REVIEW
城平海『青いモノクローム』
二人の男子高校生の青春ラブストーリーと言うにはあまりにもせつない、涙なしには読めない物語。ぜひ多くの方に読んでほしい心の名作、大事に胸の中であたためておきたい宝物のようなゲイ小説です。

今回ご紹介するのは、『G-men』誌などで活躍してきた作家・城平海さんの『青いモノクローム』という小説です。二人の男子高校生の青春ラブストーリーと言うにはあまりにもせつない、涙なしには読めない物語。ぜひ多くの方に読んでほしい心の名作、大事に胸の中であたためておきたい宝物のようなゲイ小説です。城平さんがこの作品に込めた魂の深さにはとうてい及びませんが、心を込めてレビューをお届けします。(後藤純一)
今回ご紹介する『青いモノクローム』は、もともとは2009年にゲイコミック誌『GBless』で連載されていた小説で、2010年、城平さんが大幅に加筆修正したうえで古川書房より単行本として発売されたものです。Amazonなどでも販売されているので、中には女性の方も読んで「娘に読ませた」とコメントをしていたり、ゲイの読者という枠を越えて「泣ける」と評判になっていました。
後藤も最近やっと『青いモノクローム』を読み、いい意味での衝撃を受け、心がふるえる思いがしました。これはぜひ、たくさんの人に読んでほしいと思い、遅ればせながら、今回レビューをお届けする次第です。
『青いモノクローム』の舞台は、城平さんの(そして多くのゲイの方が)愛する沖縄。しかも、那覇ではなく、米軍基地と縁が深い沖縄市です(コザには、米軍の人たちが遊んだ戦後の趣を残すような繁華街があります)
主人公は、恵まれた環境ですくすくと育った誠也。誠也と同じく中学でバスケットボール部のエースだったハーフの賢人(ケント)と恋に落ち、賢人は誠也と同じ私立高校に入学。雲ひとつなく晴れ渡る沖縄の空のように純粋な二人の恋は、初めこそ順調でしたが、次第に暗雲が立ちこめてきて…
沖縄と言えば、輝く太陽、青い空と海、三線と泡盛と陽気なうちなんちゅ。まるで楽園のような南の島を舞台に、よく日に焼けた快活な男の子たちが恋にめざめる、そんなさわやかな青春小説…かと思いきや、読み進めていくうちに、だんだん様子が違ってきます。ゲイがなかなか受け入れられない土地柄、思春期固有の悩み…そして後半は、まさかの展開が待っています。運命の糸がいくつも複雑に絡み合い、どんどん予想外の(そうはなってほしくない)方向に物語が進んでいきます…。
戦争の爪痕が色濃く残っている沖縄では、陽気な三線の音もどこか物悲しく響いたりすると思います。本土の人間にはとうてい理解し尽くせない、沖縄だからこその苦悩があるはずです(太陽が明るければ明るいほど影がいっそう暗くなるといいますか…)。この小説には、そういう「沖縄の悲しみ」と「ゲイの悲しみ」とが、あまりにも鮮烈に、リアルに描かれていました。
結末を書くわけにはいかないので、もどかしいのですが、あまりの衝撃に茫然自失としながら、この小説は城平さんがゲイの読者に向けて(特に沖縄のゲイの方に向けて)贈ったメッセージなのかな…と思っていました。が、あとがきを読んで、決してそれだけではないということがわかり、さらに、ひっくり返るほど驚きました。(この本を読んだ後でぜひ、blogも読んでみてください)
とても個人的な感想なのですが、『青いモノクローム』を映画に喩えると、『トーチソング・トリロジー』のような、決してハッピーエンドではないのですが、ずっと胸に抱きしめていたい(『トーチソング・トリロジー』のラストシーンのように)、心の奥でずっと宝物として輝き続けるような、そんな作品だと思いました。
それから、映画といえば、10年ほど前にNLGRで『四角い夏』という作品を観たときの号泣体験(もう本当に、一生に何度あるかわからないくらい、おいおい泣きました)を思い出しました。
人それぞれ、受けとめ方に違いはあるとは思うのですが、僕は本当に大勢の人に読んでほしいと、心から思います。きっと読んだ方は、誰か大切な人に勧めたくなると思います。そういう本です。
城平さんの作品は、『アンナ・カハルナ』などもそうですが、本当にあたたかい。城平さん自身の人柄がよく表れていると思います。
これは余談かもしれませんが、2008年、東京プライドパレードが中止になった時に、キャンディミルキィさんが「来年のパレード開催を祈願して、私一人でも歩きます」と宣言し、その思いに共鳴した約10人のゲイの方たちがいっしょに歩くという素敵な「プチ・パレード」がありました。その時の参加者の一人が、城平さんでした。粋といいますか、男気があるといいますか、本当に気持ちのいい(キモチいいことも得意な)方です。
INDEX
- 涙、涙の、あの名作ドラマがついにファイナルシーズンへ…『POSE』シーズン3
- 人間の「尊厳」と「愛」を問う濃密な舞台:PLAY/GROUND Creation『The Pride』
- 等身大のゲイのLove&Lifeをリアルに描いた笑いあり涙ありな映画『ボクらのホームパーティー』(レインボー・リール東京2022)
- 近未来の台北・西門を舞台にしたポップでクィアでヅカ風味なシェイクスピア:映画『ロザリンドとオーランドー』(レインボー・リール東京2022)
- 獄中という極限状況でのゲイの純愛を描いた映画『大いなる自由』(レインボー・リール東京2022)
- トランスジェンダーの歴史とその語られ方について再考を迫るドキュメンタリー映画『アグネスを語ること』(レインボー・リール東京2022)
- 「第三の性」「文化の盗用」そして…1秒たりとも目が離せない映画『フィンランディア』(レインボー・リール東京2022)
- バンドやってる男子高校生たちの胸キュン青春ドラマ『サブライム 初恋の歌』(レインボー・リール東京2022)
- 雄大な自然を背景に、世界と人間、生と死を繊細に描いた『遠地』(レインボー・リール東京2022)
- 父娘の葛藤を描きながらも後味さわやかな、美しくもドラマチックなロードムービー『海に向かうローラ』
- 「絶対に同性愛者と言われへん」時代を孤独に生きてきた大阪・西成の長谷さんの人生を追った感動のドキュメンタリー「93歳のゲイ~厳しい時代を生き抜いて~」
- アジア系ゲイが主役の素晴らしくゲイテイストなラブコメ映画『ファイアー・アイランド』
- ミュージシャンとしてもゲイとしても偉大だったジョージ・マイケルが生前最後に手がけたドキュメンタリー映画『ジョージ・マイケル:フリーダム <アンカット完全版>』
- プライド月間にふさわしい名作! 笑いあり感動ありのドラァグクイーン演劇『リプシンカ』
- ゲイクラブのシーンでまさかの号泣…ゲイのアフガニスタン難民を描いた映画『FLEE フリー』
- 男二人のロマンス“未満”を美味しく描いた田亀さんの読切グルメ漫画『魚と水』
- LGBTQの高校生のリアリティや喜びを描いた記念碑的な名作ドラマ『HEARTSTOPPER ハートストッパー』
- LGBTQユースの実体験をもとに野原くろさんが描き下した胸キュン青春漫画とリアルなエッセイ『トビタテ!LGBTQ+ 6人のハイスクール・ストーリー』
- 台湾での同性婚実現への道のりを詳細に総覧し、日本でも必ず実現できるはずと確信させてくれる唯一無二の名著『台湾同性婚法の誕生: アジアLGBTQ+燈台への歴程』
- 地下鉄で捨てられていた赤ちゃんを見つけ、家族として迎え入れることを決意したゲイカップルの実話を描いた絵本『ぼくらのサブウェイベイビー』







