REVIEW
『公式ガイド&レシピ きのう何食べた? ~シロさんの簡単レシピ~』
ドラマ『きのう何食べた?』にハマった方なら、記念にぜひ。そうでなくても、ふつうに実用的なレシピ本としてもスグレモノな一冊ですので、ぜひ。料理のレパートリーが増え、毎日の晩ご飯作りが楽しくなること間違いナシです。
ドラマ『きのう何食べた?』、本当に名作でしたね…。きっと、放送が終わって「何食べ」ロスになった方もいらしたと思います(私もそうです)、ドラマに出てくる料理を実際に作ってみた方も多かったことでしょう(私もそうです)。そんなみなさんがすでにゲットしていると思われる(世間的にもたいへん売れている)公式レシピ本を、いちおう、念のため、ご紹介します。ドラマにハマった方ならマストですし、そうでない方にとっても、ふつうに毎日のご飯作りに役立つレシピ本で、しかもなんてことのない材料&調味料で実に効率的に、美味しく晩ご飯が作れるので、オススメです。(後藤純一)
『公式ガイド&レシピ きのう何食べた? ~シロさんの簡単レシピ~』は、ドラマの公式ガイドブックも兼ねているので、まず、登場人物のキャラクターガイドや、西島秀俊さんと内野聖陽さんがドラマを振り返って語る対談、原作者のよしながふみさんが、原作漫画の『きのう何食べた?』の裏話などを語るインタビューも掲載されています(実際に全部自分で作ってみたメニューです、とか、メインだけでなく副菜もちゃんと描く漫画を描きたかった、とか、いろいろ興味深いです)
そして後半は、ドラマで登場したほぼすべての料理のレシピがどーんと写真入りで紹介されています。それぞれの料理に対して、ドラマのエピソード(例えば、鶏の唐揚げであれば、初めてシロさんがケンジを実家に連れて帰って、お母さんがおせちだけだと足りないって言って、シロさんと一緒に鶏の唐揚げを作るシーンのこと)や、シロさんのワンポイント(例えば、「カブの海老しいたけあんかけ」であれば、「カブは、ある瞬間、突然ぐずぐずに火が入ってしまうので、透き通ってきたらすぐに火を止めること!」と的確なアドバイスが入る)も載っていて、立体的に楽しめます。
基本は、二人分の食費を「月に2万5千円以内に収める」ことを至上命題とした、コスパのよい家庭料理なのですが、ご飯の残りが微妙に少ないときに梅茶漬けにして「かさ増し」したり、ケンジが(シロさんが帰省でいなくて)一人のときに年越しそば代わりに作るサッポロ一番みそラーメン(バター入り。絶対旨いやつ)など、一人暮らしの方にとってもきっとお役に立つようなメニューもいろいろあります。
そもそも料理をあまりしないという方も、世の中の割と凝ったメニューを載せているレシピ本よりも全然ハードルが低くてどなたでも作りやすいレシピ集ですので、一冊持っておくとしたら、ちょうどいいと思います。
あと、(私もそうですが)スイーツを作ったことがない、ハードルが高い、と思っている方に、入り口として最適な、いちごのジャムや、クレープのレシピもあって、これなら作れそう!って思います。
お子さんがいるような世間のご家庭にとっては、晩ご飯作りって毎日のルーティンだったり義務感だったりな趣もあるかもしれませんが、『きのう何食べた?』では(同じように食費のやりくりをしてあるものでサッと作ったりという料理なのですが)毎日の食卓が本当にかけがえのない「幸せの象徴」みたいに感じられますよね。一緒に住んでるパートナーがいて、毎日ご飯を一緒に食べれたら、それだけでも幸せなこと、「有り難い」ことなんじゃないかと思います。
その幸せにさらにプラスして、この本のレシピを見ながら、今まで作ったことのない料理にチャレンジしてみると、晩ご飯がより楽しいものになるかもしれません。「この料理が登場した回ってどんな話だったっけ?」と話に花が咲いたりして、お二人の日々の生活のちょっとした調味料(スパイス)にもなるかもしれません。
というわけで、まだお持ちでない方はぜひ、お求めください。
消費税が上がる前の今のうちにどうぞ。
「公式ガイド&レシピ きのう何食べた? ~シロさんの簡単レシピ~」
講談社/1,400円+税
(c)講談社
INDEX
- マジョリティの贖罪意識を満たすためのステレオタイプに「FxxK」と言っちゃうコメディ映画『アメリカン・フィクション』
- クィアでブラックなミュージカル・コメディ・アニメドラマ『ハズビン・ホテルへようこそ』
- 涙、涙…の劇団フライングステージ『こころ、心、ココロ -日本のゲイシーンをめぐる100年と少しの物語-』第二部
- 心からの拍手を贈りたい! 劇団フライングステージ 『こころ、心、ココロ -日本のゲイシーンをめぐる100年と少しの物語-』第一部
- 40代で性別移行を決意した人のリアリティを描く映画『鏡をのぞけば〜押された背中〜』
- エストニアの同性婚実現の原動力になった美しくも切ない映画『Firebirdファイアバード』
- ゲイの愛と性、HIV/エイズ、コミュニティをめぐる壮大な物語を通じて次世代へと希望をつなぐ、感動の舞台『インヘリタンス-継承-』
- 愛と感動と「ステキ!」が詰まったドラァグ・ムービー『ジャンプ、ダーリン』
- なぜ二丁目がゲイにとって大切な街かということを書ききった金字塔的名著が復刊:『二丁目からウロコ 増補改訂版--新宿ゲイ街スクラップブック』
- 『シッツ・クリーク』ダン・レヴィの初監督長編映画『ため息に乾杯』はゲイテイストにグリーフワークを描いた素敵な作品でした
- 差別野郎だったおっさんがゲイ友のおかげで生まれ変わっていく様を描いた名作ドラマ『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』
- 春田と牧のラブラブな同棲生活がスタート! 『おっさんずラブ-リターンズ-』
- レビュー:大島岳『HIVとともに生きる 傷つきとレジリエンスのライフヒストリー研究』
- アート展レポート:キース・へリング展 アートをストリートへ
- レナード・バーンスタインの音楽とその私生活の真実を描いた映画『マエストロ:その音楽と愛と』
- 中国で実際にあったエイズにまつわる悲劇を舞台化:俳優座『閻魔の王宮』
- ブラジルのHIV/エイズの状況をめぐる衝撃的なドキュメンタリー『神はエイズ』
- ドラァグでマジカルでゆるかわで楽しいクィアムービー『虎の子 三頭 たそがれない』
- 17歳のゲイの少年の喪失と回復をリアルに描き、深い感動をもたらす映画『Winter boy』
- 愛し合う美青年二人が殺害…本当にあった物語を映画化した『シチリア・サマー』
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