REVIEW
アート展レポート:東京都写真美術館「総合開館30周年記念 遠い窓へ 日本の新進作家 vol.22」
東京都写真美術館「総合開館30周年記念 遠い窓へ 日本の新進作家 vol.22」に展示されている寺田健人さんというクィアの写真家の作品をご紹介します

かつて「ラヴズ・ボディ 生と性を巡る表現」いう素晴らしい展覧会が開催された東京都写真美術館。今回の「総合開館30周年記念 遠い窓へ 日本の新進作家 vol.22」は、同館が「写真・映像の可能性に挑戦する創造的精神を支援し、将来性のある作家を発掘するとともに、新たな創造活動を紹介することを目的として」2002年から継続的に開催している「日本の新進作家」展シリーズの第22回なのですが、選ばれた5名の新進作家のうちの1名が寺田健人さんというクィアの写真家でしたので、寺田さんの作品を観に行きました。
今回展示されている《想像上の妻と娘にケーキを買って帰る》という作品は、公園が舞台で、娘の靴などもあるけれども、写っている人物は寺田さん一人だけという写真で、「生まれ持った性によって決定され内面化される性的規範や社会規範、セクシュアリティ、男性性、そこから排除されるクィア的な性/生のありようなどが多重化された批評的な作品」です(TOKYO ART BEATより)。「社会の枠組みやジェンダーへの問い。小道具としての子供服や玩具には、女の子として生きてみたかったという思いも含まれている」そうで、この作品は「「ステイホーム」「家族との時間」が推奨されたコロナ禍に、社会から置いてきぼりになりそうという不安から、LGBTQ+というアイデンティティーと向き合うように制作を始めた」のだそうです(ぴあ「【展示レポート】『遠い窓へ 日本の新進作家 vol.22』5名のアーティストがつむぐ物語に思いを寄せる」より)
恵比寿駅からスカイウォーク(動く歩道)を通ってガーデンプレイスに着き、右手のいちばん奥に東京都写真美術館があります。企画展は2つありますが、3階の「遠い窓へ」のほうのチケットを買います(カードなども使えます)
会場に入ってすぐの部屋に「あこがれの日曜日」と題された寺田さんの作品が展示されていました。
ありえたかもしれないパパとしての役割を一人芝居で演じる《想像上の妻と娘にケーキを買って帰る》シリーズは、ともすると異性愛規範をなぞっているのではないか的な批判を受けそうな作品ですが、女の子のおもちゃやかわいらしい靴などを添え物ではなくメインの展示物にしている辺りに「女の子として生きてみたかったという思い」が如実に表れていますし、寺田さんがどことなくノンケのパパになりきれてない(海辺の写真なんてふつうにゲイっぽかったです)、ぎこちなさやフェイク感がそのまま写真に表れているところがよかったです。





《trace his scent》というシリーズの作品も展示されていました。窓辺のキューピー人形だったり、寺田さんの視線の先にある(そこにもリアルな恋人や家族は写ってなくて、しかし、そういう存在を想像させる)風景です。その一つ、「Melting Ice Cream, Falling Tears」という写真が印象的でした。足元に落ちて、すっかり溶けてしまったアイス…それはデートの最中に相手とケンカをして別れ話に…的な物語を想起させる写真です。なにげに写っているスニーカーがNew Balanceであるところにゲイテイストも感じさせます。
なお、寺田さんのインタビュー映像がこちらに上がっていますので、ぜひご覧ください。
他の4名の作家さんも、写真をパネルにして展示する通常の展示方法じゃない、展示方法自体が変わってる作家さんだったりもして面白かったです。映像のようにじっくり座って鑑賞するような作品もあるので、ぜひごゆっくりお楽しみください。
東京都写真美術館総合開館30周年記念 遠い窓へ 日本の新進作家 vol.22
出品作家:寺田健人、スクリプカリウ落合安奈、甫木元空、岡ともみ、呉夏枝
会期:9月30日(火)~2026年1月7日(水)
会場:東京都写真美術館 3F展示室
開館時間:10:00-18:00(木金は20:00まで)
休館日:毎週月曜(月曜が祝休日の場合は開館し、翌平日休館)、年末年始(12月29日~1月1日)※1月2日(金)は10:00-18:00開館
観覧料:一般700円、学生560円、65歳以上350円 ※中学生以下および障害者手帳をお持ちの方とその介護者(2名まで)は無料。TOPMUSEUM PASSPORT 2025提示者は割引または無料(回数上限あり)。第3水曜日は65歳以上無料。1月2日(金)、3日(土)は無料。 ※学生、高校生・65歳以上の方、各種お手帳をお持ちの方は、いずれも証明できるものをご提示ください。 ※各種割引の詳細はご利用案内をご参照ください。 ※各種割引の併用はできません。
INDEX
- 性の多様性について子どもから大人まで理解し共感できる決定版的な良書『多様な性を生きる LGBTQ+として生きる先輩たちに人生のヒントを聞いてみた』
- ミニマムなのにとんでもなくスリリングでクィアな会話劇映画『アバウトアス・バット・ノット・アバウトアス』
- 異国情緒あふれる街で人と人とが心通わせる様にしみじみと感動させられる名作映画『CROSSING 心の交差点』
- ワム!のマネージャーだったゲイの方が監督した真実のドキュメンタリー『ジョージ・マイケル 栄光の輝きと心の闇』
- アート展レポート:ネルソン・ホー「鏡中花、水中月 - A Mere Reflection of Flower and Moon」
- レポート:グループ展 “Pink”@オオタファインアーツ
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- 実は『ハッシュ!』はゲイカップルに育てられた子どもの物語として構想されていた…25年目の真実が明かされた橋口監督×田辺誠一さんによる映画『ハッシュ!』スペシャルトークイベント
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- レビュー:BSSTO「世界の・周りの・私のジェンダー」を見つめるショートフィルム特集
- たとえ社会の理解が進んでも法制度が守ってくれなかったらこんな悲劇に見舞われる…私たちが直面する現実をリアルに丁寧に描いた映画『これからの私たち - All Shall Be Well』
- おじさん好きなゲイにはとても気になるであろう映画『ベ・ラ・ミ 気になるあなた』
- 韓国から届いた、ひたひたと感動が押し寄せる名作ゲイ映画『あの時、愛を伝えられなかった僕の、3つの“もしも”の世界。』
- 心ふるえる凄まじい傑作! 史実に基づいたクィア映画『ブルーボーイ事件』
- 当事者の真実の物語とアライによる丁寧な解説が心に沁み込むような本:「トランスジェンダー、クィア、アライ、仲間たちの声」
- ぜひ観てください:『ザ・ノンフィクション』30周年特別企画『キャンディさんの人生』最期の日々
- こういう人がいたということをみんなに話したくなる映画『ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男』
- アート展レポート:NUDE 礼賛ーおとこのからだ IN Praise of Nudity - Male Bodies Ⅱ
- 『FEEL YOUNG』で新連載がスタートしたクィアの学生を主人公とした作品『道端葉のいる世界』がとてもよいです
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