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今年の世界エイズデーキャンペーンのテーマはU=U

2024年07月17日

 7月1日、今年の世界エイズデーキャンペーンのテーマが発表されました。
「U=U 知ることから、もう一度。12月1日は世界エイズデー。」
 ここ十数年の世界エイズデーキャンペーンは「エイズはまだ終わっていない」とか「エイズのイメージをUPDATEしよう」といったテーマがほとんどで、U=Uがテーマに選ばれるのはおそらく初めてです。

 
 厚生労働省委託事業としてエイズ予防財団が運営する「API-Net(エイズ予防情報ネット)」には、このように掲載されています。
「これまでHIV/エイズに対して様々な取組がなされてきました。
 治療法の進歩によりHIV陽性者の予後が改善された結果、HIV陽性者は感染の早期把握、治療の早期開始・継続によりエイズの発症を防ぐことができ、HIVに感染していない人と同等の生活を送ることが期待できるようになりました。また、近年では、HIV治療を受け、血液中のウイルス量が検査で検出できない程度に最低6ヶ月以上継続的に抑えられているHIV陽性者からは、性行為によってHIVが感染することがないことも確認されています。このことは、Undetectable(検出限界値未満)=Untransmittable(HIV感染しない)、略して「U=U」と呼ばれています。
 つまり、治療の進歩でHIV陽性者の生活は大きく変わり、HIV感染の予防にもその進歩に支えられた様々な選択肢が用意されるようになりました。しかし、現状はそうした変化が正確な情報として十分に伝わっているとは言えず、有効な治療法がなく死に至る病であった時代の認識にとどまっている場合が少なくありません。そのことがHIV感染を心配する人たちを検査や治療から遠ざけ、また、差別や偏見を招く要因の一つになっているとも言われています。
 そこで、今年度の「世界エイズデー」キャンペーンテーマは、この「U=U」という言葉を知ることを契機に、もう一度HIV/エイズのことを皆で考えてみましょうというメッセージが込められています。ひとりでも多くの人がHIV/エイズのことを自分の事として捉え、HIV/エイズに関する検査や治療、支援などの知識を身につける契機とし、最新の知識の普及を通じて、HIV検査の受検促進や差別・偏見の解消につなげていきたいと考えています。」

 故・長谷川博史さんが発案し、世界エイズデーを中心にしたキャンペーン期間を含むHIV/エイズ分野の継続的な情報提供ツールの運用主体として活動している「コミュニティアクション」では、このテーマに対して以下のようなサブコピーを捕捉しています。
「治療を続け、体内のHIV量が極めて低くなれば、性行為で他の人にHIVが感染することはありません。
 このことは、Undetectable(検出限界値未満)=Untransmittable(感染しない)、略して『U=U』と呼ばれています。
 HIVに感染している人やその周囲の人たちへの社会的な差別と偏見をなくし、HIV検査を受けやすい環境を広げることがいま必要です。」
 また、キャンペーンテーマの趣旨を、以下のように解説しています。
「U=Uは治療の進歩がもたらした追加的予防手段として、国際的に大きく注目されています。ただし、2つの難解な英単語を頭文字でつなぐメッセージは、国内ではまだなじみが薄く、まず知ってもらうこと、関心を持ってもらうことが必要です。
 知ることから始めようと呼びかけているのは、このためです。
 U=Uには、HIV陽性者やその周囲の人たちへの社会的な差別と偏見を解消し、HIV検査を受けやすい環境を広げていく力があります。
 一方で大きな課題も一つあります。
 「治療を受け、U=Uの状態に達しているかどうか」でHIV陽性者を分けてしまう側面があることです。国連エイズ合同計画(UNAIDS)は今年、2024年版U=U説明書を発表しました。
 その中には次のように書かれています。
・U=Uが可能なところでは、U=Uの成果、および可能性の強調を妨げる理由はない。
・U=Uの実現が困難な人、または状況もある。どんな場合でも、HIV陽性者のウイルスのレベルが高いことをスティグマや差別、犯罪化の口実にすべきではない。ウイルス量のレベルが低いことを特権化することもできない。
・ウイルス量は人としての価値や質の指標ではない。
 キャンぺーンの中では、こうした課題も紹介し、知ることを通してU=Uの可能性に対する理解をより深めていくことが大切になります」
 治療の現場で医師がU=UかどうかでHIV陽性者を選別し、新たな差別を生み出している現状があるというのは(こちらの記事にも具体的に書かれています)とても悲しいことですね。コミュニティアクションが指摘しているような課題のことも一緒に世間に認知されるといいですね。
 
 一見して意味が伝わりづらい言葉ではありますが、U=Uが世間の人たちに広く認知されるようになれば、HIV陽性者やその周囲の人たちへの差別と偏見を解消し、HIV検査を受けやすい環境を広げていくことにつながると期待されます。
 ゲイ・バイセクシュアル男性の間でも、(2020年にはコミュニティセンターに来場した方の8割が認知していたというデータもありますが)まだU=Uのことを知らない方もいらっしゃると思いますので、みなさんも何かの折にU=Uを話題にしたり、お友達と情報を共有したりしてみてはいかがでしょうか。


 

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