REVIEW
アート展レポート:『Home Pleasure|居家娛樂』 MANBO KEY SOLO EXHIBITION
台湾のクィア・アーティスト登曼波(マンボウ・キー)の個展が渋谷PARCO MUSEUM TOKYOで開催中です。素敵なパーティの模様とともにレポートいたします

ちょうど1年前に『父親的錄影帶|Father’s Videotapes』という個展を開催した台湾のクィア・アーティスト登曼波(マンボウ・キー)。1994年のある運命的な日、マンボウが父親の“禁断の”コレクションである自撮りのセックステープを発見し…不安と戸惑い、そして好奇心に占領された10代を経験し、自身のアイデンティティを探求することで結実した作品は、台北美術賞でグランプリを受賞しています。数々のゲイ的なセクシー写真と、お父様の写真と併せて展示されていたセックステープは、アジアのいろんな国々で入国を禁止されるという検閲に遭ってきたそうで、それ自体がリアルな事件性を帯びた作品なのでした。
日本での初めての大規模個展となる今回の個展『Home Pleasure|居家娛樂』は、その《Father’s Videotapes》シリーズの延長である《Father’s Video Tape_Avoid A Void》(台新芸術賞を受賞)からの未発表作品や、日本未公開作品を中心に構成されます。プレスリリースによると、「2022年に開催された個展『HomePleasure』では、家族関係、トランスジェンダーのイシュー、ならびに社会的周縁性といった主題にまで関心を広げ、台湾におけるクィア・カルチャーとの関わりをいっそう深化させた。同年、アートとパーティカルチャーの交差を探究すべく、HomoPleasure Collectiveを共同設立するに至る」とのことです。本展ではまた、ファッションフォトグラファーとして『Vogue Taiwan』や『Marie Claire』などで撮り下ろしてきた作品や、本展のために新たに撮り下ろした作品も初出展されているそうで、その中にはオードリー・タン、與真司郎さん、Usakさんらのポートレートも含まれているそう。
なお、この個展はPARCO 「PRIDE2025」のメインイベントして開催され、入場無料となっています。6日(金)には「HOME PLEASURE」と題したスペシャルなパーティも開催されました。
マンボウ・キー個展『Home Pleasure|居家娛樂』
渋谷PARCO 4Fの「PARCO MUSEUM TOKYO」で開催されているマンボウ・キー個展『Home Pleasure|居家娛樂』の模様をお伝えします。
入ってすぐのスペースは、お父様の写真をメインとした家族にまつわる写真(「桃太郎さん」の歌詞をタトゥで入れていた祖母の写真などもありました)、マンボウ・キーのセルフヌード写真、そしてくだんの自撮りセックステープなどもガラスケースで展示されていました(中の映像は見れませんでした。でも無事に税関を通れてよかったですね)
左手の奥のほうのスペースでは、ガラリと変わって、ピンクなライティングが印象的な男の子どうしのセクシーな写真、Usakさんの写真、與真司郎さんの写真(および撮影風景を収めた映像)、そして台湾のIT大臣オードリー・タンの写真、ドラァグクイーン(ニンフィア・ウィンドとか)の写真などが展示されていました。左手奥のスペースは、そういう著名人のポートレートやファッションフォト的な写真が多かったです。昨年の個展では、ものすごく大きな作品や、インパクトの強い作品が多数あったと思いますが、今回はより洗練された、ポピュラリティを獲得しそうな写真が目立っていたように感じます。
黒い幕で仕切られた部屋には、10分ほどの映像が流れていました。お父様、そして、結婚はしていない(断ったんだそうです)お母様へのインタビューの映像と、台北のパレードの映像やトランスマーチの映像、ゲイクラブ(たぶんベア系パーティ)の映像などが組み合わされた作品で、お母様に「父さんの自撮りのテープの存在を知っていた?」「父さんが男ともセックスしてたの知ってた?」と聞いたり、お父様に「父さんはバイセクシュアルなの?」「同性婚が認められたの知ってる?」などと尋ねています。淡々としていますが、父親が(事実上)バイセクシュアルであり、自身もゲイであるマンボウが、セクシュアリティに関することの核心に迫るようなことを追及する、目が離せない映像作品でした。
ちょっとPARCOっぽくて面白いと思ったのは、ピンクなライティングのセクシー写真がプリントされたTシャツなどとともに、お父様の姿を写した写真がグッズ(マグネット)として売られていたことです。それから、今度正式にリリースされる写真集が先行販売されていて、中も見れるようになっているので、ぜひお手に取ってご覧ください(またあらためてレビューをお届けする予定です)。お帰りの際にはみなさん、缶バッジをもらって帰ることができます。代々木公園からの帰りにぜひ、お立ち寄りください。
『Home Pleasure|居家娛樂』 MANBO KEY SOLO EXHIBITION
会期:5月30日(金)〜6月9日(月)
※営業日時は変更となる場合がございます。渋谷PARCOの営業日をご確認ください
会場:PARCO MUSEUM TOKYO(渋谷PARCO 4F) 東京都渋谷区宇田川町15-1
開場時間:11:00-21:00 ※入場は閉場の30分前まで ※最終日18時閉場
入場無料
主催:PARCO
企画:エイベックス・クリエイター・エージェンシー株式会社/合同会社YOUR STORY
後援:台北駐日経済文化代表処台湾文化センター
スペシャル・パーティ「HOME PLEASURE」
同じPARCOの10FにあるPBOXというスペースで6日夜、Tokyo Prideウィークエンドをセレブレイトするスペシャルパーティ「HOME PLEASURE」が開催されました。マンボウ・キーはこれまでさまざまなアート融合型パーティーを積極的に主催してきたんだそう。
会場は、以前『道をつくる』というイベントが開催されたGAKUというスペースの上の階で、外にお庭も見えるような素敵空間でした(ルーフトップっぽい感じでした)。ちゃんとお酒も提供されていて、渋谷の金曜の夜って感じで、いろんなオシャレピープルが詰めかけていました。
loneliness books(platform3)の潟見陽さんや、午前0時のプリンセス、アキラ・ザ・ハスラーといったクィアなゲストが登壇し、マンボウさんと語り合うトークショーが3本あり、DJ DSKEさんによるダンスタイムがあり、そしてNIPPON BALLROOM SQUAD(ラビアナさんやKAGUYAさんなども出演)によるBALL ROOMカルチャーを再現したショータイムで盛り上がりました。
まさかPARCOの中でこんなパーティが行なわれるとは…ハッピープライド!って感じです。マンボウさんに感謝です。
INDEX
- 悩めるマイノリティの救済こそが宗教の本義だと思い出させてくれる名作映画『教皇選挙』
- こんな映画観たことない!エブエブ以来の新鮮な映画体験をもたらすクィア映画『エミリア・ペレス』
- アート展レポート:大塚隆史個展「柔らかい天使たち」
- ベトナムから届いたなかなかに稀有なクィア映画『その花は夜に咲く』
- また一つ、永遠に愛されるミュージカル映画の傑作が誕生しました…『ウィキッド ふたりの魔女』
- ようやく観れます!最高に笑えて泣けるゲイのラブコメ映画『ブラザーズ・ラブ』
- 号泣必至!全人類が観るべき映画『野生の島のロズ』
- トランス女性の生きづらさを描いているにもかかわらず、幸せで優しい気持ちになれる素晴らしいドキュメンタリー映画『ウィル&ハーパー』
- 「すべての愛は気色悪い」下ネタ満載の抱腹絶倒ゲイ映画『ディックス!! ザ・ミュージカル』
- 『ボーイフレンド』のダイ(中井大)さんが出演した『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』第2話
- 安堂ホセさんの芥川賞受賞作品『DTOPIA』
- これまでにないクオリティの王道ゲイドラマ『あのときの僕らはまだ。』
- まるでゲイカップルのようだと評判と感動を呼んでいる映画『ロボット・ドリームズ』
- 多様な人たちが助け合って暮らす団地を描き、世の中捨てたもんじゃないと思えるほのぼのドラマ『団地のふたり』
- 夜の街に生きる女性たちへの讃歌であり、しっかりクィア映画でもある短編映画『Colors Under the Streetlights』
- シンディ・ローパーがなぜあんなに熱心にゲイを支援してきたかということがよくわかる胸熱ドキュメンタリー映画『シンディ・ローパー:レット・ザ・カナリア・シング』
- 映画上映会レポート:【赤色で思い出す…】Day With(out) Art 2024
- 心からの感謝を込めて――【スピンオフ】シンバシコイ物語 –少しだけその先へ−
- 劇団フライングステージ第50回公演『贋作・十二夜』@座・高円寺
- トランス男性を主演に迎え、当事者の日常や親子関係をリアルに描いた画期的な映画『息子と呼ぶ日まで』