REVIEW
アート展レポート:藤元敬二写真展「equals zero」
藤元敬二さんの個展「equals zero」が「BUoY 北千住」で開催中です。荒川の流れと、その川沿いで青姦する男たちの姿を対比的に描いた写真と絵の展示です。レポートをお届けします

藤元敬二さんは(2000年代に『バディ』誌でも紹介されていたと記憶していますが)オープンリー・ゲイのアーティストで、アメリカ、アジア、アフリカなどの様々な国々で生活をしながら現地に暮らす人々に焦点を当てたフォトストーリーの制作をしていた方で、写真だけでは表現しきれないご自身の気持ちを絵画としても表現している方です。現在は東京を流れる荒川を舞台として、川の流れの静けさと人間の騒がしさを比較的に同居させ、夜に川辺で青姦をする男たちの姿を納めた写真集を製作しています。
今回の写真展「equals zero」は、「奥秩父から東京湾へと流れる荒川の流れを、川沿いで青姦をする男たちの姿と重ね合わせることで、自然の本性と人間の本性を対比したプロジェクト」です。
「初めて訪れた荒川源流の水は清く、無垢で激しい流れに生まれたての赤ん坊の姿を思い出した。
水は山から街へくだり、生活排水や工場排水により徐々に汚染されていく。人が成長と共に心や体に様々な“汚れ”を溜めていく様に。
水が濁った下流の川辺には家族づれや釣り人、ホームレスなど、様々な人達が各々の人生の中流にいた。陽が暮れて彼らが去ると、ゲイの男たちが出会いを求めて川辺を訪れた。彼らは月明かりの下で夜に跳ねる魚となり、静かに闇に溶けていった。僕は川辺に立ち、ただ流れていく水を、その横で快楽と孤独に揺れる男たちの姿を見つめ続けた。
川は流れる。人も流れる。時間も流れる。 そんな流れの集合体の中で、僕たちの存在はゼロに等しい。そう感じながら。」(公式サイトより)
今にも雨が降り出しそうな曇天の下、北千住の住宅街の中を歩き、「BUoY(ブイ)」というギャラリーに辿り着きました。2階が元ボウリング場、地下は元銭湯という歴史を持つ廃墟を改装し、2017年にオープンしたアートセンター&カフェです。
この日はカフェは開いてなくて、とても静かだったのですが、展示会場には荒川のせせらぎの音が流れ、左手の壁に写真がプロジェクションされていて、右手から奥のほうにかけて、写真や絵などが展示されていました。深夜の誰もいない川沿いの草むらで体を求め合い、性を交歓する男たちの姿を捉えたモノクロの写真たちは、びっくりするほど生々しく、エロティックでした(こういう野外でのハッテンをここまでリアルに捉えた写真って初めて見たかも…凄いです)。同時に、藤元さんが「快楽と孤独に揺れる男たち」と書いているように、人々が寝静まった頃、暗闇に紛れて孤独を慰め合う男たちの姿は、どこか寂しげで儚くも見えました。(なお、女装した方やそういう方が好きな男たちとのまぐわいや、異性カップルの写真もあるのがいいな、と思いました)

川は、太古の昔から変わることなく大地を潤し、何も言わず、何も考えず、海へと向かって流れています。一方、人間が生み出した文明社会は、川を利用しつつ汚し、釣りをしたり、川べりでロマンチックなデート(やハッテン)をしたりしています。川という悠久の「自然」と、人間社会という「人工」とが対比されているようです(藤元さんは「無意識」と「意識」の対比、とおっしゃっていました)
左半分が川べりの草むらに横たわった男性の裸の上半身で、右半分が川に浮かぶ魚で、まるで人魚のように見える写真が素敵だな、と思いました。
西日本のとある島で生まれ育った友人が、島の中に夜な夜な男たちが集まってハッテンしている草むらがある、島の人たちもそれは知っているけど誰もとやかく言わない、という話を聞いたことがあります。おそらく男たちは太古の昔から連綿と、川べりで、山や森や野原で、お互いを求め合い、交わり続けてきたし、もともとがそういうものだと思うんです。しかし現代では、人間社会が作った「法」や「道徳」によって、川べりや、山や森での性の営みも次第に難しくなっています。もちろん原始の、手つかずの自然状態に帰ることはできませんが、でも、もともとは大自然の中で欲望の赴くままにサカりあっていたのだということを思い出すことはできるし、そこに立ち返ってみることで気づかされることもあるのではないかと思いました。




いっしょに展示されている絵は、写真だけでは表しきれないものを描いているんだそうです。窓辺にお花が飾られているのも、川と同様、「自然」や「無意識」を象徴しているようでした。
藤元さんは会期中、ずっと在廊しているそうですので、ぜひ写真を見ながらお話してください。


これら展示されている作品だけでなく、もっと多くの写真が収められた分厚い手製写真集"equals zero"も販売されています(現代写真を牽引するプラットフォームとして知られる「ダミーブックアワード」のショートリストに選ばれたそうです)。お手に取って見ることもできますので、ぜひご覧ください(写真集の詳細はこちら)
藤元敬二写真展「equals zero」
会場:BUoY 北千住(東京都足立区千住仲町49-11 「北千住」駅西口より徒歩8分)
会期:2025年4月26日(土)〜5月11日(日)
開館時間:13:00-19:00(最終日は17:00まで)
水曜定休
入場無料
オープニングトーク:2025年4月26日(土)19:00-
アーティストトーク:2025年5月3日(土)19:00-
INDEX
- トランスジェンダーへの偏見や差別に立ち向かうために読んでおきたい本:『トランスジェンダー問題: 議論は正義のために』
- 『痛快!明石家電視台』ドラァグクイーン大集合SP
- 殺伐とした世界に心を痛めるすべての人に観てほしいドラマ『THE LAST OF US』第3話
- 3人のドラァグクイーンのひと夏の旅を描いたハートフル・コメディ映画『ひみつのなっちゃん。』
- 40歳のゲイの方が養護施設で育った複雑な生い立ちの20歳の男の子を養子に迎え入れ、新しい家族としての生活を始める姿をとらえたドキュメンタリー映画『二十歳の息子』
- 貧しい家庭で妹の面倒を見る10歳のゲイの男の子が新しい世界を切り開こうともがき、成長していく様を描いた映画『揺れるとき』
- ゲイコミュニティへのリスペクトにあふれ、あらゆる意味で素晴らしい、驚異的な名作『エゴイスト』
- ドラァグクイーンの夢のようなロマンスを描いたフランス発の短編映画『パロマ』
- 文藝賞受賞、芥川賞候補の注目作――ブラックミックスのゲイたちによる復讐を描いた小説『ジャクソンひとり』
- ドラァグクイーンによる朗読劇『QUEEN's HOUSE〜あなたの知らないもうひとつの話〜TOKYO』
- 伝説のゲイ・アーティストの大回顧展『アンディ・ウォーホル・キョウト』
- 謎めいたゲイ・アーティストの素顔に迫るドキュメンタリー映画『アンディ・ウォーホル:アートのある生活』
- 『ボヘミアン・ラプソディ』の感動再び… 映画『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』
- 近年稀に見る号泣必至の名作ゲイ映画『世界は僕らに気づかない』
- ぼくらはシンコイに恋をする――『シンバシコイ物語』
- ゲイカップルやたくさんのセクシャルマイノリティの姿をリアルに描いた優しさあふれる群像劇『portrait(s)』ほか
- TheStagPartyShow movies『美しい人』『キミノコエ』
- Visual AIDS短編集『Being & Belonging』
- これ以上ないくらいヘビーな経験をしてきたゲイの方が身近な人たちにカミングアウトする姿を追ったドキュメンタリー映画『カミングアウト・ジャーニー』
- 料理を通じて惹かれ合っていく二人の女性を描いたドラマ『作りたい女と食べたい女』
SCHEDULE
- 04.24新宿2丁目系自作自演的りんごないと其の二十六
- 04.25TWICE NIGHT VOL.7
- 04.25FOLKLORE -ONEHA- ナツメロソング
- 04.25ノーパンスウェットナイトIN大阪24
- 04.26M☆night2026〜Warmwake〜 聖子の園







