g-lad xx

NEWS

今日の『虎に翼』は神回でした…「爺さんになって人生を振り返った時、俺は心から幸せだったと言いたいんだ」

2024年08月20日

 NHK朝ドラ『虎に翼』で先週金曜日、主人公の寅子に旧友の轟が「俺がつきあってる方だ」と言って同性パートナーを紹介するシーンが描かれたのは(寅子が戸惑っていた様子だったとは言え)画期的でしたが、今週は同性カップルに結婚の自由がないことや夫婦別姓が強制されていることの違憲性を問う展開になり、20日(火)の放送は轟が「この先の人生、お互いを支え合える保障は法的にない。俺らが死ねば、俺らの関係は世の中からはなかったことになる。だが、爺さんになって人生を振り返った時、俺は心から幸せだったと言いたいんだ」と語る、涙なしには観られない「神回」となりました。

【関連記事】
『虎に翼』同性愛放送回後、脚本の吉田さんが「私は、透明化されている人たちを描き続けたい」とコメント
https://gladxx.jp/news/2024/06/9454.html
『虎に翼』第100話は、朝ドラで同性カップルが描かれた初めての回になりました
https://gladxx.jp/news/2024/08/9597.html


 19日(月)放送の第101話は、金曜の、あのカミングアウトのシーンの続きから始まりました。轟は、パートナーの遠藤時雄について、時雄の友人の弁護を担当したことがきっかけで知り合い、つきあうようになったと説明し、「佐田(寅子)には時雄さんとの関係をうそで取り繕いたくなかった」と語りました。しかし、寅子のほうは、祝福するどころか、何の反応も返せませんでした。そして、戻ってきた女性弁護士の友人・山田よねに、星航一からプロポーズされたと話し、しかし、子どもを作るわけでもなく、経済的にも自立し合っていてそれぞれの家族もいるため、今さら結婚する意味を見いだせないと相談するのです(結婚したくてもできない二人の前で。なんというデリカシーのなさでしょう…)。寅子は自宅に帰ってから、航一か自分のどちらかが姓を変えなくてはいけないことに気づき、夢にまで見るほど葛藤します。「なぜどちらか一方の名字を名乗らなければいけないのか?」「なぜ星ではなく佐田にこだわるのか?」
 同性婚が認められない不条理と、(主に女性が)姓を変えなければいけない不条理…憲法14条は「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と謳っているにもかかわらず、70年近く経った今もなお、婚姻平等(同性婚)と選択的夫婦別姓は実現しておらず、そのことで苦しんでいる人たちがいるということを『虎に翼』は真正面から世の中に問いかけたのでした。
(昭和30年代に職場で出会ってつきあうとかカミングアウトとかリアルじゃない、ありえない、と思う方もいらしたことでしょうが、同性どうしでつきあうどころか、同性愛者というアイデンティティを持つことすら困難で(世の中に何の情報もありませんでした)、家族に知られようものなら勘当され、職場をクビになり、孤独に死んでいく…という当時のリアルが描かれたとしても、救いがありませんし、同性愛者が婚姻制度から排除されている現状は憲法違反ではないかと世に問うことも難しかったと思います)
 
 20日(火)の放送回では、寅子が再び轟とよねの山田轟法律事務所に赴き、まず、法的に結婚が認められていない轟の前で、自分だけ結婚についての悩みを相談するという残酷な振る舞いをしてしまったことを謝罪します。轟は「そうか」と言って、笑顔を見せました。航一との結婚について轟に聞かれた寅子は、「名字を変えなければいけないことが引っかかって」「自分事になるまでどちらかが名字を変えなくてはいけない意味について考えていなかった。そして男女の恋人のことしか考えていなかった」と反省の弁を述べます。轟は「人間なんてそんなもんだ」「過ぎてからわかることばかりだ」と優しく答えます。そして、子どもの頃からやたらと“男らしさ”にこだわり、“男の型”にはまろうとしていたと語り、郷里の佐賀にいたときは、親友の花岡と会えるよう、話せるよう同じ時間を狙って通学し、弁護士になる夢をうれしそうに語る花岡の顔が見たくて同じ弁護士を志し、同じ大学に進んだ、それがどんな感情だったのかを自覚したのは、花岡が亡くなって自暴自棄になっていたときに話を聞いてくれたよねのおかげだったと振り返りました。その後、どうせ自分は世の中にはわかってもらえないとあきらめていたのですが、たまたま時雄に出会い、「思いを告げて、同じ気持ちでいてくれると知り、自分の全てを受け入れてもらえた気がした」と語ります。「最初は、限られた場所でも、時雄さんといられれば、それだけで本当に良かった。でも…」と言って、壁に書かれている憲法14条の文言に目を向け、「この先の人生、お互いを支え合える保障は法的にない。俺らが死ねば、俺らの関係は世の中からはなかったことになる。だが、爺さんになって人生を振り返ったとき、俺は心から幸せだったと言いたいんだ」と語ったのです。

 伊藤悟さんが「これは轟の言葉であると同時に、まさに私の言葉。今振り返ってみれば」私も自分のあり方がわからず絶望し、同じ仲間に出会って自分を受け入れ肯定するのに、轟並みに時間とエネルギーを要した。この轟の言葉たちをずっと心に留めておきたい」とXに綴っていたように、たくさんのゲイ(をはじめとするセクシュアルマイノリティ)の方たちの心の琴線に触れ、共感を呼び、胸を熱くさせるような名ゼリフでした。「感動した」「泣いた」という声も上がっていました。本当に素晴らしいシーンでした。



 あと1ヶ月余りですが、轟と時雄のカップルが今後どうなっていくのか、さらに素晴らしいシーンが待っているのか、期待しながら見守っていきましょう。
 
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合
毎週月〜金曜8:00〜8:15 【再放送】毎週月〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム
毎週月〜金曜7:30〜7:45 【再放送】毎週土曜8:15〜9:30
BS4K
毎週月〜金曜7:30〜7:45 【再放送】毎週土曜10:15~11:30

 
 
参考記事:
『虎に翼』“婚姻制度”に鋭く切り込む週明けに 寅子が同性婚&夫婦別姓に感じた「はて?」(リアルサウンド)
https://realsound.jp/movie/2024/08/post-1751842.html
『虎に翼』伊藤沙莉が“5人”の寅子に 轟「人間なんてそんなもんだ」に込められた思い(リアルサウンド)
https://realsound.jp/movie/2024/08/post-1753069.html
NHK朝ドラ「虎に翼」轟(戸塚純貴)、花岡(岩田剛典)への思い明かす 視聴者「幸せになってほしい」(サンスポ)
https://www.sanspo.com/article/20240820-Y2XJY7F775ORHEHQDZESV4TFXU/
『虎に翼』第101回、“同性婚”“夫婦別姓”…結婚に関する課題に迫る「どう描かれるか期待」(エンタメNEXT)
https://www.excite.co.jp/news/article/Entamenext_33952/

INDEX

SCHEDULE