g-lad xx

NEWS

【同性パートナーシップ証明制度】福島県南相馬市が13日から「パートナーシップ・ファミリーシップ宣誓制度」を導入

2024年05月15日

 福島県南相馬市が13日、「パートナーシップ・ファミリーシップ宣誓制度」を導入しました。福島県内の自治体では伊達市に続き、2例目です。
 南相馬市は昨年7月、「ともによりそい・はぐくむ人権条例」を制定し、導入を準備してきました。同性カップルや事実婚のカップルが市民課でパートナーシップ宣誓の手続きを行なうと、宣誓書受領証(パートナーシップ証明書)とカードが交付されます。カップルの子どもや親も宣誓することで家族関係を証明するファミリーシップのカードなどを受け取ることができます。
 宣誓したカップルは市営住宅への入居の申込みや、市立総合病院で行なうインフォームドコンセント(十分な説明と同意)への同席、委任状なしでの課税証明書の交付手続きなどができるようになります。子の教育や親の介護に関する各種申請でパートナーとの関係を説明する手間を省くこともできます(詳細は南相馬市のホームページでご覧ください)
 門馬和夫市長は7日の定例記者会見で「(多様性の尊重を目指す)今の時代には必要な取り組み。福島県全体で導入されれば、効果はより高まるはず」と述べました。

 なお、東北では青森、秋田、山形で県単位の制度導入が実現しています。福島県男女共生課は「導入に向け検討を進める」としていますが、具体的な道筋は何も決まっていないそうです。
 
* * * * * * 

 この4月から「パートナーシップ宣誓制度」を一斉に始めた北海道の網走市と斜里町、清里町、小清水町、大空町の1市4町(東オホーツク定住自立圏)は、連携協定を締結し、宣誓した方が転出入した際の宣誓のやり直しが不要になる(手続きを簡略化する)とともに、「パートナーシップ宣誓制度」に関するすべての手続きがいずれの自治体でも可能になっています。
 これら1市4町は北見市とも連携協定を結んでいましたが、新たに今回、釧路市、室蘭市とも連携協定を結び、宣誓者の転出入手続きを簡略化できる地域が広がりました。

* * * * * *

 千葉県ではこれまで県営住宅への入居希望者(60歳未満)は親族との同居を要件としてきましたが、単身者や里子、宣誓した同性カップルなども入居できるよう改正する条例案を県がまとめました。空き家を解消し、コミュニティの活性化を図るねらいです。10月の入居募集に合わせた施行を目指し、今月16日までパブリックコメントを実施します。
 県によると、今年4月時点で41都道府県でパートナーシップ宣誓したカップルなどの入居が認められており、関東1都6県では千葉県を除く全ての都県で認められています。今回ようやく改正に踏み切るに至った経緯について、県の担当者は、他都県の対応や家族の形の多様化など、社会情勢の変化を踏まえたと話しています。
 しかし、千葉県内ではまだ制度を導入していない自治体も多く、そうした自治体では県営住宅へ入居できないという問題もあります。県は「住宅を確保するのが困難な人をサポートする支援法人もあるため、そちらに相談してほしい」としています(今こそ、県としての制度導入が求められるのではないでしょうか)(県は今年、性的少数者を含むさまざまな人が暮らしやすい社会を目指す「多様性を尊重する条例」を施行しています)
 「レインボー千葉の会」顧問の松尾圭さんは、自治体ごとの対応のばらつきを問題点に挙げつつ、「県が性的指向によらないパートナーとの同居を認めたことで、民間が提供する住宅への影響もあるのでは」と期待を寄せています。

* * * * * *
 
 神奈川県横須賀市は、定住促進と少子化対策の一環として、新婚世帯等へ新居の購入や賃貸費用等の一部を補助する結婚新生活支援事業を新年度からスタートしましたが、「パートナーシップ宣誓」したカップルも対象とされています。2024年4月~2025年3月に「パートナーシップ宣誓」した共に39歳以下のカップルであることや合計年間所得額が500万円未満であることなどの要件がありますが、引越費用や住宅取得(購入)費、住宅賃貸費用などについて補助が受けられます。詳しくは横須賀市ホームページ「結婚新生活支援事業について」をご覧ください。

* * * * * *

 長野県松本市も同様に「結婚新生活支援事業」制度の対象を今年度から性的少数者のカップルにも拡大しました。
 臥雲義尚市長は、対象拡大は「少子化対策などに直接は結びつかない」ものの「パートナーとして生活するのを市として後押しする」のが狙いだと述べています。「男性と女性というパートナー以外にも家庭を築いて、松本で暮らしていただきたい」「松本に暮らしている人にも、移り住んでいただく方にも、松本の多様性や包容力をしっかりアピールしていきたい」
 松本市は長野県で最も早く、2021年4月から「パートナーシップ宣誓制度」を導入しています。
 
 なお、長野県では、殺人などの犯罪被害者の遺族に支払われる県の遺族見舞金(60万円)について、県の「パートナーシップ届出制度」の対象になりうるカップルへ支給する仕組みを整えているそうです。3月の犯罪被害者給付金同性パートナー支給訴訟最高裁判決のおかげで、各地の自治体にこうした動きが広がっています。

* * * * * *
 
 今年2月から「パートナーシップ宣誓制度」が導入された新潟県上越市で、上越市パートナーシップ制度を広める会や市民団体が報告会を開き、実際に宣誓したカップルも登壇し、制度を利用した感想を語りました。
 実際に宣誓した方は、緊急時に救急車を呼ぶとき、関係性の説明を簡略化できるなどのメリットがあるとした一方で、宣誓の手続きに戸籍抄本の提出など必要な書類が多く、手続きが煩雑だと感じたそうです。「(4つの行政サービスについて)たったこれだけという実感。戸籍抄本の提出が併記されていることを市へ抗議しました。第一級の個人情報を引き換えるのは割に合わない」
 また、受けられる4つの行政サービス(市営住宅への入居申込み、住民票の続柄の表記を「縁故者」へ変更、軽自動車税の減免(障害のあるパートナーなどのために使用する軽自動車が対象)、保育園の送迎)については、実際には持ち家に住んでいて子どもがいないことから、ほとんど活用していないということです。
 報告会に参加した方からは「当事者に聞いたら、問題点がたくさんあることがわかった」と語り、市の多文化共生課 人権・同和対策室加藤弘之室長は「当事者からの意見を真摯に受け止め、今後の直しの参考にしたい。性の多様性について理解を広めていくことが必要。市民セミナーなどを通じて、広く市民から話を聞く機会を設けていきたい」と語りました。

 制度が導入された後も、このように実際に利用した方の声を市民や市にフィードバックし、よりよい制度にしていったり、少しでも地元の当事者の方が利用しやすくなったり、受けられる行政サービスが増えたり、生きづらさの軽減につながったりという流れになるのはとても大事なことですね。上越市パートナーシップ制度を広める会のみなさんの活動に敬意を表します。

* * * * * *

 新潟県のお隣の富山県は、2023年3月から「パートナーシップ宣誓制度」を導入しましたが(都道府県としては静岡県と並び全国で11例目、北陸三県では初)、導入から1年余りが経ち、宣誓したカップルは50組を超えたそうです。県の県民生活課は「当事者の要望を聞きながら制度を整えてきたので、利用するカップルが増えたと考えている。引き続き制度の周知や利便性の向上に努めていきたい」としています。
 
* * * * * *
 
 制度導入自治体の人口カバー率は8割を超え、同性カップルやその子、親などの関係性を証明する制度を導入することを前提として、そのうえでいかに制度を利用したカップルに異性婚夫婦と同様の行政サービスを提供するかということが問われるフェーズに入っています。そこには、犯罪被害者遺族給付金のこと、結婚支援事業のこと、自治体の職員への扶養手当の支給など、補助金や手当などでの待遇の平等化も含まれるようになりました。
 ずっと前から声を上げ、闘ってきた方たちのおかげで、世の中はここまで変わってきたのです。
 大目標である婚姻平等の実現(同性婚の法制化)にとっても、こうした自治体の平等の施策が後押しになるはずです。(国に同性婚法制化の議論を促す知事も現れたことは先にお伝えした通りです。各地の議会などでもこうした動きが増えていくことが期待されます)
 


参考記事:
パートナーシップ制度 福島・南相馬市、13日に運用開始(河北新報)
https://kahoku.news/articles/20240507khn000082.html
福島県南相馬市「パートナーシップ」「ファミリーシップ」宣誓制度13日開始へ 県内2例目(福島民報)
https://www.minpo.jp/news/moredetail/20240508116382

パートナーシップ制度で網走など5市町 釧路、室蘭市とも連携(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1009068/

千葉県の県営住宅、単身者や里子、同性パートナーも入居可能に(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASS584RVZS58UDCB00XM.html

結婚した2人への「新生活支援」、性的少数者にも 松本市が対象拡大(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASS4V4RRPS4VUOOB003M.html

パートナーシップ宣誓制度 運用から3か月経過し報告会(上越妙高タウン情報)
https://www.joetsu.ne.jp/249465

「パートナーシップ宣誓制度」宣誓したカップル50組超(NHK富山)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/toyama/20240429/3060016624.html

INDEX

SCHEDULE