は2024年度中の実現を目指し、それぞれ議会などで明言しているといい、神戸市、稲美町、三木市、上郡町、朝来市、新温泉町、南あわじ市、淡路市でも検討中だそうです。
 
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 岡山県井原市も1日、「パートナーシップ・ファミリーシップ制度」を導入しました。岡山県では10例目、ファミリーシップとしては5例目です。

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 香川県直島町が4月1日、「パートナーシップ宣誓制度」を導入しました。これにより県内の全17市町での導入がコンプリートしました。県内全自治体での導入は香川が全国初です。(メキシコで13年かかって全32州で同性婚が認められたという話を彷彿させます。素晴らしいです。おめでとうございます)
 直島町の担当者は制度の導入について「当事者の声が直接寄せられたわけではないが、やはり制度はあった方がよいと考えた」と話しています。
 プラウド香川の藤田博美代表によると、先行自治体で目立った反対の動きがなかったことに加え、自治体数が少ないということもあって一気に導入が進んでいったと、「当事者が行政職員向けの研修で『当事者はどの市町にもいる』と話してきた成果もあったのでは」とのことです。さらに藤田さんは「制度の導入は住民の理解促進になるし、当事者の安心にもつながるが、本質的な解決にはならない。国による速やかな結婚の平等の実現をお願いしたい」とも語りました。
 香川県ではプラウド香川の藤田博美さんが2005年から(日本で2番目に長い歴史を誇る)香川レインボー映画祭を開催し、多くの市民にLGBTQのリアリティを伝えてきました。また、丸亀市で2018年に制度の導入が検討されていながら反対多数により見送られてしまい、2019年8月に中四国初となる「丸亀レインボーパレード」が開催され、約200人もの方たちが全国から駆けつけたこともニュースになりました(昨年からは香川県全体という意味の「まんで!さぬきレインボーパレード」となりました)。三豊町在住の田中昭全さんと川田有希さんのカップルが「結婚の自由をすべての人に」訴訟の原告となり、メディアにも出演するなどして活躍してきました。こうしたさまざまな方たちの活動の積み重ねが、香川県の全市町での導入という偉業につながったとも言えるのではないでしょうか。

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 鹿児島県日置市は3月17日、性的少数者のカップルの関係を公的に証明する制度を導入する方針を明らかにしました。3月下旬にパブリックコメントを実施し、10月の制度運用開始を目指すそうです。

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 ほかにも制度を導入した自治体は本当にたくさんあり、たくさんありすぎて誰も正確に把握していないのでは…という感じなのですが、「結婚の自由をすべての人に」公式Twitterの情報も併せて、一覧にしてみます。4月1日に制度がスタートした自治体として把握できているのは、以下の通りです。

北海道 北斗市
山形県 酒田市
栃木県 小山市
埼玉県 新座市、朝霞市、志木市、鶴ヶ島市、蓮田市、春日部市、幸手市、松伏町、杉戸町、小川町、滑川町 (加須市が3月23日から導入済み)
千葉県 木更津市 (柏市が3月15日から導入済み)
東京都 墨田区、町田市、日野市 (4月24日から杉並区も)
神奈川県 湯河原町
福井県 勝山市、鯖江市
岐阜県 海津市
静岡県 富士市
愛知県 東海市
三重県 明和町
滋賀県 米原市
奈良県 斑鳩町
和歌山県 那智勝浦町
京都府 綾部市
大阪府 (4月3日から吹田市)
兵庫県 丹波市、丹波篠山市、高砂市
岡山県 井原市
広島県 東広島市
香川県 直島町
愛媛県 今治市、大洲市
福岡県 直方市、苅田町
長崎県 大村市
熊本県 阿蘇市、合志市
大分県 豊後高田市

 なお、岐阜県海津市の制度は、これまでの「パートナーシップ宣誓」にあたる部分もひっくるめて「ファミリーシップ宣誓」としています。「互いを人生のパートナーとし、日常生活において相互に協力し合うことを約束した関係、及び当該パートナーの一方又は双方の、生計を同一とする子又は親、その他市長が認める者が家族として協力し合う関係(子又は親等)」をファミリーシップと定義しています。「その他市長が認める者」が含まれているのがポイントで、パートナーやその親や子だけでなく、血縁関係が全くないとしても家族として一緒に暮らし、支え合っていることを市長に認めてもらえれば、ファミリーシップの証明書を発行してもらうことができそうです(「chosen family」への祝福という感じでしょうか。素敵です)
 


参考記事:
パートナー制度 札幌市が道内3市と連携協定 転出入時、申請簡略に(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/823987

岩手県がパートナーシップ制度導入の指針策定(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/morioka/20230328/6040017199.html
パートナーシップ制度、市町村の導入を後押し 岩手県が指針策定(河北新報)
https://kahoku.news/articles/20230328khn000079.html

同性カップルのパートナー宣誓、郵送で完結 アウティングの懸念受け(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASR4103FPR30UJHB00B.html

多様な生き方尊重へ 柏市がパートナーシップ制度導入 千葉県内7番目(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/240578
ファミリーシップ制度 千葉市、船橋市でも開始(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230401/ddl/k12/040/135000c

パートナーシップ制度 新たに勝山市と鯖江市が4月から導入(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/k/fukui/20230330/3050014310.html

知立市がパートナーシップ制度 4月から導入(中日新聞)
https://www.chunichi.co.jp/article/661697

「パートナーシップ・ファミリーシップ宣誓制度」 米原市で運用開始(中日新聞)
https://www.chunichi.co.jp/article/664269

那智勝浦町 で「ファミリーシップ制度」来月導入 県内初(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/wakayama/20230329/2040014195.html
 
同性カップル129組公認 県内9市 2年間で倍以上に 丹波篠山、丹波、高砂市は4月に制度開始(神戸新聞)
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202303/0016196729.shtml

井原市 パートナーシップ制度導入 性的少数者対象、子も家族と証明(山陽新聞)
https://www.sanyonews.jp/article/1382073

パートナーシップ宣誓制度 全17市町に拡大(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230401/ddl/k37/040/376000c

パートナーシップ制度 日置市が10月から導入へ 県内では指宿市、鹿児島市に次ぐ3例目(南日本新聞)
https://www.47news.jp/9074853.html

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