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長崎県大村市が全国で初めて男性カップルに続柄欄に「夫(未届)」と記載した住民票を交付しました

2024年05月28日

 長崎県大村市が今月2日、市内の男性の同性カップルに対し、続柄欄に「夫(未届)」と記載した住民票を交付したことがわかりました。これまで男女間の事実婚として利用されていた表記を、同性カップルにも適用したものです。交付を受けたお二人は「信じられないことで驚いたし、嬉しかった。同性間の事実婚が行政上の書類で認められた意義は大きい。今回の受理で法的効力がない『パートナーシップ宣誓制度』が今後、法的効力が発揮される可能性があり、ほかの自治体でも同じような事例や議論が生まれてほしい」と語っています。

 
 住民票を受け取ったのは、今年3月から大村市内で暮らす松浦慶太さんと藤山裕太郎さんのカップル。お二人は2018年からおつきあいを始め、藤山さんが住む尼崎市に松浦さんが引っ越して同棲を始め、2020年、尼崎市でパートナーシップ宣誓を行ないました。2023年6月には市内のLGBTQフレンドリーな神社で神前結婚式を挙げました。藤山さんは出身地である長崎県諫早市へのUターンを考えるようになりましたが、諫早市では同性パートナーシップ証明制度がなく、二人の関係を証明する手立てがなくなってしまうということで、近くの大村市に二人で引っ越しました。初めは同じ住所に別々の世帯でそれぞれ「世帯主」と登録していましたが、雇用保険の関係で事実婚であると認められると引っ越し費用のサポートが倍くらい違うという話もあり、松浦さんは5月2日、世帯をひとつにする手続きを申請し、ダメ元で続柄を「夫(未届)」にできないかと市役所の市民課に相談しました。最初は「戸籍の関係で難しい」と断られたそうなのですが、松浦さんが「戸籍の関係は事実婚の異性カップルも同性カップルも同じでは。正式な理由を教えてください」とお願いしたところ、市役所の方たちが協議を行ない、結果、「大丈夫です」と認められたそうです。こうして松浦さんが「世帯主」、藤山さんを「夫(未届)」と表記した住民票が発行されることになりました。
 28日に行なわれた記者会見で、松浦さんは「信じられない、こんなことが起こるなんて」「パートナーシップ証明を受けた時よりうれしかった」「夫と書いてもらったことって、今までなかったと思いますが、そうやって認めてくれるところがあるんだ、という驚きと、引っ越してきた大村市がそれをやってくれたことの喜び」「夢のよう。心から感謝しています」と、藤山さんは「前例がないことで、うれしかった。大村市に来てよかった。これからもそういう自治体が増えたらいいな」と喜びを語りました。なお、藤山さんのご家族や甥御さん、姪御さんなども以前から松浦さんを家族として受け容れてくださっていますが、今回の件を伝えたところ、「すごかすごかー」と驚き、喜んでくれたそうです。
 全国の当事者の方たちからも、「素敵なニュースありがとう!」「自分たちの自治体でもチャレンジします」といったメールが届いているそうです。

 大村市は昨年から「パートナーシップ宣誓制度」を導入しています。
 市民課は「取扱いについて市でも確認し、申請者に寄り添って対応した」としています。こうした市としての対応は、把握する限りで初めてだそうです。(※鳥取県倉吉市は昨年10月、同性パートナーの希望があれば、住民票の続柄を未届けの妻または夫とすると市のホームページに記載しているそうですが、市は、公表されている範囲では変更の希望があったとは把握していない、とのことです。実際に公に対応がなされたのは今回の大村市が初、ということのようです)
 パートナーシップ証明を受けた同性カップルの場合、続柄に「同居人」「縁故者」などと記載される例がありますが、松浦さんは「事実婚に使われる続柄が行政書類に記され、これが突破口となり、事実婚と同等の権利が得られる可能性が出てくる。ほかの自治体でも同様に続柄の変更を求める方が現れるでしょうし、自治体の側も認めていくでしょうし、この動きが全国に広がると思います。同性婚の法制化や社会の変化にも大きな影響を与えることが期待されます」と語りました。
 
 
 この件に関して住民票業務を所管する総務省は「事実関係を確認していないが、容認できるかどうか省内で検討が必要だ」としています。総務省の自治行政局住民制度課は「初めて聞いた。ほかの自治体の対応も把握していない。自治体の個別の判断ではないか」としたうえで、「同性カップルについて住民票に世帯主との関係を表記する場合、『同居人』が該当すると考えられる」と話しているそうです。
 また、小泉法務大臣は記者会見で「同性婚に関わる社会全体の動きを積極的に注視していくスタンスは今後も続けたい。国全体が大きなコンセンサスに向かって動いていくことを見極めていくべき時期にいると感じる」と述べました。
 国が今後、大村市の取組みにイチャモンをつけたり取消を要求する可能性も危惧されますが、(最高裁は事実婚と同等だと認めてますし、「国全体での大きなコンセンサス」はすでに得られていると思いますので)このまま同性カップルも事実婚と同等だと認める流れになってほしいです。
 



参考記事:
長崎 大村市が同性カップルに「夫(未届)」記載の住民票交付(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240528/k10014462711000.html
大村・同性パートナーの住民票は「夫」で受理 全国的に異例の対応か(テレビ長崎)
https://www.ktn.co.jp/news/detail.php?id=20240528003
住民票続柄「夫」と記載 男性カップル、長崎・大村(共同通信)
https://nordot.app/1167769994284778228?c=724086615123804160
同性カップル住民票、事実婚示す「夫(未届)」と記載 長崎県大村市(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASS5W32K7S5WTOLB004M.html
住民票の続柄に「夫」記載 長崎・大村の男性カップル 総務省が対応検討(長崎新聞)
https://www.nagasaki-np.co.jp/kijis/?kijiid=1167990951097582123

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