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【同性パートナーシップ証明制度】大分県と滋賀県長浜市が来年4月から導入

2023年10月27日

 大分県の佐藤樹一郎知事は24日の定例会見で「制度を導入することによって、性的少数者の方が暮らしやすい社会を構築していくことができる」と述べ、早ければ来年4月にも「パートナーシップ宣誓制度」を導入する方針を明らかにしました。
 宣誓して県が承認したカップルは、公営住宅に入居できるほか、病院でパートナーが緊急手術を受ける際などに家族として扱われるようになることを目指しており、そのためにも制度を導入していない自治体との合意形成が必要だとして、佐藤知事は「各市町村と調整して実効性のある制度にしていきたい」と述べました。
 県は、2024年度の県政重点方針に「性的少数者等への支援強化」を挙げ、制度導入のほか性的少数者の相談体制の充実や居場所づくり支援を盛り込んでいます。県としての「パートナーシップ宣誓制度」導入もその一環で、今年1月、外部の有識者でつくる調査研究会から「県全体での導入に向けた合意形成が望まれる」「市町村間の格差解消等のためには、県全体での導入が効果的」との提言を受け、検討を進めてきました。
 県によると、都道府県単位では17都府県(10月1日現在)がすでに制度を導入し、11月からは福井県や山梨県でも導入される見通しで、県内の市町村では臼杵、豊後大野、竹田、日田、豊後高田、大分の6市が導入しているほか、佐伯市が導入を予定しています。
 

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 滋賀県長浜市は来年4月から「パートナーシップ宣誓制度」を導入する方針を固めました。市役所で24日にあった市人権尊重審議会で「パートナーシップ宣誓の取り扱いに関する要綱」の素案が示されました。
 市は、6月にLGBT理解増進法が施行されたことや、同性パートナーシップ証明制度を導入する自治体が増えていることなどから、性的少数者の人権についての理解を広げる取組みの一環として導入を決めました。結婚した世帯の新生活を支援する(新居の住居費および引越し費用の一部を助成)「結婚新生活支援事業」も適用するようです。

 滋賀県内では彦根、米原、近江八幡の3市が制度を導入しており、長浜市がこれに続きます。
 滋賀県では、大津市の越直美市長(当時)が2017年、LGBTQ差別をなくそうと「おおつレインボー宣言」を発し、同性パートナーシップ証明制度の導入も検討すると報じられました(詳細はこちら)。2018年からは制度導入検討が進み、検討会議で制度の要綱案の詳細な検討まで行なわれたにもかかわらず、2021年、検討会議に報告なく、制度導入が見送られました(京都新聞より)。2020年に当選した佐藤健司市長は、市議会で「制度の導入を否定するものではない」と度々答弁しているものの、導入には至っていません。佐藤市長は27日の定例記者会見で「今年度からLGBT電話相談を月1回から2回に増やした」「制度にはさまざまな議論がある。まず導入ではなく、市民の理解を促進していくという立場だ。県の動きも注視している」と述べました。
 県の動きはどうかというと、三日月大造知事は「滋賀県にない制度を導入している県もある。滋賀県は遅れている面もある」と認め、LGBT理解増進法成立後、毎日新聞の取材に「政党の対立が出すぎない地方だからこそ合意形成を目指せる。多様性ある社会を作りたい」と答えていました。しかし、実態は県内外の取組み状況を調べた程度で、9月19日の定例記者会見で初めて「具体的な検討を始める」と表明、10月18日の人権施策推進審議会では「当事者の声を聴くべきだ」といった意見は出たものの、対象をどこまで広げるかなど議論の深まりは見られなかったそうです。
 大津市のLGBTQ支援団体「にじいろBiwako」の代表、橋本竜二さんは「社会は性的少数者にフェアでないことに気付いてほしい」と語っています。

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 山梨県韮崎市は「パートナーシップ・ファミリーシップ制度」を10日から導入しました。宣誓するカップルの子や親も、同意があれば家族として宣誓受領証に記載できます。ファミリーシップ制度は山梨県で初です。市担当者は「多様性を認め人権が尊重される街としてアピールできれば」と話しています。
 制度を利用できるのは成人で、一方が韮崎市内に居住するなどの条件を満たすカップルで(男女の事実婚カップルも利用できます)、子どもは生計を同一にしている必要があります。書類を提出し、宣誓受領証が交付されると、市営住宅の入居、市立病院での面会や病状説明への立ち会い、こども医療費助成制度などで法律婚の家族と同様に扱われます。県の制度で宣誓した市民も同様に扱われます。
 県内で性の多様性についての啓発イベントや、当事者らのフリースペースを開いている団体「CoPrism(コプリズム)from山梨」の飛嶋一歩(かずほ)さんは、「養子を迎えられるのは婚姻したカップルに限られ、パートナーシップ宣誓しても連れ子は相手の養子にできない」と指摘します。急病やけがで実親がすぐ駆けつけられないとき、そのパートナーが手術の同意や保育所の迎えに対応しようとしても、家族と見なされず『親族を連れてきて』と言われるおそれがあり、老親が医療や介護を受ける場合も同じ問題が起こりえます。飛嶋さんはさらに、職員への研修を課題として挙げ、役所の窓口で職員が不用意な言動で当事者の尊厳を傷つけたり、アウティングをしたりしないように、としています。

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 新潟県では、花角知事が今年2月、「性の多様性の中でも結婚ということについても意識が進むかということは、現実をしっかり確認しないといけないとは思います」などと述べ、制度導入に慎重な姿勢を示していましたが(詳細はこちら)、9月には制度導入の是非を決める判断材料とするため、性の多様性に関する県民意識調査を実施し、2/3が制度が「必要」と回答したことが明らかになったため、県議会で制度導入についての議論が行なわれ、知事は「今回の調査結果では県や市町村がパートナーシップ制度を導入することについて、7割に近い方が必要、または、やや必要と回答しており、その結果を尊重したい」「県としては今回の調査結果をはじめ議会での議論、県内外の先行事例などを踏まえ、今後の対応を検討したい」と答弁していました。
 そして10月25日の定例記者会見で知事は、あらためて制度導入に前向きな姿勢を示しましたが、時期については「そんなに時間をかける問題ではないと思うが、いつまでにとは言えない」と述べました。

 


参考記事:
「パートナーシップ宣誓制度」県が来年度から導入へ(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/oita/20231024/5070017089.html
来年度にも「パートナーシップ宣誓制度」導入へ 同性カップルに婚姻と同等の関係を認め証明書交付(大分放送)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/obs/796149
「パートナーシップ宣誓制度」大分県が来年度から導入へ 同性のカップルでの県営住宅入居など可能に(テレビ大分)
https://www.fnn.jp/articles/-/605457
【大分】2024年度の県予算方針 時代の変化に対応(大分朝日放送)
https://www.youtube.com/watch?v=Go0awC16cKs
大分県パートナー制導入へ 来年度に(共同通信)
https://nordot.app/1089497955870703958
性的少数者カップルにも支援を 大分県もパートナーシップ制度導入へ(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASRBT76RQRBSTPJB00F.html
性的少数者カップルを公認 大分県が「宣誓制度」導入、来年度から(西日本新聞)
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/1140055/

長浜市、パートナーシップ制度を2024年4月導入方針 新生活支援も適用へ(中日新聞)
https://www.chunichi.co.jp/article/795098
「パートナーシップ宣誓制度」 導入遅れ、議論深まらず 人口カバー率16% 全国平均下回る(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20231028/ddl/k25/040/161000c

性的少数者カップルらの子や親も「家族」 山梨・韮崎市が認定制度(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20231023/k00/00m/040/027000c

パートナーシップ制度導入、新潟県民も「必要」が7割近く 花角英世知事「調査結果を尊重」制度化に前向き姿勢(新潟日報)
https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/302868

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