REVIEW
ガガ本の決定版!『レディー・ガガ エッセンシャル・フォトバイオグラフィー』
ついに出ました、ガガ本の決定版! まるで写真集のようにレディ・ガガの素敵写真がふんだんに掲載され、詳細なバイオグラフィーとともに「ガガの女神」といったコラムも盛り込まれたファン必携!の充実極まりないフォトブックです。これ一冊でガガのことはOK!
そしてもちろん、ガガと言えばゲイですから、ゲイとの関わりについてもたっぷり語られています。
・ガガが移り住んだ頃のロワー・イーストサイドは、アンディ・ウォーホールの「ファクトリー」の精神が息づく、アーティストやボヘミアンが暮らす最先端の街でした。ガガは、通っていたクラブでドラァグクイーンといっしょに踊り、たくさんのゲイと知り合いました。
・2008年夏、『Just Dance』のプロモーションで、ガがは膨大な数のゲイクラブを回りました。ロワー・イーストサイドのゲイクラブでレディ・スターライトといっしょにゴーゴーダンスを始めた時からゲイの共感を呼び、根強い支持を集めていたからです。スペシャル・ミックスのシングルをゲイクラブだけに配布し(うらやましい!)、そのスタイリッシュで気合いの入ったスタイルは、クラバーたちに絶賛されました。
ガガは『ローリングストーン』誌のインタビューでこう語っています。「(キャリアをスタートさせた頃は)ニューヨークのゲイクラブで遊び回っていた。80年代のクラブカルチャーに心酔していたのよ」。当時のゲイクラブでは80年代のクラブカルチャーが大流行していたのです。
6月最終日曜日のサンフランシスコ・プライドのパーティへの出演をはじめ、その夏、ガガはさまざまなゲイプライドイベントに姿を見せました。
・しかし、ガガは、決してゲイのファンをだしにしているとか、NYのゲイシーンとのつながりを利用しているとは思われたくなかったそうです。実際『Boys Boys Boys』は早いうちからシングルとしてリリースできる状態にありましたが、ガガはこの曲がいかにもハデハデしいゲイ讃歌になってしまうかもしれないことに懸念を抱き、リリースを拒んでいました。この件についてインタビューされたガガは「ほんと言うと、世界全体をゲイにしたいの」と語りました。
・それから1年が過ぎた頃、ガガはゲイの権利向上運動を支援するため、ヒューマン・ライツ・キャンペーンの晩餐会でジョン・レノンの『イマジン』をアレンジを加えて歌うことになります。真剣なメッセージを伝えるため、身なりも落ち着いた雰囲気にしていました。ガガにとって、音楽を売ることだけがすべてではありません。ガガは社会貢献という分野でも仕事をしたいと思っていました。
「メインストリームに押し上げてくれたのはゲイのみんなだった。私は彼らに身を捧げたし、彼らも私に身を捧げてくれたの。ゲイコミュニティのおかげで、今の私があるのよ」
・2008年10月から12月はニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックの前座として全米のアリーナを回っていました。ガガは公演が終わると、たいていその街のゲイクラブやオシャレなナイトスポットに出演しました。
・2009年、1月にロンドン最大のゲイクラブ「ヘブン」に出演し、勢いをつけました。2月には「ブリット・アワード」でペットショップ・ボーイズと共演しています。
・2009年9月、世界がガガに興味を示し、ツアーで世界を回る間に強い影響力を持つ人と仲よくなっていきましたが、その最たる例が、ペレズ・ヒルトンでした(ペレズは、GLAADの広報を務めたり、ゲイ雑誌の編集者になったこともあります)。ヒルトンはゲイだと噂されていてもはっきり公言していないセレブのセクシュアリティを暴露することでその名を馳せました。また、MIKAのようなゲイの権利運動支持者のプロモーションを買って出ることもありました。
本文に書かれたこうした記述だけでなく、コラムとして盛り込まれた「ガガの女神」というコーナーでは、ガガに影響を与えたさまざまなアーティストのことが紹介されています。マドンナ、シンディ・ローパー、アンディ・ウォーホール、デビッド・ボウイ、エルトン・ジョン、フレディ・マーキュリー、リー・バウリー、グレイス・ジョーンズ、アレクサンダー・マックイーン…もはやゲイ(とゲイ・アイコン)大図鑑といった趣です。
「ガガとマドンナを比較するくらいなら、シンディ・ローパーを引き合いに出すほうがより核心に近づける」という「なるほど!」な記述や、「すべてはウォーホールに帰するわ。コマーシャル・アートをファイン・アートとして真剣に受け入れられるものにした彼の手腕は見事よ。それこそ私自身の使命だと感じるの」といったガガのコメント、『Just Dance』のジャケ写の「稲妻」がデビッド・ボウイへのオマージュである件、亡くなったリー・マックイーンに捧げたガガのパフォーマンスなど、これだけでも読み応え十分な充実コラムです。
面白いのは、この「ガガの女神」シリーズに「ミラーボール」がフィーチャーされていること。「ベトナム戦争にうんざりしていたアメリカは、面倒なことをすべて忘れる場所としてダンスフロアを選んだ。ディスコに政治がからんでいなかったわけではない。ゲイの権利運動は盛り上がりを見せ、69年にストーンウォール事件が起こった」「ディスコに行くためにおしゃれをするのは、そこで踊るのと同じくらい楽しくて大事なことだった。ガガが頻繁にミラーボールを使うのも無理はない。素敵なナイトライフのシンボルなのだ」「ミラーボールに象徴されるディスコ・スピリットーー常に最高のおしゃれを志す精神は、ガガの真髄だ」
ちなみにこの『レディー・ガガ エッセンシャル・フォトバイオグラフィー』を発行しているのは『MILK-写真で見るハーヴィー・ミルクの生涯』や『アグリー・ベティ オフィシャルブック』のAC BOOKS。たいへんゲイ・フレンドリーな出版社です。
そして今回、AC BOOKSのご厚意により、この『レディー・ガガ エッセンシャル・フォトバイオグラフィー』を3冊、読者の方にプレゼントできることになりました。近日中に応募要項を書いたメールを会員の皆様宛てにお送りしますので、お待ちください。
レディー・ガガ エッセンシャル・フォトバイオグラフィー
ジョニー・モーガン:著/藤沢祥子:訳/ACクリエイト/168ページ/29.6x21.2x1.8cm/1900円+税
INDEX
- 米史上初のゲイの大統領になるか?と騒がれた人物の素顔に迫る映画『ピート市長 〜未来の勝利宣言〜』
- 1920年代のベルリンに花開いたクィアの自由はどのように奪われたのか――映画『エルドラド: ナチスが憎んだ自由』
- クィアが「体感」できる名著『慣れろ、おちょくれ、踏み外せ』
- LGBTQは登場しないものの素晴らしくキャムプだったガールズムービー『バービー』
- TORAJIRO 個展「UNDER THE BLUE SKY」
- ただのラブコメじゃない、現代の「夢」を見せてくれる感動のゲイ映画『赤と白とロイヤルブルー』
- 台湾映画界が世界に送る笑えて泣ける“同性冥婚”エンタメ映画『僕と幽霊が家族になった件』
- 生き直し、そして希望…今まで観たことのなかったゲイ・ブートキャンプ・ムービー『インスペクション ここで生きる』
- あらゆる方に読んでいただきたいトランスジェンダーに関する決定版的な入門書『トランスジェンダー入門』
- 世界をトリコにした名作LGBTQドラマの続編が配信開始! 『ハートストッパー』シーズン2
- 映画『CLOSE クロース』レビュー
- 映画『ローンサム』(レインボー・リール東京2023)
- 映画『ココモ・シティ』(レインボー・リール東京2023)
- FANTASTIC ASIA! ~アジア短編プログラム~(レインボー・リール東京2023)
- 映画『マット』(レインボー・リール東京2023)
- 映画『秘密を語る方法』(レインボー・リール東京2023)
- 映画『クリッシー・ジュディ』(レインボー・リール東京2023)
- 映画『孔雀』(レインボー・リール東京2023)
- クィアな若者がコスメ会社で働きながら人生を切り開いていくコメディドラマ『グラマラス』
- 愛という生地に美という金糸で刺繍を施したような、「心の名画」という抽斗に大切にしまっておきたい宝物のような映画『青いカフタンの仕立て屋』
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