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『べらぼう』第18回で描かれた壮絶な性の物語

2025年05月12日

 大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第18回で、蔦重と幼少の頃に生き別れた唐丸こと捨吉が、7歳の頃から客を取らされていたという壮絶な身の上を語る場面が描かれました。
 
 
「江戸のメディア王」として後に名を馳せる蔦重こと蔦屋重三郎の人生を描くドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』。初回では亡くなった女郎たちが投込寺で着物をはぎ取られ全裸で重なる姿が物議を醸し、第2話ではこちらのニュースでお伝えしたように平賀源内が「男一筋」だと語る場面が描かれ、話題になりました。

 5月11日放送の第18話では、世間で評判を呼んでいた北川豊章の絵を見た蔦重(横浜流星さん)が、その絵がかつて姿を消した天才少年・唐丸が描いたものだと見抜き、唐丸を探し、住処を突き止めます。男女問わず客を取りながら、描いた絵を豊章に渡して暮らしていた捨吉(染谷将太さん)と名乗るその男は、俺はこの暮らしが好きなんだと言って蔦重を追い返します。あきらめきれない蔦重は、捨吉が「自身を罰するため」にそのようなの生き方をしていると察し、再び家に。裸で気を失って倒れていた捨吉を起こすと、捨吉は身の上を語り始め、夜鷹(街娼)をしていた母が堕胎しようとしてもできず、生まれてきた子であり、母に「なんで生まれてきたんだ」と罵られながら育った、人別(戸籍)もなく、7歳から客を取らされていたという壮絶な過去を打ち明けました。母親が「7歳過ぎたら自分で食い扶持を稼ぎな」と言って、家に男を連れてきて、無理やり…(この世の生き地獄です…)。明和の大火で母が家の下敷きになり、自分もフラフラと炎の方へと歩いていたとき、「べらぼうめ」と救い出したのが蔦重で、その後、唐丸は吉原に居場所を見つけ、利発な振る舞いで周囲から大事にされますが(第4話で描かれています)、運悪く母親の元ヒモに見つかってしまい、吉原にはいられなくなって(蔦重とも離れ離れになり)、今に至る…というお話でした。蔦重は周囲の人たちの助けも借りながら見事に捨吉を救い出し、そして、彼に「歌麿」という屋号を授けるのです(感動…)
  
 近世まで日本で男色は特別なことではなく日常的なことでした(ただし、僧侶と稚児、戦国武将と小姓のように、年長者が少年を愛する関係性が基本であり、現代のゲイのありようとは異なるものでした)。江戸の町には陰間茶屋という10~17歳の少年(主に歌舞伎役者の卵)が男娼として働く遊郭がありました。捨吉は陰間茶屋で働きながらファンがついて歌舞伎役者としてデビューするという華やかな表舞台ではなく、夜鷹のように闇で春を売って暮らし、今は陰間として働ける年齢を過ぎてしまったこともあり、半ば自傷のように、暴力的だったり特殊な客を相手にしていたのです(痛ましいことです…)
 
 当代一の美人画家として浮世絵界に君臨することになる喜多川歌麿の誕生秘話であり、誰も描いたことのない壮絶な生い立ちの物語でした。実際は歌麿がどこで生まれたかなど、鳥山石燕に師事するまでの幼少期のことは記録になく、誰も知らないままですので、逆にこのような壮絶な境遇をフィクションとして思い描くことが可能になっているという面もあるようです。
 美術展ナビの記事によると、歌麿は吉原で最下級とされた「切見世」という遊女屋で働く「てっぽう」と呼ばれる遊女を描く異色の作品を残しています。「見捨てられた存在である彼女たちを大判五色揃の大首絵にわざわざ仕立てた歌麿。しかもモデルに対するまなざしの優しさ、内面に迫る迫力は画面からも明らかです」
 脚本の森下佳子さんをはじめドラマ製作陣は、このような下級遊女にも優しいまなざしを注ぐ歌麿の絵から、あのような物語を創造したのではないかとも言われています。
 
 
 あくまでもフィクションではありますが、江戸時代には女児だけでなく男児も男性相手に春を売るという性の現実があったことは確かで、それが国民的番組とも言える大河ドラマで描かれたことには(現代のLGBTQやセックスワークや児童福祉の話とは別次元の話として受け止める必要がありますが)何かしらの意味があるかと思い、お伝えした次第です。
 
 

 
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第18回 歌麿よ、見徳(みるがとく)は一炊夢(いっすいのゆめ)
再放送:
NHK総合 5月17日(土)13:05-13:50

NHKプラス(後追い視聴)



 
 
参考記事: 
「べらぼう」性を巡る表現で異例の注意喚起(シネマトゥデイ)
https://www.cinematoday.jp/page/A0009474
『べらぼう』“捨吉”染谷将太、母の日にはつらい壮絶半生告白→まさかの展開にネット感動「歌麿爆誕!」「神回」(クランクイン!)
https://www.crank-in.net/news/166428
「7歳で男娼」「大蛇」NHK大河「べらぼう」で「性に関する表現」注意喚起テロップ(日刊スポーツ)
https://www.nikkansports.com/entertainment/photonews/photonews_nsInc_202505120000240-0.html
【大河ドラマ べらぼう】第18回「歌麿よ、見徳は一炊夢」回想 世のどん底を知る歌麿、作品世界と繋がる人物像 蔦重の名声を高めた喜三二の「夢物語」(美術展ナビ)
https://artexhibition.jp/topics/news/20250511-AEJ2646118/

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