REVIEW
映画『家族コンプリート』
『初戀』が第58回ベルリン国際映画祭パノラマ部門に選出された今泉浩一監督。その最新作『家族コンプリート』が、海外の映画祭を経て、待望の日本公開を果たしました。レビューをお届けします。

『初戀』が第58回ベルリン国際映画祭パノラマ部門に選出された今泉浩一監督。その最新作『家族コンプリート』が、海外の映画祭を経て、待望の日本公開を果たしました。8月17日~19日の3日間、渋谷のアップリンク・ファクトリーで上映会が行われ、後藤は最終日の19日に行ってきたのですが、立ち見が続出するほどの超満員で、まるで映画祭のように盛り上がりを見せました。そしてめでたく、9月22日(土祝)に追加上映が決定しました。『家族コンプリート』のレビューをお届けします。(後藤純一)




『初戀』の3年後に撮られた新作長編『家族コンプリート』は、前作とは異なるアプローチによってゲイの恋愛とセックスを描いた作品です。フライヤーを見た限りでは、日本の伝統的な家族の閉塞感とか、田亀源五郎さんの『外道の家』のような作品を想像していたのですが、実際に観てみると、予想以上にキャンプ(ゲイテイスト)な、極上のエンタメ作品でした。
まず、この映画は前提がポルノ映画です(上映後のトークで、監督さんがそう語っていました)。なので、ラブシーンがたくさん出てきます。たぶんですが、日本のゲイ映画史のなかで、2006年の東京国際レズビアン&映画祭で上映された大木裕之監督の『g8-2(カリ)』の中の1シーン(こちらはハードコアテイスト)と肩を並べるエロティックさではないでしょうか。そして、ちゃんとスリムな方から太めの方までをカバーしている気の配りようが素晴らしいと思いました(イギリスの映画評論家、トニー・レインズは「この映画は心の広い大人専用。そして特にぽっちゃり好みの人にはたまらないはずだ」と評しています)。実際に観て感じてほしいのですが、これは、ただのポルノ映画ではなく、とんでもなく「面白いポルノ映画」です。
そして、この映画は、ドラマとしても面白い作品です。家族批評という意味では、上映後のトークショーで「裏サザエさん」という設定が暴露されましたが(なので、「タマ」が出てくるのです)、いわゆる日本の伝統的な家族の息苦しさとか上っ面な感じとかをパロディにしてもいますし、封建的というか父権的なものへの立派な批評にもなっています。一般の映画だと、奉仕するのは主に女性ですが、それが男性になったまでのことです。要は全体が「裏サザエさん」というパロティであり(昔そういう4コマ漫画が『さぶ』に連載されてましたね)、少しも重苦しさとか痛さを感じさせず、軽やかに楽しめます。なかなかできないことだと思います。
上映後のトークショーでは、映画評論家の大久保賢一さん、映像作家の村上なほさん(セクシュアルマイノリティフレンドリーな「Latitude☆P」を設立した方)が登場し、主に、『家族コンプリート』が海外の映画祭でいかに高く評価されているかという話になりました。中でもいちばん印象的だったのは、ベルリン・ポルノ映画祭に出品したとき、10代の女の子が「どうして性器のクローズアップが無いのですか?」と質問したという話でした(今泉監督は「次回はそういうシーンも入れます」と答えたそうです)
また、バンクーバー国際映画祭では、トニー・レインズ(同映画祭のディレクターでもありました)が「ぽっちゃり好きにはたまらない」と書いたため、熊系の(たぶんゲイの)人がわんさか押し寄せたそうです。
男女モノだろうとゲイモノだろうと、ポルノ映画が立派に市民権を得ている欧米と、未だに無修正だと犯罪として取り締まられてしまいかねない日本…その温度差の違いをリアルに感じられる、とても意義深いトークショーでした。
この先月の上映会がたいへん盛況だったため(映画評論家の大久保さんが「インディーズ映画とは思えない」と驚くほど)、9月22日に追加上映が決定しました。まだご覧になっていない方、この機会にぜひ!
『家族コンプリート』上映+トークショー
日時:9月22日(土祝)17:30開場 18:00上映開始
会場:アップリンク・ファクトリー 1F(渋谷東急本店200m先右手)
東京都渋谷区宇田川町37-18 トツネビル1階 TEL:03-6825-5502
料金:1,800円
※ゲストは未定ですが、上映後にゲストを招いて監督とのトークショーが行われます。
※小さな劇場ですので、当日ですと、入れなくなる可能性もあります。こちらから予約ができますので、ぜひお早めの予約を!

『家族コンプリート』The Family Complete
2010年/日本/カラー/106分/DV/ステレオ/英語字幕あり
監督・脚本・編集:今泉浩一
出演:神羽亮祐、ほたる、藤丸ジン太、梶コージ、戸高大輔、村上ひろし、松之木天辺、大木裕之、井上貴大、伊藤清美、今泉浩一ほか
撮影監督・スチール写真:田口弘樹
音楽・音響:PEixe-elétrico
題字・灯り制作:赤岩保元
英語字幕翻訳:川口隆夫
字幕協力: Jonathan M Hall
衣装協力:屋屋(着物)・SHIO(シャツ)
着付・監督助手: 杉内一
制作:岩佐浩樹
製作:habakari-cinema+records
INDEX
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