REVIEW
映画『マイケル・ジャクソン キング・オブ・ポップの素顔』
マイケルの突然の死が世界を悲しみに包んだあの日から1年…あちこちで1周忌の追悼企画が行われています。マイケルは決してゲイ・イコンではなかったかもしれませんが、『THIS IS IT』で感動した方も多いと思いますし、『マイケル・ジャクソン キング・オブ・ポップの素顔』がどんなだったか、レビューをお届けしようと思いました。

『THIS IS IT』はステージ上のマイケルの人知を超えたパフォーマンスを生き生きと伝えることで人々を驚愕させ、感動させ、癒す作品でした。が、この『マイケル・ジャクソン キング・オブ・ポップの素顔』には、マイケルが歌ったり踊ったりパフォーマンスしている様子が1つもありません。『THIS IS IT』のようなライブ感、高揚は皆無です。マイケルの曲すらほとんど使われていません。
それでも、10年もの間マイケルのそばにいてそのプライベートを撮りだめたという貴重な映像からは、マイケルというカリスマがどれだけ人々に影響を与えたか、そのスゴさがひしひしと伝わってきました。あらためて「マイケルは本当に素晴らしい人だった…」としみじみ思いを馳せ、静かにマイケルを追悼するための作品だと感じました。

でも、マイケルは、そんなファンたちを「うざい」と感じたり、乱暴に振り払ったり、絶対にしません。ずっと手を振ったり、ときには握手したり、ハグしたり(泣きながら抱きつく人も多数)、車の上に乗ってサービスしたりするのです。道路に飛び出そうとする危険な人を制する警官にも「優しくね」と言います。「愛してる」と叫ぶファンたちに「僕のほうがもっと愛してる」と応えるのです。
そういえば、首にレインボーのネックレスをつけたクマ系の男性(明らかにゲイだと思われる人)が、マイケルに握手してもらってキャーキャー飛び上がって感激するシーンもありました。
たぶんこれも2003年の映像だと思いますが、セレブもたくさん誕生日メッセージを贈っていました。ビヨンセ、メアリー・J・ブライジ、N.E.R.D.、OUTCAST、アブリル・ラビーンなどです。特にビヨンセのメッセージは心からのリスペクトが感じられました。

グラミーやAMAやMTVアワードなど、マイケルが穫った音楽賞は全部で372もあるそうですが、人道的な貢献をした人に贈られる賞もかなりたくさんあります。
マイケルはネバーランドという自宅に(どれだけすごい遊園地であっても自宅なのです)、病弱な子どもたちや3週間後に抗がん剤治療を受けるという方や、いろんな人たちを招待し(映画館には病気の人でも楽に観ることができるようなベッドが設置されているそうです)、若者を支援するような慈善団体に多額の寄付をしています。
人々は口々にこう言います。「もし自分があれだけの富を得たら、こんな施設を作って恵まれない人たちを招待したりなんてこと、しないだろう?」「みんなマイケルのことを誤解しているけど、彼は真のHumanitarian(人道主義の人)だよ。どれだけ社会貢献しているか、もっと知ってほしい」「ゴシップなんか気にするな」
大勢のファンが泣きながら声援を送るような、熱狂的な支持を得たスターは、何もマイケルだけではありません。エルビスだってビートルズだってそうでした。
でも、マイケルがスゴいのは、最盛期のマイケルを知らない若者たちにも「愛してる!」と言われることです。ファンの集いなどを見ると、みんな若い人たちです。つまり、新たにファンを増やし続けているのです。
それは、「We are the world」や「Heal the world」に象徴されるような、子どもたちを救おうと呼びかけるマイケルのメッセージに実際に救われた人たちの多さを物語っています。「マイケルのおかげで立ち直れた」「マイケルのおかげで死なずにすんだ」と彼らは語ります。

整形によって明らかに不自然になった見た目のことも、誰も気にしません。「ふつう」じゃないからこそ、ますます神がかって見えるくらいです。
この映像は、ゴシップまみれだったマイケルを、その泥沼から救おうとしているように見えます。いかにマイケルが人々から愛されているか、いかにチャリティに貢献しているか。同時に、ときどき見せる「どこにでもいる男の子」のようなやんちゃな振る舞いも、ファンを安心させ、マイケルのイメージをアップさせるのに役立っていると思います。
ほんの少しだけ、たとえば甲高い声で笑ったり、「ふつうじゃない」(クィアな)部分も垣間見えます。が、基本的に、熱狂的なファンも、そこまでじゃない人も、誰もが好感を持って観ることのできる、愛とリスペクトが込められた作品だと思います。
逆に、プライベートを公開!という割にはあまりにもマイケルがキレイに(ストレートに)描かれているという意味で物足りなさを覚える方もいるかもしれません。
いずれにせよ、これが地上に最後に残されたマイケルの「素顔」であることは間違いありません。
『マイケル・ジャクソン キング・オブ・ポップの素顔』
2010年/アメリカ映画/配給:スターサンズ/配給協力:ビターズ・エンド/監督:マーク・シャフェル&オースティン・テイラー/出演:マイケル・ジャクソン他
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