REVIEW
『泥だらけの制服』楽しんご
TVではあんなに明るく振る舞っている楽しんごさんが、『金スマ』で壮絶ないじめ・暴力を経験してきたことを語り、大きな反響が寄せられ、この本へとつながりました。ここで語られている「ゲイであるがゆえに受けがちな理不尽な迫害」は、とても他人事ではない、そして本当にたくさんの人に知ってほしいことです。
この本はしんごさんが中学時代に実際に書いた遺書ではじまります。
中学1年生だったしんごさんは、10人くらいの不良グループに目をつけられ、「お前ホモか」「気持ちわりぃな」と言いがかりをつけられ、ズボンを脱がされ、殴られ、蹴られ…ということが毎日続くようになり、そのうち、髪をライターで燃やされたり、カッターで唇を切られたり(手術で消えたけど、今でも唇の裏側に傷跡が残っているそうです)、ゴミ焼却炉で熱くなった鉄棒を胸に押し付けられたり、どんどんエスカレートしていって、やがてお金を要求され、その金額もふくれあがり、ついに払えなくなったとき、しんごさんは自殺を決意したのです。
幸い自殺は未遂に終わりましたが、壮絶ないじめ・暴力に遭い、しんごさんがどれだけ深く絶望していたか、痛いほど伝わってきます。
いじめていた人たちにとっては誰でもよかったのかもしれませんが、なよなよしててゲイっぽい人が「ホモ」とか「おかま」と言われ、こうしたいじめに遭いやすいことは、しんごさんが身を以て経験し、伝えてくれた通りです。(もちろん、読者の方の中にも多かれ少なかれいじめられた経験を持つ方もいらっしゃることでしょう)
しんごさんはどんなに制服が泥だらけになり、顔が血だらけになっても、決して両親にいじめを受けていることが悟られないようにしていたそうです。汚れた制服は裏返しにして家に入ったり、髪を燃やされたときはお小遣いをはたいて床屋に行って短く切ったり(お母さんは「さっぱりしたわね」と喜んでいたそうです)…仲のいい家族で、家族のことが大好きだったからこそ、心配をかけないようにという思いで。なんとけなげな中学生でしょう。
しかし、女装して外を出歩いていた頃、しんごさんは「なよなよしてんじゃねーよ」とお兄さんにリビングで殴られたことがあるそうです。お母さんも黙ってそれを見ていたとか…。さらりと語られていましたが、とてもせつない話です。
後半は、中学を卒業した楽しんごさんがどのようにゲイとしてはじけ、芸能人への道に歩みはじめたかというシンデレラ(?)ストーリーが綴られ、ワクワクさせられます。
特に女装バーのママに見出され、そのお店で接客の基礎を教えてもらったり、とてもお世話になったという話(定番だけど、いい話)、どんな仕事もお金をもらうためにいやいややるというより「楽しかった」と語っていること、そして、人を癒したい、それが自分の喜びになるという気持ちで整体師の道を志したことなど、地獄を見た人だからこその気持ちや言葉が、心にしみます。
この『泥だらけの制服』には、(オネエだったり女装してたりする)ゲイの人がどのように世間の人たちから嫌悪感を向けられ(たとえ家族であっても)、いじめや暴力にさらされるのかというエピソード、「ゲイであるがゆえに受けがちな理不尽な迫害」の実態が、本当にリアルに綴られています。
本の発売記念握手会で楽しんごさんは、いつものドドスコをやるようなテンションではなく、「自分で読み直して泣いちゃいました」としみじみ語り、学校でのいじめを受けている子どもたちに「同じ境遇の子どもたちに読んでほしい」「ちゃんと“言う”ことが大事だよ!」と呼びかけました。
子どもにも大人気なタレントとなった楽しんごさんの勇気ある告白が、きっと世間の人たちのゲイ(をはじめとするセクシュアルマイノリティ)へのシンパシーとホモフォビア(同性愛嫌悪)の払拭に、大いに貢献してくれていることと思います。
中学1年生だったしんごさんは、10人くらいの不良グループに目をつけられ、「お前ホモか」「気持ちわりぃな」と言いがかりをつけられ、ズボンを脱がされ、殴られ、蹴られ…ということが毎日続くようになり、そのうち、髪をライターで燃やされたり、カッターで唇を切られたり(手術で消えたけど、今でも唇の裏側に傷跡が残っているそうです)、ゴミ焼却炉で熱くなった鉄棒を胸に押し付けられたり、どんどんエスカレートしていって、やがてお金を要求され、その金額もふくれあがり、ついに払えなくなったとき、しんごさんは自殺を決意したのです。
幸い自殺は未遂に終わりましたが、壮絶ないじめ・暴力に遭い、しんごさんがどれだけ深く絶望していたか、痛いほど伝わってきます。
いじめていた人たちにとっては誰でもよかったのかもしれませんが、なよなよしててゲイっぽい人が「ホモ」とか「おかま」と言われ、こうしたいじめに遭いやすいことは、しんごさんが身を以て経験し、伝えてくれた通りです。(もちろん、読者の方の中にも多かれ少なかれいじめられた経験を持つ方もいらっしゃることでしょう)
しんごさんはどんなに制服が泥だらけになり、顔が血だらけになっても、決して両親にいじめを受けていることが悟られないようにしていたそうです。汚れた制服は裏返しにして家に入ったり、髪を燃やされたときはお小遣いをはたいて床屋に行って短く切ったり(お母さんは「さっぱりしたわね」と喜んでいたそうです)…仲のいい家族で、家族のことが大好きだったからこそ、心配をかけないようにという思いで。なんとけなげな中学生でしょう。
しかし、女装して外を出歩いていた頃、しんごさんは「なよなよしてんじゃねーよ」とお兄さんにリビングで殴られたことがあるそうです。お母さんも黙ってそれを見ていたとか…。さらりと語られていましたが、とてもせつない話です。
後半は、中学を卒業した楽しんごさんがどのようにゲイとしてはじけ、芸能人への道に歩みはじめたかというシンデレラ(?)ストーリーが綴られ、ワクワクさせられます。
特に女装バーのママに見出され、そのお店で接客の基礎を教えてもらったり、とてもお世話になったという話(定番だけど、いい話)、どんな仕事もお金をもらうためにいやいややるというより「楽しかった」と語っていること、そして、人を癒したい、それが自分の喜びになるという気持ちで整体師の道を志したことなど、地獄を見た人だからこその気持ちや言葉が、心にしみます。
この『泥だらけの制服』には、(オネエだったり女装してたりする)ゲイの人がどのように世間の人たちから嫌悪感を向けられ(たとえ家族であっても)、いじめや暴力にさらされるのかというエピソード、「ゲイであるがゆえに受けがちな理不尽な迫害」の実態が、本当にリアルに綴られています。
本の発売記念握手会で楽しんごさんは、いつものドドスコをやるようなテンションではなく、「自分で読み直して泣いちゃいました」としみじみ語り、学校でのいじめを受けている子どもたちに「同じ境遇の子どもたちに読んでほしい」「ちゃんと“言う”ことが大事だよ!」と呼びかけました。
子どもにも大人気なタレントとなった楽しんごさんの勇気ある告白が、きっと世間の人たちのゲイ(をはじめとするセクシュアルマイノリティ)へのシンパシーとホモフォビア(同性愛嫌悪)の払拭に、大いに貢献してくれていることと思います。
INDEX
- “怪物”として描かれてきたわたしたちの物語を痛快に書き換える傑作アニメーション映画『ニモーナ』
- 映画『怪物』レビュー
- 恋に翻弄されるゲイの愚かで滑稽で愛すべき姿態をオゾン流にキャムプに描いた大傑作メロドラマ『苦い涙』
- ドリアン・ロロブリジーダさん主演の素敵な短編映画『ストレンジ』
- クラシックの世界のリアルを描いた登場人物がクィアだらけの映画『TAR/ター』
- 僕らはこんな漫画をずっと読みたかったんだ…田亀源五郎『魚と水』単行本
- PrEPについて楽しく学べるポップでセクシーな映画『The PrEP Project』
- ゲイカップルが世界の運命を決める――M.ナイト・シャマランの最新作『ノック 終末の訪問者』
- レポート:『OUT IN JAPAN 2023 Spring 写真展 by LESLIE KEE』『アキラ・ザ・ハスラー 「Here’s Your Playground」』
- 高校生のひと夏の恋と成長を描いた青春ドラマにして最高のクィア・コメディ映画『あの夏のアダム』
- 中国で男娼として生きる主人公やその周囲の若者たちの群像をせつなく美しく描いた映画『マネーボーイズ』
- 50代以上のゲイの方たちの食事会の様子を通じて人生を映し出した映画『変わるまで、生きる』
- これまで見捨てられがちだった人々をも包み込んで慈しむような素晴らしいゲイ映画『老ナルキソス』
- 驚くべき魂を持った人間の崇高な最期を描いた映画『ザ・ホエール』
- ゲイと女性2人の美大同級生たちの人生模様を料理とともに描くドラマ『かしましめし』
- ゲイである父、娘たち、元彼の人間模様を描き、人間の「尊厳」や「愛」を問う映画『すべてうまくいきますように』
- レビュー:リン・モンホワン『同棲時間』公演記録映像上映+アフタートーク
- レビュー:リン・モンホワン『赤い風船』『アメリカ時間』
- 大興奮!大傑作!本当に面白いクィアSFアクションムービー『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
- 実にポップでインテレクチュアルでエモーショナルで画期的な『極私的梅毒展』@akta
SCHEDULE
- 05.18秋田プライドマーチ
- 05.18An Evening with ALASKA
- 05.18SPECTRUM vol.1
- 05.18GLOBAL KISS
- 05.18PIERROT OKINAWA 19th anniversary