REVIEW
アート展レポート:MORIUO EXHIBITION「Loneliness and Joy」
MORIUOさんの個展「Loneliness and Joy」が東中野「platform3」で始まりました。バレンタインをモチーフに、思春期のゲイが経験しがちなさびしさと、だからこその恋の喜びを、ちょっとbitterでsweetなテイストで描いた素敵な作品でした

つい先日まで能村さんの個展が開催されていた「platform3」で、MORIUOさんの個展「Loneliness and Joy」が始まりました。ゲイを描くという点では同じでも、アーティストによってずいぶん表現が違うんだなぁと思わずにはいられませんでした。
MORIUOさんはこれまで「IM MY LIFE展」で、野球部の男の子が告白するシーンだったり、ゲイウェディングだったり、すっかり髪が白くなっても仲良く暮らすカップルだったりといった幸せなゲイのライフヒストリーや、子育てをするカップルやパレードなどLGBTQの未来像や多様な家族も描いてきた方です。
今回は「Loneliness」というMORIUOさんにしては珍しい言葉が入ったタイトルでした。展示されている絵の前のテーブルの上に今回の個展に合わせて作られた作品集が置かれていて、そちらを見ると、ストーリーがよくわかるのですが、小さい頃、本当はバレエを習いたかったけど無理やり野球をさせられたゲイの男の子が、バレンタインのときに同じ野球部の男の子にチョコレートを渡してみんなにからかわれて、そういうことを表立ってやってはいけないんだと悟り、孤独感に苛まれ…。そんな子が成長して高校生になり、いつもバス停で見かけるる男の子が気になって…というストーリーです。バス停で彼を待つ姿や、会話をするようになったところや、こっそりバレンタインのチョコをパーカーのフードに入れる様子、そしてホワイトデーのお返し、といったラブリーで「Joy」があふれる素敵な絵が展示されています。

子どもの頃、自分は他の人とは違うんだと気づいて悲しみやさびしさを感じたり、周りの人にからかわれたり、いじめられたりという経験をした方は少なくないと思います。そういう「Loneliness」な時期を経てきたからこそ、恋が実ったときの喜びはひとしおだし、出会えた奇跡に感謝したくなりますよね。この高校生の男の子たちのようなハッピーな出会いは現実にはなかなかないかもしれませんが(イマドキはふつうにあるのかもしれないですね)、いいなあ、こういう恋をしたかったなぁと思わせてくれます。幸せな夢を見せてくれます。そんな作品たちでした。
サービスショットといいますか、二人の水着姿の絵もあります。GOGOとかできそうなマッチョ体型でありつつ「スポーツで自然についた筋肉」だし、さわやかだし、初々しいし、好きな方多いだろうなと思う一枚です。
GWの5/3まで開催されています。ご都合のよいときにぜひお出かけください。

MORIUO EXHIBITION「Loneliness and Joy」
会期:4月20日(日)〜5月3日(土)
会場:platform3(東京都中野区東中野1丁目56−5 401号室)
開館時間:平日14:00-22:00、土日祝12:00-22:00
※MORIUOさんの在廊情報はInstagramで随時、お知らせされるそうです。お会いしたい方はぜひチェックしてください。
INDEX
- たとえ社会の理解が進んでも法制度が守ってくれなかったらこんな悲劇に見舞われる…私たちが直面する現実をリアルに丁寧に描いた映画『これからの私たち - All Shall Be Well』
- おじさん好きなゲイにはとても気になるであろう映画『ベ・ラ・ミ 気になるあなた』
- 韓国から届いた、ひたひたと感動が押し寄せる名作ゲイ映画『あの時、愛を伝えられなかった僕の、3つの“もしも”の世界。』
- 心ふるえる凄まじい傑作! 史実に基づいたクィア映画『ブルーボーイ事件』
- 当事者の真実の物語とアライによる丁寧な解説が心に沁み込むような本:「トランスジェンダー、クィア、アライ、仲間たちの声」
- ぜひ観てください:『ザ・ノンフィクション』30周年特別企画『キャンディさんの人生』最期の日々
- こういう人がいたということをみんなに話したくなる映画『ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男』
- アート展レポート:NUDE 礼賛ーおとこのからだ IN Praise of Nudity - Male Bodies Ⅱ
- 『FEEL YOUNG』で新連載がスタートしたクィアの学生を主人公とした作品『道端葉のいる世界』がとてもよいです
- クィアでメランコリックなスリラー映画『テレビの中に入りたい』
- それはいつかの僕らだったかもしれない――全力で応援し、抱きしめたくなる短編映画『サラバ、さらんへ、サラバ』
- 愛と知恵と勇気があればドラゴンとも共生できる――ゲイが作った名作映画『ヒックとドラゴン』
- アート展レポート:TORAJIRO 個展「NO DEAD END」
- ジャン=ポール・ゴルチエの自伝的ミュージカル『ファッションフリークショー』プレミア公演レポート
- 転落死から10年、あの痛ましい事件を風化させず、悲劇を繰り返さないために――との願いで編まれた本『一橋大学アウティング事件がつむいだ変化と希望 一〇年の軌跡」
- とんでもなくクィアで痛快でマッチョでハードなロマンス・スリラー映画『愛はステロイド』
- 日本で子育てをしていたり、子どもを授かりたいと望む4組の同性カップルのリアリティを映し出した感動のドキュメンタリー映画『ふたりのまま』
- 手に汗握る迫真のドキュメンタリー『ジャシー・スモレットの不可解な真実』
- 休日課長さんがゲイ役をつとめたドラマ『FOGDOG』第4話「泣きっ面に熊」
- 長年のパートナーががんを患っていることがわかり…涙なしに観ることができない、実話に基づくゲイのラブコメ映画『スポイラー・アラート 君と過ごした13年と最後の11か月』







