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サル痘(MPOX)についての大事な情報がまとめられた「MPOX GUIDE BOOK」がリリースされました

2023年04月10日

 ぷれいす東京の公式サイトでサル痘(MPOX)についての大事な情報がまとめられた「MPOX GUIDE BOOK」が発表されました。ぜひダウンロードして読んでみてください。

 エムポックス(サル痘)の感染が大阪府、徳島県、茨城県などでも確認これまでの感染者の累計が95名にといったニュースでお伝えしてきたように、今年に入ってからエムポックス(サル痘)への感染が急増しています。
 aktaやぷれいす東京、MASH大阪、国立感染症研究所、国立国際医療研究センター、厚労省、東京都は「感染症コミュニケーション円卓会議」を設け、感染症についての情報発信などについて検討してきました。その「感染症コミュニケーション円卓会議」をはじめ何人かの医師が協力し、この「MPOX GUIDE BOOK」が制作されました。
 海外での研究報告なども参照し、これまでにわかってきたエムポックス(サル痘)についての最新情報が、ゲイ・バイセクシュアル男性コミュニティの視点で(差別や偏見がないかたちで)まとめられていて、安心して読むことができます。
 
 感染経路は「主に接触感染」で、発疹や水疱、かさぶたのある皮膚や粘膜の病変部に触るなど、皮膚や粘膜同士の接触によって感染します。感染者とのキスやマッサージ、口腔内、校門、膣への成功し、性器や肛門に触る(舐める、挿入する)、体液に触れるなど、性的接触による感染が、全体の7割と高い割合を占めており、それが今回の人から人への感染の最大の特徴だと言えます。
 また、飛沫感染(咳やくしゃみなどしぶきを浴びる、至近距離での会話)については、感染者と至近距離で長時間過ごしている場合に限り、リスクが高まります。日常生活における飛沫感染のリスクは、起こりにくいと考えられています。

 また、「すぐに始められる感染リスクを下げる予防対策」として、以下のことが挙げられています。これまで具体的な予防策があまり明らかではなかったと思いますので、とても有益な情報ではないかと。ご参考になさってください。
・手を石鹸や流水でよく洗ったり、アルコール消毒をする 感染している人の使った物の共用を避ける
・お互いの体全体に異変がないかチェックする
・セックスをのパートナーを限定したり、セックスをの相手を少なくする
・感染リスクの高い場所やプレイを避ける
・コンドームを使用する
・具合の悪いときはセックスを控える


 それから、重要な事柄として、HIV陽性の方のエムポックス感染があります。
 昨年の東京都新宿東口検査・相談室城所室長へのインタビューでも述べられていた「HIV検査を受けずにいて、感染に気づかずに発症したり、免疫が低下している方がサル痘に感染してしまうと、命にかかわるようなことになる危険性があるのではないか」という懸念について、「致死率は低く、命を脅かすような病気ではないものの、HIV感染に気づかずに免疫が低下している状態で感染してしまうと、入院治療が必要になる場合や命に危険が及ぶ可能性が高くなります」とはっきり述べられました。
 
 これはガイドブックではなく、ぷれいす東京公式サイト内の「mpox(サル痘)関連情報」のページに掲載されていた情報ですが、有名な医学雑誌『ランセット』に発表された「Mpox in people with advanced HIV infection: a global case series(症状が進行したHIV陽性者におけるMpox)」という研究論文によると、免疫を表す指標であるCD4が350以下の方382名が研究に参加しましたが、そのうち107名(28%)が入院し、27名(25%)が死亡、27名全員がCD4数200未満でした。CD4数200未満の参加者のうちウイルス量が高い群は低い群と比べて死亡率が高くなりました。ART(HIV治療で広く実施されている多剤併用療法)を開始/再開した85名のうち、21名(25%)に免疫再構築症候群が認められ、内12名(57%)が死亡しました。また、CD4数100未満の群は300以上の群と比べて重篤な合併症(皮膚病変、肺病変、敗血症)が多く見られました。「2022年のMPOXのアウトブレイクの38〜50%をHIV陽性者が占めている」という記述もあります。免疫力の低下がMPOXへのかかりやすさや重症化に関係することが如実に示されています。
 ぷれいす東京のサイトでは「この研究は、MPOXの症例においてHIVとCD4数の検査を行なうことが重要であることに加え、HIV陽性かつCD4数が200未満でMPOX感染リスクの高い集団には、ワクチンを優先的に接種する必要があることを示しています」とコメントされています。
 
 ぷれいす東京の生島さんによると、厚労省エイズ動向委員会の報告で新規にHIV感染者と報告された人たちのうち、CD4が200以下の人たちが30%弱にも上っています。さらにエイズ患者(発症でHIV陽性と気づく人)を加えた場合、より高い割合に上るという研究もあります。
「地域に自分の感染を知らないで生活しているHIV陽性者の割合は、100人のうち10人くらいという推計値が複数あります。HIV検査をより多くの人に受けていただき、免疫状態を確認しながら、行動を変える、プラス、ワクチン接種という選択肢を増やすことが必要なのではないでしょうか」


 昨年の欧米でのサル痘(エムポックス)感染者の多くがゲイ・バイセクシュアル男性で、その半数近くをHIV陽性者が占めていました。治療をしてHIVが検出値以下になっていたり、免疫値が安定している方であればよいのですが、HIV感染したことを知らずにいたり、エイズを発症したりして免疫力が著しく下がっている方は、重症化の危険があり、なかには命を落とす方もいるということが明らかになりました。
 7日のニュースでもお伝えしたように、現状、日本で承認されているワクチンは「生ワクチン」で、HIV陽性者に接種した場合の安全性が明らかになっていません。であれば、海外の安全なワクチンを輸入し、使えるようにしていただきたいですよね。エムポックスの流行が、どういう方たちにとって「命に関わる」問題なのかということが明らかになったわけですから、「命を救う」ための施策を進めていただきたいです。

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