REVIEW
映画『アリス・イン・ワンダーランド』
巷でも大ヒット中の映画『アリス・イン・ワンダーランド』。赤の女王や奇妙な双子トウィードルダム&トウィードルディー(マット・ルーカス)といったクィア(ヘン)なキャラをお楽しみください。
Photos: (C) Disney Enterprises, Inc.
大きくなったり小さくなったり、3月うさぎや帽子屋やチェシャ猫がお茶会をする「不思議の国(ワンダーランド)」でのファンタジーかと思いきや、「結婚が女性の幸せ」という社会通念の強制を拒み、「アンダーランド」での冒険(ロールプレイング)による成長を通じて、男性と対等に、自立して生きていこうとする女性の物語として描かれていました。
それはそうと、この映画には奇妙なキャラクターがたくさん登場します。そこがゲイ的な見所ではないでしょうか。実はゲイがいちばん面白がり、共感さえするのは、「悪玉」の赤の女王(ヘレナ・ボナム・カーター=ティム・バートンの奥さん)だと思います。明らかにデッサンが狂ったような二頭身キャラで、怒鳴ったり、男の色気で顔を赤らめたり、感情をむきだしにして女王然と振る舞っています。機械のようなトランプの戦士たちや動物たちや怪物たちや意志を持たない取り巻きたちの中にあって、赤の女王はとびきり人間らしく見えます。その表情のトゥーマッチさ(やりすぎ感)には思わず笑ってしまいます。
対する「善玉」であるところの白の女王(アン・ハサウェイ=お兄さんがゲイです)は、ぼーっとした無垢で美しいプリンセス、という雰囲気でしたが、アリスのために「体が縮む薬」を作るとき、ちょっと「ヘン」な感じを見せました(ツバを入れたり)。
帽子屋ハッター(ジョニー・デップ)はジョニデであるがゆえにアリスとペアであるような主役男性として扱われていましたが、そのハデすぎるメイクや(どうやったらあんな目になるんでしょう)、ちょっとクレイジーなキャラなどはなかなか楽しめました。
そして、あの『リトル・ブリテン』のマット・ルーカスが演じた奇妙な双子、トウィードルダム&トウィードルディーこそは、最もクィア(ヘン)なキャラでした。いい人なのか悪い人なのか、仲がいいのか悪いのか、人間なのかそうじゃないのか、よくわからない存在。彼らは戦いもしないし、ただ流されるままに右往左往しながら、物語を面白く味付けする役回り(トリックスター?)なのでした。
ちなみに、アリス役を演じたミア・ワシコウスカは、なかなかゲイに縁がある女優さんです。
彼女は『ミルク』のガス・ヴァン・サント監督の新作『レストレス(Restless)』に主演することが決まっています。
また、ジュリアン・ムーアとアネット・ベニングがレズビアン・カップルを演じる『The Kids Are All Right』(2010年公開予定)にも娘役で出演しています。
(後藤純一)
『アリス・イン・ワンダーランド』ALICE IN WONDERLAND
2010年/アメリカ/監督:ティム・バートン/出演:ジョニー・デップ、ミア・ワシコウスカ、ヘレナ・ボナム=カーター、アン・ハサウェイ、クリスピン・グローヴァー、マット・ルーカスほか/配給:ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ
INDEX
- 米史上初のゲイの大統領になるか?と騒がれた人物の素顔に迫る映画『ピート市長 〜未来の勝利宣言〜』
- 1920年代のベルリンに花開いたクィアの自由はどのように奪われたのか――映画『エルドラド: ナチスが憎んだ自由』
- クィアが「体感」できる名著『慣れろ、おちょくれ、踏み外せ』
- LGBTQは登場しないものの素晴らしくキャムプだったガールズムービー『バービー』
- TORAJIRO 個展「UNDER THE BLUE SKY」
- ただのラブコメじゃない、現代の「夢」を見せてくれる感動のゲイ映画『赤と白とロイヤルブルー』
- 台湾映画界が世界に送る笑えて泣ける“同性冥婚”エンタメ映画『僕と幽霊が家族になった件』
- 生き直し、そして希望…今まで観たことのなかったゲイ・ブートキャンプ・ムービー『インスペクション ここで生きる』
- あらゆる方に読んでいただきたいトランスジェンダーに関する決定版的な入門書『トランスジェンダー入門』
- 世界をトリコにした名作LGBTQドラマの続編が配信開始! 『ハートストッパー』シーズン2
- 映画『CLOSE クロース』レビュー
- 映画『ローンサム』(レインボー・リール東京2023)
- 映画『ココモ・シティ』(レインボー・リール東京2023)
- FANTASTIC ASIA! ~アジア短編プログラム~(レインボー・リール東京2023)
- 映画『マット』(レインボー・リール東京2023)
- 映画『秘密を語る方法』(レインボー・リール東京2023)
- 映画『クリッシー・ジュディ』(レインボー・リール東京2023)
- 映画『孔雀』(レインボー・リール東京2023)
- クィアな若者がコスメ会社で働きながら人生を切り開いていくコメディドラマ『グラマラス』
- 愛という生地に美という金糸で刺繍を施したような、「心の名画」という抽斗に大切にしまっておきたい宝物のような映画『青いカフタンの仕立て屋』
SCHEDULE
- 05.04アスパラベーコン -ゴールデンウィークスペシャル-
- 05.04雄っぱいナイト!3
- 05.04Gay Spiral x BOXER 同時開催
- 05.04デブ専フェスティバル 『 BOOBOO大阪 』 祝5周年スペシャル!!!
- 05.05“AVALON -RESCUE-”