REVIEW
アート展レポート:西村宏堂展「Cells - 細胞 -」
8⽉5⽇(⽔)〜11⽇(⽕祝)、伊勢丹新宿店 本館6階 催物場で西村宏堂さん初の個展が開催されています。驚くほど広い会場にたくさんの素敵な作品が展示されています。宏堂さんの言葉を読みながら、そうした作品を観ていくと、きっと癒しや「希望」を感じられることと思います

僧侶・メイクアップアーティストとして活躍する西村宏堂さんが、現代美術家として初の個展「Cells - 細胞 -」を開催しています。宏堂さんが一貫して伝え続けてきた「私たちは本来つながっている存在である」というメッセージが込められています。
レポートをお届けします。
会場は、驚くほど広い場所で、ちょっとびっくりするくらいたくさんの作品が展示されていました。いくつかのセクションに分かれていて、例えば、蓮の花のセクションでは、「極楽浄土に咲く蓮の花は、それぞれの色で輝く、多様性の象徴といわれています。お経の中に『青色青光、黄色黄光、赤色赤光、白色白光(しょうしきしょうこう おうしきおうこう しゃくしきしゃっこう びゃくしきびゃっこう)』という言葉があります。私たちもまた、自分の色で輝くべきだと仏教は伝えています。そのことを知り、大きな希望を感じました」といった言葉が掲示されていて、そういう言葉を読みながら絵を見ていくと、えもいわれぬ癒しや希望が感じられます。よく見ると、その作品には、ドラァグクイーンがよく使うラインストーンが散りばめられたりしています。

パズルのピースのセクションは、まさに多様性の表現です。レインボーカラーだけじゃなく、もっともっとたくさんの色が使われています。 

ほとんどすべての作品に共通しているのは、細胞(Cells)のモチーフです。「この社会で人は「自分だけよければいい」という生き方はできないのです。私たちの体は、無数の細胞でできています。一つひとつはとても小さな存在ですが、互いに関わり合い、形を変えながら、つながっています」「仏教には「同体大悲(どうたいだいひ)」という言葉があります。私たちは別々のように見えても、本来つながっている。相手の苦悩を「自分のこと」として感じることが大切です」という思いが込められています。そのことを語る動画も展示されています。




美大でファインアートを学んだという宏堂さんの作品は、一見シンプルに見えても、構図や筆致の確かさを感じさせ、しっかりした美しさを感じさせました。これからは「僧侶・メイクアップアーティスト」だけでなく「アーティスト」という肩書きも加わるのだな、と思いました。
5日はレセプションパーティも開催され、宏堂さんが来場したみなさんにご挨拶する場面もあったのですが、以前、日本のとあるお寺の奥さんに、同性愛者は“ホルモンの異常”によって“なる”ものだと言われ、ひどく憤りを覚え、ずっと許せずにいた、しかし、時間が経って、その方も女性としての生きづらさを抱えていることを知って考え直すようになった、浄土宗の宗歌である「月かげの いたらぬ里は なけれども ながむる人の 心にぞすむ」という法然上人の歌に詠まれた心、僧侶の役割は「みんなが平等に救われる」と伝えることだと思い、同性愛者に生まれた自分だからこそできることがあるはずだと思うようになった、といったお話をされていて、とても心に沁みました(泣いてる方もいました)。初めてお会いしたときから変わっていませんが、宏堂さんは常に自分が体験し、感じたことからお話を始める方で、その嘘いつわりのない真摯な語りに自然と聴衆が引き込まれていき、やがて、宏堂さんが放つ愛のオーラで会場が包み込まれるような感じがします。
私が感じたのは、このように聴衆を惹きつけ、癒し、涙させる宏堂さんは、もしかしたら、今は亡き美輪様の後継者となる方なのではないか、ということでした。というか、そういう存在になっていただきたいと思いました。
個展は11日まで開催されています。伊勢丹本館の6階です。二丁目に行くついでにでもぜひ、立ち寄ってみてください。
西村宏堂展「Cells - 細胞 -」
会期:2026年8⽉5⽇(⽔)〜11⽇(⽕祝)
会場: 伊勢丹新宿店 本館6階 催物場
開館時間:10:00-20:00 ※5⽇は16:00終了、最終⽇は18:00終了
⼊場無料
★公式サイトに綴られている西村さんのアートをめぐる旅の物語をぜひ読んでみてください。思わず引き込まれると思います。
INDEX
- 結婚もできない、子どももできないなかで、それでも愛を貫こうとする二人の姿を描いたクィアムービー『フタリノセカイ』
- 家族のあたたかさのおかげで過去に引き裂かれた二人が国境を越えて再会し、再生する様を描いた叙情的な作品――映画『ユンヒへ』
- 70年代のゲイクラブ放火事件に基づき、イマの若いゲイと過去のゲイたちとの愛や友情を描いた名作ミュージカル『The View Upstairs-君が見た、あの日-』
- 何食べにオマージュを捧げつつ、よりゲイのリアルを追求した素敵な漫画『ふたりでおかしな休日を』
- ゲイの青年がベトナムに帰郷し、多様な人々と出会いながら自身のルーツを探るロードムービー『MONSOON モンスーン』
- アウティングのすべてがわかる本『あいつゲイだって ――アウティングはなぜ問題なのか?』
- ホモソーシャルとホモセクシュアル、同性愛嫌悪、女性嫌悪が複雑に絡み合った衝撃的な映画『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
- 世紀の傑作『RENT』を生んだジョナサン・ラーソンへの愛と喝采――映画『tick, tick… BOOM!:チック、チック…ブーン!』
- 空を虹色に塗ろう――トランスジェンダーの監督が世界に贈ったメッセージとは? 映画『マトリックス レザレクションズ』
- 人種や性の多様性への配慮が際立つSATC続編『AND JUST LIKE THAT... セックス・アンド・ザ・シティ新章』
- M検のエロティシズムや切ない男の恋心を描いたヒューマニズムあふれる傑作短編映画『帰り道』
- 『グリーンブック』でゲイを守る用心棒を演じたヴィゴ・モーテンセンが、自らゲイの役を演じた映画『フォーリング 50年間の想い出』
- ショーや遊興の旅一座として暮らすクィアの生き様を描ききったベトナム映画『フウン姉さんの最後の旅路』
- 鬼才ライナー・ベルナー・ファスビンダー監督の愛と性をリアルに描いた映画『異端児ファスビンダー』
- ぜひ映画館で「歴史」を目撃してください――マーベル映画初のゲイのスーパーヒーローが登場する『エターナルズ』
- 等身大のゲイの恋愛を魅力的なキャストで描いたラブリーな映画『クロスローズ』
- リアルなゲイたちの愛や喜び、苦悩、希望、PRIDEに寄り添う、心揺さぶる舞台『すこたん!』
- 愛と笑顔のハッピームービー『沖縄カミングアウト物語〜かつきママのハグ×2珍道中!〜』
- ムーミンの作者、トーベ・ヤンソンの同性愛をありのままに描いた映画『TOVE/トーベ』
- 伝説のデザイナーのゲイライフに光を当てたドラマ『HALSTON/ホルストン』
SCHEDULE
記事はありません。






