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オンタリオ州観光局の方にインタビュー
昨年ワールドプライドが開催され、そのLGBTシーンの魅力に注目が集まっているトロント。今年も6月19日(金)~28日(日)にプライド・トロントが開催され、日本からのツアーも企画されています。これを積極的にプッシュしているのが、オンタリオ州観光局の方たちです。
昨年ワールドプライドが開催され、そのLGBTシーンの魅力に注目が集まっているトロント。今年も6月19日(金)~28日(日)にプライド・トロントが開催され、日本からのツアーが企画されています。これを積極的にプッシュしているのが、カナダ・オンタリオ州観光局日本事務所の方たちです。ディレクター/マーケティング担当の岡田知子さん(写真右)、アカウント・マネージャーの田中恵美さん(写真左)にお話をお聞きしました。初めてお会いしたにもかかわらず、とても気さくに、フレンドリーにお話してくださいました。(聞き手:後藤純一)
ーーオンタリオ州観光局として、トロントのプライドパレードをはじめとするLGBTシーンをプッシュするようになったと思うのですが、どのような経緯で?
岡田さん:以前からLGBT方面はやろうよという話になっていて、プライド・トロントを見に行きましょう、というモニターツアーを実施したりもしたのですが、私が実際にパレードを見たのは2013年で、スゴイと思って、去年がワールドプライドで。オンタリオ州観光局はトロントに本部がありますが、本部の熱意があってこその、私たちの日本での活動につながっていくわけなんですが、まず実際にトロント・プライドのイベント、そしてパレードやマーチを見てみて、これは面白い!と思ったんです。この分野はなかなか偏見があったりで難しいと思いますが、私は面白いな、このマーケットが伸びていくといいいなと思ってやっています。
ーーなるほど。実際にパレードをご覧になって、いかがでした?
岡田さん:驚いたのが、男性も女性も年老いた方も子どももいて。東京だと、よっぽどこなれた親御さんじゃないかぎり子どもは連れて来ないと思いますが、幼稚園くらいの子どもの横でドラァグクイーンとか、もうちょっと身にまとった方がいいんじゃないの?みたいな人が闊歩してるんですよね。おじちゃんたちがポンポン持って踊ってたりするのも面白いし、派手な格好の人もいて、カラフルで。女の子でまっぱな人、おじちゃんのまっぱな人。ハード系の…
ーーレザーを着たマッチョ兄貴たち。
岡田さん:そうそう、いろんな人がいて。私は日本人なので、日本だとこうはいかないだろうと思うけど、トロントのパレードでは許されてて。別に脱ぐことを助長しているわけではないし。いろんな表現があって。出てる山車とかも巨大で、この角曲がれるの?みたいな。パレードってこういうもんだよなって思って。お金をかければいいわけではないけど、パレードって最低限かけないとデモ行進みたいになっちゃうから。
ーー本当にそうですよね。
田中さん:ニューヨークに住んでたことがあるんですが、向こうのパレードは完全にショーなんですよね。柵で仕切られてて、勝手には入れない。同じようにドラァグクイーンも、レザーの人もいるけど、歩いて楽しいというよりは、わー素敵って別の世界を見ている感じ。岡田から聞いたのは、ちょっとパレードに入って踊ったりとか、いっしょになって盛り上がってもいいみたい。
ーー沿道で見てるだけじゃなく、参加もOKなんですね?
岡田さん:そういうふうに書いちゃうとマズいと思います(笑)。出る人は登録しなきゃいけないので。でもたとえば、沿道にいた人がちょっと列に飛び込んで踊ったりしても、引っ剥がされたりすることはたぶんないです。
ーーそこはゆるいというか、自由というか。
岡田さん:そうですね。山車がなくて、ずらずら歩いてるだけの集団もいるし、バギーに子供を乗せて歩いてる人がいたり、いろんな参加のしかたがある。企業から役所から、いろんな団体が出てきて。親御さんたちが「We’re proud of our son」とかプラカードを揚げてたりするのは感動しますね。メインのパレードのほかにもダイクマーチとトランスマーチもあって。すごくパワーを感じます。差別がなんだとかありますけど、楽しければいいんじゃない?って感じなんです。当事者も楽しめればいいし、私たちのようなストレートも楽しめればいいと思う。季節的にもちょうど過ごしやすいです。
ーーカナダはいち早く(世界で3番目に)同性婚を認めた国で、その中でもオンタリオ州は2003年、最初にOKを出した州ですね。トロントはモントリオールやバンクーバーと並ぶゲイシーンの中心地でもありますし、もともとオンタリオ州観光局の方から、パレードを見に来てもらいましょうという話が来てたんでしょうか?
岡田さん:そうですね。トロントのパレードは30年以上の歴史があって、地理的にニューヨークから飛行機で1時間くらいってこともあって。自分たち(オンタリオ州の人たち)はトロントの方が面白いよ、楽しいよ、って言ってます。
田中さん:もともとカナダは移民を受け入れていて、外国人とかLGBTとか分けへだてなく受け入れてるんです。トロントは多民族の文化であふれている。いろんなコミュニティが存在している。ニューヨークが「人種のるつぼ」なら、トロントは「人種のモザイク」。プライドパレードもトロントのワン・オブ・イベントとして自然なかたちで街にあるので、紹介して、観光誘致できればと。
ーーなるほど。「オンタリオスタイル」っていう旅行サイトでパレードとかLGBT関連の特集がけっこう大きな扱いで載っていましたが、そこにはこちらもかかわっているんですか?
岡田さん:実はそうなんです。特別なイベントではなく、たくさんあるいろんなイベントのうちのひとつとみなして、もっといろんな方たちにオンタリオ州でのプライドを楽しんでいただきたいなと思って紹介しています。記事をみて、そうか、こんななのか、じゃ、行ってみよう。となるといいなと思って。
ーーということは、日本の人たちにもトロントとかのLGBTシーンの魅力を体験していただきたいという、お二人の意向が働いているということですよね。
岡田さん:はい。最終的には、プライドだけでなく、オンタリオに行っていただく方が増えてほしいわけなんですが、それが修学旅行であるにせよ、LGBTツアーであるにせよ、楽しんでくれれば。それと、日本のLGBTの方たちに、フレンドリーだよ、オンタリオ州では同性どうしで結婚もできるよ、とお伝えしたくて。
ーー国外の同性カップルにも結婚証明書を発行してくれるんですよね。
岡田さん:外国人にも結婚証明書を出してくれるのはたぶんカナダだけ。日本では公的効力はないわけですが…
ーーでも決してただの紙切れではないんですよね。かけがえのないものになるはず。
岡田さん:日本もずいぶん変わってきたとはいえ、まだそこまで行ってないから、そういった証明書が発行されるのは魅力かな、と思います。あと、パレードだけじゃなくてプライド・ウィーク中はストリートフェスみたいなのもやってて、けっこうビッグスターが来る。EN VOGUEとかダイアナ・キングとかが、その辺の駐車場の野外ステージででふつうに歌ってたり。そういうステージが何箇所もあって。夏のひとつのイベントとして楽しめます。季節的にもちょうどいい。
ーー街をあげてのお祭りのひとつみたいな感じ。
岡田さん:野球観戦もアウトドアもあるし、いろんなイベントもあるし、という旅のチョイスのひとつとして、プライドもある。パレード見物なんて場所取りが大変なくらいの人出ですが、それだけ、見てて楽しめる。いろんな人種がいる土地なので、アジア人のグループもあるし、日本人が浴衣を着て歩いてたりもする。イスラエルのグループも中東コミュニティっていう団体もあるし。中東のLGBT事情ってよくわからないけど、政治的なことがあるんですよね。というのは、現地に住んでる日本人の方がいて、政治にかかわる話も書いていて、奥が深い。あまり詳しく説明はできないけど、それこそ対立もあるみたいで、そういうものを乗り越えて。中東の人なんてタブー中のタブーじゃないですか、にもかかわらず、トロントでは表現できるっていうことが素晴らしい。
ーー中東ほどではないんですが、日本も同じアジアで、あまり表立ってはカミングアウトできない空気があって。顔出しを躊躇する人も多いし、パレードもそんなには大きくならないというのが現状。そういう意味で、トロントのパレードを日本のLGBTにぜひ見ていただきたいというお気持ちとか、ありますか?
岡田さん:おこがましい気もするんですけど、日本の現状があって、本来の自分らしい生活を送れていない方がきっとたくさんいて、そういう方が少しの間だけでも、生き生きと本当の自分を表現できるタイミングがあるのであれば、もし私がそうだったら、すごくうれしいと思う。パレードに関係ない時に行くのもアリですし。まったく人種差別がないとは言いませんけど、他の地域に比べて極めて少ないですから。つかの間、カナダの自由さの中ではじけられるのは、いいなと思う。物は試しで、一回行ってもらって、なんだ言うほどじゃないじゃんってことになるかもしれないけど。街にはゲイバーやクラブ、マッサージの店とか、いろいろありますから。
ーーゲイタウンを探索するのも楽しそうですよね。
岡田さん:いろんな人との出会いもあるはず。帰るときに「また楽しかったから来よう」って思ってくれたら大成功。そんな中で、ちょっとアウトドアするのもいいし。
ーートロントではふつうに男性どうし、女性どうしで手をつないでたり、肩を組んでたりする感じですか?
岡田さん:けっこういます。外見だけではわからないけど…もしもしあなた、ゲイですか?とは聞かないけど(笑)、そういう人たちを見ることは多い。ハンサムだなあと思ってたけど、本当は女性?みたいな人もいる。二丁目行くと見かけるよね、みたいな人がたくさんいます。自分自身が外国や他の土地から来たっていう人も多いので、他人を好奇の目で見たりしない。
ーーそういう空気感を感じたいですね。
田中さん:ぜひトロントで手をつないで歩いてください。
ーーなんなら結婚もできますよと。
田中さん:そうです。
岡田さん:今回はパレードにウェイトがありますが、プライドウィークじゃないときでもひどい思いをしたっていうことはありませんので(笑)。たえずいろんな所から人が訪れているので、交流しやすいと思います。インターナショナルな街です。
ーーあらためてなのですが、パレードに参加する前と参加した後で、LGBTに対する見方が変わった部分とか、ありました?
岡田さん:私は沿道で見てただけなんですけど、見るまではけっこう、にぎやかしのイベントかな?って思ってたんですが、知れば知るほど、まじめというか、そこにはちゃんとしたメッセージがあるということがわかってきましたね。
ーーお祭り騒ぎだけじゃないと。
岡田さん:シンポジウムとかも行われていますし。
田中さん:根本的に日本がかなり遅れてますよね。今さら思うところもまったくないです。
ーー思うっていうのは?
田中さん:ニューヨークに住んでた頃、周囲にたくさんゲイの友達がいたので、それが自然だと思ってて。最近、日本でもようやく、大手企業などで研修を始めたりしてますね。海外にいると、自然にそういうマインドができるんですが、日本はまだ研修までしないと雇用するのに抵抗があるのかな?とビックリしてしまって…少しカルチャーショックを受けました。ですので、オンタリオ州としてやるのも、ごく自然な感じでした。
ーーやって当たり前という感じなんですね。
岡田さん:レベルは人それぞれ。いい人ぶるつもりはないですけど、誰が誰を好きになろうといいじゃない、というのがあって。違和感とまではいかないですけど、ひとりの人間として立派なんだし、って。私はパレードを見て、いろんな意味でショックを受けたけど、本来こういうものだよねって確認できた。カナダでは政治の世界でもその辺は認められていて、オンタリオ州の首相って…
ーーレズビアンの方なんですよね?
岡田さん:キャスリーン・ウィンっていう人なんですが、セクシュアリティを公にしている。彼女もプライドパレードに来て歩くんですよ。今後の自分の選挙戦も関係しているような気もしますけど。
ーー州でいちばん偉い人がお墨付きを与えているというか、全面的に応援しているわけですね。トロントのパレードに行くと、そのスゴさが実感できますよと。
岡田さん:日本とは違う、トロントならではの先進性や楽しさを、きっと実感していただけると思います。見るもよし、参加するもよし。
ーーでは最後に、日本のLGBTの方たちにひとこと、お願いします。
岡田さん:イベントとかパレードにフォーカスが当たりがちですが、ナイアガラにも90分で行けるし、トロントでもアウトドアを楽しめたり、北の方に行けば野生動物に出会える場所もあって。ワイナリー巡りなんかもできます。リッチなお宿とか、新しいミュージカルなんかも紹介できますし。トロント・プライド・プラスαで楽しんでいただければと思います。
田中さん:カップルで来ていただいて、ぜひ手をつないで街中を歩いてください。
ーーどうもありがとうございました。
INDEX
- 『超多様性トークショー!なれそめ』に出演した西村宏堂さん&フアンさんへのインタビュー
- 多摩地域検査・相談室の方にお話を聞きました
- 『老ナルキソス』『変わるまで、生きる』を監督した東海林毅さんに、映画に込めた思いやセクシュアリティのことなどをお聞きしました
- HIV、梅毒、コロナ、サル痘…いま、僕らが検査を受けるべき理由:東京都新宿東口検査・相談室城所室長へのインタビュー
- NYでモデルとして活躍する柳喬之さんへのインタビュー
- 虹色のトラックに込めたゲイとしての思い――世界的な書道家、Maaya Wakasugiさんへのインタビュー
- ぷれいす東京・生島さんへのインタビュー:「COVID-19サバイバーズ・グループ東京」について
- 二丁目で香港ワッフルのお店を営むJeffさんへのインタビュー
- 東京都新宿東口検査・相談室の城所室長へのインタビュー
- 俳優の水越友紀さんへのインタビュー
- 数々のLGBTイベントに出演し、賞賛を集めてきた島谷ひとみさんが今、ゲイの皆さんに贈る愛のメッセージ
- 今こそ私たちの歴史を記録・保存する時−−「LGBTQコミュニティ・アーカイブ」プロジェクト
- LGBT高齢者が共同生活できるシニアハウスの設置を目指す久保わたるさん
- 岩崎宏美さん出演のクラブパーティを開催するkeiZiroさんへのインタビュー
- 英国の「飛び込み王子」トム・デイリーについて、裏磐梯のゲストハウスのオーナー・GENTAさんにお話をお聞きしました
- ニューヨーク在住のフォトグラファー、KAZ SENJUさん
- ジョニー・ウィアーが来日!(映画『氷上の王、ジョン・カリー』公開記念トークイベント)
- 畠山健介さんへのインタビュー
- トークセッション「ダイアモンドは永遠に――日本におけるドラァグクイーン・パーティーの起源」
- RAINBOW FESTA!2018事務局長・桜井秀人さんへのインタビュー
SCHEDULE
- 11.10BALL – FINALAST –