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GLAADメディア賞でのシンシア・エリヴォのスピーチが話題に

2025年04月03日

 LGBTQコミュニティにおいて著しい功績のあった作品や人物、メディアなどを称えるGLAADメディア賞が3月27日(現地時間)、LAで開催され、映画『ウィキッド ふたりの魔女』で主演を務めた俳優シンシア・エリヴォが「スティーブン・F・コルザック賞(特別賞)」を受賞、その受賞スピーチが素晴らしいと報じられています。

 
 BuzzFeed Japanによると、シンシア・エリヴォは、エンタメ・メディア業界でLGBTQやその社会的課題の認知に大きな貢献を果たしたオープンリー・クィアの人物に贈られる「スティーブン・F・コルザック賞(特別賞)」※を受賞しました(シンシア・エリヴォは2022年にバイセクシュアルであることをカムアウトしています)

※スティーブン・F・コルザック賞は、人生の終盤をエンターテイメント界でのエイズへの偏見やホモフォビアの解消に費やし、90年にエイズで亡くなったキャスティングディレクターのStephen F. Kolzakを記念して名付けられた賞で、エンターテイメント産業やメディア業界での活動を通じてホモフォビア解消に貢献したオープンリーLGBTQの個人に対して授与される賞です。

 受賞スピーチでシンシアは、こう語りました(GLAADの公式サイトに掲載されたスピーチ全文の和訳です。何か間違いがあればご指摘ください)
「厳しい旅でした。そのすべての瞬間が深い喜びでもありました。でもそれよりも何よりも、私のコミュニティの温かさを感じてきました。
 あなたが本当のあなた自身であることについて話してきました。あなた自身が勝ち目のない闘いで得られる賞金について。それがどれだけ困難かよく知っています。ですから、私たちが自分らしくいられるための勇気を見つけようとする人々のために今日は語ろうと思います。なぜなら、ここはそういう場だと思うからです。
 朝起きて自分自身であろうとすると、歓迎されていないと感じながらも居場所を求めなくてはなりません。人々に何と名指してほしいか毎日教えなければならないし、古来よりの語彙であるthey/themという言葉の、複数の人々を指すだけじゃない意味を何度も人々に説明するフラストレーションと向き合わなくてはなりません。
 尊厳をもって接してほしいとお願いすることも容易ではありません。あなたはそもそも尊厳をもって扱われるべきですから。あなたを取り巻く世界があなたをドアの内側に閉じ込めようとするなら、自分が何者であるか学ぶことも容易ではありません。芍薬のように厳しい環境でも咲く花があります。でも、ほとんどの花は日光を浴びたり栄養をもらわなければ咲くことはできません。
 ここに集まっている私たちは光栄な受賞者ですが、それは私たち全員にとって容易だったかというと、それはどうでしょうか。道は(『オズの魔法使い』に登場する)黄色いレンガの道のように歩きやすいものではなく、デコボコで穴が開いてたりしたんじゃないでしょうか。どんな道も、あなたが通ってきたのだから、美しい道です。なかには道なき道をかきわけて通ってきた人もいるでしょう。道を見つけられなかった人たちも、励まされ、自分自身に忍耐強くあることで道が見えてきたんじゃないでしょうか。
 私は今宵このイベントが、私たちが成し遂げてきたことを祝福する場であると知っているし、この身に余る光栄を心から喜んでいます。でも、本当の仕事は、次の人たちが道を見つけられるような地ならしなんじゃないでしょうか、私たちがしてもらってきたように。どんなに頑張っても道を見つけられない人たちのために。この場所にお集まりのみなさんなら、私はそう願っていますが、世界に本当の自分を示し、道を照らしだすことができます。みなさんにはそれができます。
 私たちは『out and proud』という言葉を使います。そうする強さやキャパシティを持ってないとしても、私はあなたがそうありたいと静かに孤独に願っていることを誇りに思います。私たちは皆、目に見える存在です。お互いを見ることができます。私にはあなたが見えるし、あなたにも私が見えます。でも、見えなかった人たちにも思いを馳せてほしい。暗闇の中でうずくまり、道を照らす光を待っている人たちのことを。皆さん一人ひとりにお願いします。あなたが持っている光を、それを待っている人たちに照らしてあげてください。
 このような素晴らしい場を設けてくれたGLAADに感謝します。皆さん、どうぞ素晴らしい夜をお過ごしください」
 この力強いメッセージに、会場からは歓声と拍手が湧き起こったといいます。
 スピーチを投稿したGLAADの公式インスタグラムには、「今までの人生で見てきたスピーチのなかで、最高のスピーチの一つだと思う。涙が止まりません」「反・多様性の動きがある昨今に、特に大事なメッセージだと思う。シンシアの語っていたことがすべてです。彼女の受賞がとてもふさわしいことを表す瞬間でしょう!」「自分の存在をなかなか受け入れられない人に、この言葉が響いてくれるといいなと思います」といったコメントが寄せられました。


 WWDによると、この日のGLAADメディア賞では俳優でテレビプロデューサーのマイケル・ユーリー(『アグリー・ベティ』『スワンソング』)が司会をつとめ、シンシア・エリヴォやリル・ナズ・X、MJロドリゲス(『POSE』)などLGBTQのアイコンとも目されるセレブリティが集まりました。
 レッドカーペットでマイケル・ユーリーは、『ウィキッド ふたりの魔女』をイメージしたピンクとグリーンを大胆にあしらったジェンダー・ベンディングな衣装で登場しました。「LGBTQIAコミュニティに属する私たち一人ひとりがエルファバのように、ありのままで完璧なのです。GLAADメディア賞は、メディアにおける表現と可視化のためにあります。ファッションは完璧にフィットします。クリスチャン・シリアノ、『ウィキッド』、そしてシンシア、全てがそれを体現していますし、それらを称えるのにパーティの幕開けを飾る豪快で大胆なファッションに勝る方法があるでしょうか」とユーリーは語ったそうです。
 

 一方、最近シングルを立て続けにリリースし、3月28日にサプライズで8曲入りEP『Days Before Dreamboy』をリリースしたリル・ナズ・Xは、レッドカーペットでのインタビューでテイラー・スウィフトとのコラボレーションの機会があったことを明かしました。「何かを一緒に制作していました。彼女は私に、楽曲にバースを加える機会をくれたのですが、その雰囲気をうまくつかめず、結果的に実現しませんでした」「私は彼女を誇りに思っています。彼女のアルバムが大好きです。彼女は自分らしく活動していて、最高峰にいます。私とのコラボを検討してくれたことに感謝しています」
 今回は残念ながら実現しませんでしたが、今後のテイラーとのコラボの可能性までは否定しなかったそうです。いつか素敵なコラボが実現するのを楽しみにしましょう。

 
 なお、今回のGLAADメディア賞での主な受賞は以下の通りです。
・最優秀映画賞(全米公開)は、『クィア』でも『ウィキッド』でもなく、『マイ・オールド・アス 2人のワタシ』という映画に贈られました。俳優ミーガン・パークの長編監督第2作で、18歳の少女が未来の自分自身との出会いをきっかけに現在の自分を見つめ直していく姿を描いた青春ドラマだそうです。
・最優秀映画賞(限定公開)は、『Crossing』(原題)というイスタンブールのトランスコミュニティを描いた作品に贈られました。
・最優秀新作ドラマ賞は『アガサ・オール・アロング』に贈られました。主役級の人たちの同性キスシーンなど、正面からクィアを描いた作品だそうです。
・最優秀ドラマ賞(限定公開またはアンソロジー)は、『わたしのトナカイちゃん』に贈られました。クリエイターかつ主演のリチャード・ガッドがバイセクシュアルで、主演女優のジェシカ・ガニングがレズビアンであることをオープンにしています。内容的にもクィアで、トランスジェンダーのキャラクターも登場します。
・最優秀コメディドラマ賞は『Hacks』に贈られました。次世代のクィア・ドラマと称される作品で、ノンバイナリーの俳優カール・クレモンズ・ホプキンズも出演しています。
・最優秀リアリティ番組賞は『ル・ポールのドラァグ・レース』に贈られました。もはや説明不要ですね。
・最優秀ドキュメンタリー賞は『ウィル&ハーパー』に贈られました。
・最優秀音楽アーティスト賞はドーチーに贈られました。



参考記事:
『ウィキッド』のシンシア・エリヴォ、力強いメッセージにネット&共演者称賛「涙が止まらない」「反多様性の動きがある今、必要な言葉」(BuzzFeed Japan)
https://www.buzzfeed.com/jp/kaitotakashima/cynthia-erivo-glaad-speech

シンシア・エリヴォらLGBTQアイコンが集結 ピンク&グリーンの「ウィキッド」スーツも 「GLAADメディア賞」(WWD)
https://www.wwdjapan.com/articles/2082212

リル・ナズ・X、テイラー・スウィフトとのコラボが実現しなかった理由を明かす(Billboard JAPAN)
https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/147946

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