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【結婚の自由をすべての人に】名古屋地裁が画期的な違憲判決を下し、喜びの声があふれました

2023年05月30日

 2年前の札幌地裁の時のような、それをさらに超えるような違憲判決が出ました。
 「結婚の自由をすべての人に」愛知訴訟の判決が5月30日、名古屋地裁で言い渡され、西村修裁判長は「法律婚の制度に付与されている重大な人格的利益をどこまで付与するかは国会の裁量だが、現状を放置することは合理性を欠く」「同性カップルに対しその関係を国の制度として公に証明せず、保護するのにふさわしい効果を付与するための枠組みすら与えていない」などとして、法の下の平等を定めた憲法14条1項と、婚姻の自由を定めた24条2項に違反するという違憲判決を下しました。

 北海道、東京、大阪と並んで2019年2月に一斉に行なわれた「結婚の自由をすべての人に」訴訟の一つである愛知訴訟。CBCテレビでは判決を前に、原告の大野利政さんと鷹見彰一さん(いずれも仮名、30代)のカップルの暮らしや同性婚への思いを伝える番組を放送しました。
 お二人は愛知県内のマンションに5年前から一緒に暮らしています。大野さんは、ディズニーランドのシンデレラ城の前で鷹見さんにプロポーズしました。つきあって半年経った頃、一緒に住むマンションを購入した時には、共同名義にすることができませんでした。お二人は弁護士の立ち合いの下、自分たちの関係を証明する「公正証書」を作り、互いを「人生のパートナー」とすること、さらに財産の贈与や手術の同意などにいたるまで、細かく決めましたが、二人の権利を完全に証明する力はなく、そもそも同性婚を認めていない法律を超えられないのが現実です。鷹見さんは、「不平等がある状態。それは公正証書ではどうにもできない現状」と語ります。大野さんは、「何があっても絶対最後には死別はある。それが早いか遅いかは運命次第ではあるんですけど、その時に笑顔で別れられないのかな、っていうのが今の状況。どれだけ幸せに過ごしてきても、最後の最後で笑顔でお別れできるかわからない、というのが自分の中でいちばん引っかかるところです」と語りました。鷹見さんも、「例えばパートナーとの別れが目の前に迫り、気持ち的には一種のパニック状態で、1分1秒を争う時に他人扱いされるのは、やっぱりつらい」と語りました。鷹見さんのお母さんは、「異性だったら婚姻届1枚で認めてもらえるのに、あの子たちは余分にいろんなとこへ行って、いろんなことをやってきたんだなって、苦労させてるなって親としては思う」と、証人として裁判の証言台にも立つなど、お二人をサポートしてきた鷹見さんの叔母さんは、「スタートを切って、すぐ裁判をしなきゃいけないっていうのは船出から難破したようなものですよね。異性間であれ、同性間であれ、自由に恋愛して、自由に結婚して、自由に別れたりする世界を、あの子たちにも見せてあげたい」と語りました。

 お二人が原告として立つことを決意し、何年も、何度も裁判所に足を運び、陳述書を書き、法廷で同性婚実現への思いを伝えてくれたこと、そして弁護団や支援者の方たちが支えてくれたことに感謝申し上げます。
 
 5月30日、名古屋地裁には、傍聴を求める方が200人も列を作ったそうです。会社を休み、裁判に駆けつけた方もたくさんいらしたと思います。残念ながら抽選に漏れた方も多かったと思いますが、運よく傍聴できた方たちは、違憲判決を聞いて涙し、最後に拍手も起こったといいます。
 西村裁判長はまず、婚姻の自由を保障した憲法25条1項は同性婚について定めたものではないとし、現行法の規定は同項には違反しないとしました。そのうえで、婚姻や家族に関する法律は「個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定しなければならない」とする同条2項に違反するかを検討。同性カップルは婚姻に伴う法的効果だけでなく、「国の制度により正当な関係と公証される重要な人格的利益を享受できていない」と認定しました。こうした不利益は結婚契約の公正証書作成などでは解消できないとして、「現状を放置することは個人の尊厳に照らして合理性を欠き、国会の立法裁量の範囲を超える」と指摘。現行規定は「保護するのにふさわしい効果を付与するための枠組みすら与えていないという限度で、同項に違反する」と判断しました。同様に、異性婚と異なる取扱いに合理的根拠は認められないとして、法の下の平等を保障した憲法14条1項についても違反する、としました。(判決の要旨をこの記事の最後にお伝えます)
 
 判決を聞いて鷹見さんは、「4年間という長い間の月日、諦めずに訴えてきたことが認められてよかった」「これをきっかけに本当に多くの人が、お互いを尊重しあって、助けあって生きていける世の中になったらと思う」と語りました。
 関西訴訟の原告のテレサさんと麻智さんも、「本当にうれしかったです」「大阪の時は合憲と、一番残念な判決だったので、そのリベンジをはたしてくれたと思う」と語っていました。
 パートナーと13年つきあっている愛知県岡崎市の西本梓さんは、一緒に住むためのアパートを探していて「同性(カップル)だから」という理由で入居を断られ、ショックを受けた経験があるそうですが、それだけに喜びもひとしおで、「まさか裁判官の口から言ってくれるとは」と語っていました。
 東京都から傍聴に駆けつけた長屋友美さんは、愛知県出身で、地元にいた時はカミングアウトできず、「結婚できないことで自分を否定してしまうことがあった」そうですが、今日の判決を聞いて、うれしくて涙が出たそうです。「はっきり違憲と言ってくれて、家族として認識してもらえたのが大きい。権利が侵害されているというところを明確におっしゃってくれた」「自分たちも、若い人たちも、安心して暮らせる社会に変わってほしい」
 ほかにも、地元の当事者の方がインタビューに答え、「法律的な立場の人が自分たちの味方になってくれたんだなと思って、勇気と元気をもらえた」「平等への一歩を踏み出せたと思って、とてもうれしかった。新しく生まれてくる人たちも同性婚ができる国になれたらいいと思う」と語っていました。
 速報が流れるや、SNS上でも歓喜のコメントがあふれました。

 弁護団の水谷陽子弁護士は、「婚姻の平等へ、さらに大きな一歩を踏むことができました」「全国の当事者の声が生かされていると思った。思いや実態に寄り添って、適切な判断をしていただいたと思う」と語りました。
 弁護団は判決後、「国に対する立法措置を直接要求するもので、同性婚の法制化に向けて極めて大きな意義を有する」との声明を発表しました。
 なお、判決報告会がYouTubeライブで配信されています。弁護団の方達の詳しい解説や見解をご覧いただけます。
  
 

 今回の名古屋地裁判決の要旨は以下の通りです。
(CALL4が判決の要旨と全文を掲載してくださっています。上のバナーのリンク先のページの下のほうにある【愛知】判決要旨、【愛知】判決全文をご覧ください)

◎憲法24条1項(婚姻の自由)に違反するか
 24条1項は、婚姻は「両性」の合意のみに基づき、成立すると規定する。憲法制定当時、同性間に法律婚を及ぼすことを要請されていたとは解し難い。
 その後、多数の諸外国で同性婚制度が導入され、我が国でも地方自治体の登録パートナーシップ制度の導入が進み、同性婚の法制化を求める声が上がるなど社会情勢が変化している。
 24条の主眼は、明治民法下の家制度を改め、婚姻を含む家族生活について民主主義の基本原理である個人の尊厳と両性の本質的平等の原則を定めたところにあった。同条が同性間に法律婚を及ぼすことを禁止しているとは解されない。
 伝統的に、婚姻制度は男女の結合関係を承認するもので、生まれた子の保護・育成を通じ、家族の中核を形成するととらえられてきた。現行の法律婚の拡張は、異性婚を前提に構築された婚姻制度全体を見直す契機になり、広く社会に影響を及ぼすことが避けられない。
 同性カップルにいかなる保護を付与する制度を構築するのかは、現行の法律婚制度とは別の規律を設けることもありうる。同性婚を肯定している国でも、パートナーシップ制度などを先行させ、後に同性婚制度に移行または併存させるなど、制定過程は様々だ。社会情勢の変化を考慮しても、憲法が一義的に同性間に法律婚を及ぼすことを要請するとは解し難い。したがって、24条1項に違反するとは言えない。

◎憲法24条2項(個人の尊厳と両性の本質的平等)に違反するか
 24条2項は、現行の法律婚を同性間に及ぼすことを要請していないと解するのが整合的だ。
 法律婚を利用できることが重大な法的利益であることは疑いの余地がない。同性カップルは自然生殖の可能性がないという点を除けば、異性カップルと何ら異なるところはない。
 性的指向および性自認は、医学心理学上、人生の初期または出生前に決定されている。自らの意思や精神医学的な療法によって変更されないにもかかわらず、法的利益を享受できない状態に陥っており、同性カップルと異性カップルとの間に著しい乖離が生じている。
 婚姻の本質は真摯な意思で共同生活を営むことにあり、その価値は人の尊厳に由来し、重要な人格的利益だ。人格的利益を実現する法律婚制度は、両当事者の関係が正当だと社会的に承認されることが欠かせない。
 現行制度は、歴史的な伝統的家族観に根差すもので、それ自体合理性を有する。しかし、婚姻の意義は、単に生殖と子の保護・育成のみにあるわけではなく、親密な関係に基づき永続性をもった生活共同体を構成することが、人生に充実をもたらす極めて重要な意義を有する。家族の多様化が指摘されており、伝統的な家族観が唯一絶対のものではなくなっている。
 同性愛を精神的病理であるとする見解は、20世紀後半頃には否定され、障害ではないとの知見が確立している。諸外国では1989年にデンマークが登録パートナーシップ制度を導入。2000年には、オランダが世界で初めて同性婚制度を導入し、現在までに28ヵ国が同性婚制度を導入している(編注:正確には現在までに34ヵ国です。2019年頃の状況を参照していたものと推察されます)
 我が国でも多数の地方自治体が登録パートナーシップ制度(編注:デンマークなど欧州の登録パートナーシップ制度=同性パートナー法と日本の自治体の同性パートナーシップ証明制度はまるで違うものであり、この言い方は誤解を招きます)を導入し、2018年以降の意識調査では、同性婚の賛成派が約6割半に及ぶものや、贅成派が男性の約7割、女性の9割弱を占める結果もある。
 同性カップルは、その関係が公証されず、保護するのにふさわしい効果の付与を受けるための枠組みすら与えられない甚大な不利益を被っており、結婚契約など公正証書を締結するなどしても解消できない。
 わが国のLGBTの人口規模は、平成27年および28年に行われた調査では4.9%〜7.6%だった。法律婚制度が制定されて70年以上が経過している。同性カップルが被る不利益は、その規模も期間も相当なものだ。
 立法は国の伝統や国民感情などを踏まえ、全体の規律を見据えた総合的な判断を要する。しかし、同性カップルが国の制度によって公証されたとしても、国民が被る具体的な不利益は想定し難い。地方自治体の登録パートナーシップ制度導入の増加により弊害が生じたという証拠はなく、伝統的家族観を重視する国民との間でも、共存する道を探ることはできる。
 同性カップルが法律婚による重大な人格的利益を享受することから一切排除されていることに疑問が生じている。現状を放置することは、個人の尊厳の要請に照らして合理性を欠き、国会の立法裁量の範囲を超えるものと見ざるをえない。
 24条2項に違反する。

◎憲法14条1項(法の下の平等)に違反するか
 14条1項は、法の下の平等を定めている。
 婚姻は、性的指向が向き合う者どうしの婚姻をもって初めて本質を伴った婚姻と言える。同性愛者にとって同性との婚姻が認められないのは、婚姻が認められないのと同義で、性的指向による別異取扱いにほかならない。国会の立法裁量の範囲を超えるものと見ざるをえず、14条1項にも違反する。



参考記事:
名古屋地裁 同性婚認めないのは憲法違反の判断(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/tokai-news/20230530/3000029384.html
「婚姻の平等へ大きな一歩」同性婚を認めないのは「違憲」と名古屋地裁 全国5か所で提訴され「札幌は違憲」「東京は違憲状態」「大阪は合憲」(TBS)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/cbc/513463?display=1
同性婚を認めないのは「違憲」とする判断 愛知県の男性カップルが訴え 名古屋地裁(メ〜テレ)
https://www.nagoyatv.com/news/?id=018989
同性婚訴訟、再び「違憲」=「立法裁量の範囲超える」―4件目判決・名古屋地裁(時事通信)
https://sp.m.jiji.com/article/show/2954241
同性婚認めずは違憲 同性カップル排除は疑問 名古屋地裁判決要旨(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASR5Z621MR5ZOIPE00S.html
裁判官の口から「違憲」 同性婚巡る訴訟、傍聴した当事者たちも涙(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASR5Z5J44R5ZOIPE011.html
同性婚不受理は違憲 名古屋地裁判決 法の下の平等・婚姻の自由に違反(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230530/k00/00m/040/009000c
【違憲判決】「同性同士の結婚を認めないのは、14条1項と24条2項に違反」名古屋地裁で違憲判決(結婚の平等訴訟)(ハフポスト日本版)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/marriage-equality-ruling-nagoya_jp_6472dba3e4b045ce24836e6b

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