REVIEW
日本のゲイ・エロティック・アート展
『日本のゲイ・エロティック・アート』シリーズの完結を記念して開催されているこの展覧会は、日本を代表するゲイ・エロティック・アーティストの作品が一堂に会する、またとない機会になっています。ぜひご覧ください。
『日本のゲイ・エロティック・アート』(ポット出版)は、日本が生んだ優れたゲイ・エロティック・アートの数々を発掘、再評価した画集で、2003年にVol1、2006年にVol2、そして2018年に完結版としてVol3が刊行されました。
その完結版発売を記念して、この3冊の本に収録され、紹介された作家を中心に、この本を編集した田亀源五郎氏の作品も交え、ゲイ雑誌創世記の作家から現代の作家まで貴重な作品群を展示する「日本のゲイ・エロティック・アート展」が東京銀座・ヴァニラ画廊で開催されています。全3巻で紹介された作家の作品が一堂に会する、おそらく最初で最後の機会となります。
ヴァニラ画廊は、住所的には銀座なのですが、JRで行かれる方は、有楽町よりも新橋から行ったほうが近いかもしれない場所にあります。ちょっと古いビルで、看板はちゃんと出ていますが、地下2階まで階段で降りていく感じで、狭い部屋2部屋で展示されており、なかなかのアンダーグラウンド感です。
なお、この展覧会は、ギャラリーにしては珍しく、有料で事前予約が必須です(たぶん未成年の方が入らないようにという意味だと思います)。ただ、事前にチケットを買っていなかった方も、階段の踊り場にQRコードが貼ってあって、そこからスマホでチケット販売サイトにアクセスできるので、大丈夫です。
いざ、展示室に入り、圧倒的な、名だたる作家さんの作品を、ゆっくり観ていきます。全体を通して感じたのは、もう、心の奥底から描かずにいられない、やむにやまれぬ切実な欲望がほとばしり、ファンタジーが炸裂している、ということでした。雑誌社に作品を送ってくるだけで、詳しい素性がわからないような方も多かったようです。そういう方が実はプロの画家で、見事としか言いようのない画面構成だったり筆致だったりして、思わずうなってしまったり。
田亀さんの作品はもちろん(田亀さんの作品の中でもあまり観たことのないような系統の作品です)、『さぶ』の表紙だった三島剛さんの作品群、青春時代に買っていた『アドン』で活躍していた武内条二さんの作品群などは、若い頃に本当にファンだったので、感涙モノでしたし、有名な長谷川サダオさんや木村べんさんの作品もけっこう有名な作品が展示されてましたし、稲垣征次さんの作品などもたいへん芸術的で(最新の、男の子が手にスマホを持ってるような作品などは、新鮮!と思いました)、充実していました。
個人的に今回とても印象深かった作品は、高蔵大介さんの、でっぷり太った親爺さんに、丸坊主の少年たちが大勢(まるで虫か何かのように)たかっている絵、そして、林月光さんの、褌の年長者と美青年が海の中で今まさに抱き合わんとしていて、そこに「朱に交われば…」というタイトルが書かれている作品などでした(月光さんの絵は本当に素晴らしいです、表情とか)
展示の様子は撮影NGなので、お見せすることができません。ぜひギャラリーで実物をご覧いただければと思います(『日本のゲイ・エロティック・アート』全3巻を買ってくだされば、どんな作品かは一覧できますが、やはり、絵というのは、実物を見たいですよね。質感とか、オーラみたいなものが、感じられるはずです)
日本のゲイ・エロティック・アート展
日程:3月17日まで
営業時間:平日12:00〜19:00、土日祝:12:00〜17:00
会場:東京銀座・ヴァニラ画廊
入場料:1,000円(展示室AB共通)
※会期中無休
出展作家:稲垣征次、大川辰次、小田利美、木村べん、児夢、髙蔵大介、田亀源五郎、天道寺慎、武内条二、遠山実、長谷川サダオ、林月光、平野剛、船山三四、三島剛
展示協力:伊藤文學、STUDIOKAIZ 城平海、日暮孝夫
INDEX
- 女性と同性愛者を抑圧し、ペストで死ぬ人々を見殺しにする腐敗した権力者への叛逆を描いた映画『ベネデッタ』
- トランスジェンダーへの偏見や差別に立ち向かうために読んでおきたい本:『トランスジェンダー問題: 議論は正義のために』
- 『痛快!明石家電視台』ドラァグクイーン大集合SP
- 殺伐とした世界に心を痛めるすべての人に観てほしいドラマ『THE LAST OF US』第3話
- 3人のドラァグクイーンのひと夏の旅を描いたハートフル・コメディ映画『ひみつのなっちゃん。』
- 40歳のゲイの方が養護施設で育った複雑な生い立ちの20歳の男の子を養子に迎え入れ、新しい家族としての生活を始める姿をとらえたドキュメンタリー映画『二十歳の息子』
- 貧しい家庭で妹の面倒を見る10歳のゲイの男の子が新しい世界を切り開こうともがき、成長していく様を描いた映画『揺れるとき』
- ゲイコミュニティへのリスペクトにあふれ、あらゆる意味で素晴らしい、驚異的な名作『エゴイスト』
- ドラァグクイーンの夢のようなロマンスを描いたフランス発の短編映画『パロマ』
- 文藝賞受賞、芥川賞候補の注目作――ブラックミックスのゲイたちによる復讐を描いた小説『ジャクソンひとり』
- ドラァグクイーンによる朗読劇『QUEEN's HOUSE〜あなたの知らないもうひとつの話〜TOKYO』
- 伝説のゲイ・アーティストの大回顧展『アンディ・ウォーホル・キョウト』
- 謎めいたゲイ・アーティストの素顔に迫るドキュメンタリー映画『アンディ・ウォーホル:アートのある生活』
- 『ボヘミアン・ラプソディ』の感動再び… 映画『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』
- 近年稀に見る号泣必至の名作ゲイ映画『世界は僕らに気づかない』
- ぼくらはシンコイに恋をする――『シンバシコイ物語』
- ゲイカップルやたくさんのセクシャルマイノリティの姿をリアルに描いた優しさあふれる群像劇『portrait(s)』ほか
- TheStagPartyShow movies『美しい人』『キミノコエ』
- Visual AIDS短編集『Being & Belonging』
- これ以上ないくらいヘビーな経験をしてきたゲイの方が身近な人たちにカミングアウトする姿を追ったドキュメンタリー映画『カミングアウト・ジャーニー』