REVIEW
映画『すべすべの秘法』
今泉浩一監督の最新作をご紹介。たかさきけいいちさんの漫画『すべすべの秘法』を下敷きにして撮り上げた、かわいらしくてセクシーな映画です。
映画『すべすべの秘法』は、コミックアンソロジー「ウラゲキ」(古川書房)に収録されたたかさきけいいちさんの短篇漫画をもとに、今泉浩一監督が脚本を書き、映画化した作品です。たかさきけいいちさんは独特の現代的なタッチやメッセージ性を持たせた作風が光る作家さんで、90年代に『バディ』誌上で発表された作品はずいぶん話題を呼んでいました。
まず、フライヤーのモデルにもなっている主演の馬嶋亮太さんが、とてもイイです。イマドキこんな子、なかなかいないよね〜と思わせるようなピュアでやんちゃな魅力が全開。明るくて元気で、笑顔がたまらなくカワイイです。関西弁と標準語がまざってたり、演技がわざとらしかったりしても、全く気になりません。映画にしても、ゲイビデオにしても、俳優さんの魅力が命、というところがあると思いますが、彼を起用した時点でこの映画はOK!だと思いました。
リョータの研修が終わったあと、二人は都内でデートします(なぜか行き先が新木場の夢の島。熱帯植物園とか、第五福竜丸展示館とか。原作ではそこで、震災や放射能の話が出てくるのですが、映画ではカットされていました。原作は会場で販売されているので、ぜひ読んでみてください)。そこに、イッセイの元彼(遊び人)が登場。ちょっと雲行きがあやしくなります…。その後どうなるかは、映画で観てみてください。(「すべすべの秘法」の意味も、映画で確かめてみてください)
ひとことで言うと、『初戀』のみずみずしさ(若いゲイたちの初々しさ)と、『家族コンプリート』のエロティシズムがバランスよく両方込められたような、愛おしい作品でした。でも、『すべすべの秘法』におけるセックス・シーンは、(おそらく1本に3〜4回というポルノ映画の作法を踏まえているにもかかわらず)あまりポルノという感じがしません。けなげな二人の、つかの間の幸せな時間の流れの中にある、とても自然な愛情表現になっているのです。そこが『家族コンプリート』とは違うな、と思いました(物足りないな、とは思いませんでした)
『すべすべの秘法』は、今日から2月8日(土)まで、渋谷アップリンクで毎日上映されます。興味のある方はご覧になってみてください。
『すべすべの秘法』The Secret to My Silky Skin
(2013年/カラー/77分/HDV/ステレオ/With English Subtitles)
※18歳未満の方はご覧いただけません
出演:馬嶋亮太、本名一成、きたがわひろ、藤丸ジン太、ほたる、村上なほ、伊藤清美、赤岩保元
原作:たかさきけいいち(「ウラゲキ vol.4/古川書房」 2005掲載)
監督・脚本・編集:今泉浩一
撮影・スチール写真:田口弘樹
音楽・音響:PEixe-elétrico
英語字幕:川口隆夫 字幕協力:Jeremy Harley
タイトル題字:赤岩保元
制作:岩佐浩樹
製作:habakari-cinema+records
INDEX
- 同性と結婚するパパが許せない娘や息子の葛藤を描いた傑作ラブコメ映画『泣いたり笑ったり』
- 家族的な愛がホモフォビアの呪縛を解き放っていく様を描いたヒューマンドラマ: 映画『フランクおじさん』
- 古橋悌二さんがゲイであること、HIV+であることをOUTしながら全世界に届けた壮大な「LOVE SONG」のような作品:ダムタイプ『S/N』
- 恋愛・セックス・結婚についての先入観を取り払い、同性どうしの結婚を祝福するオンライン演劇「スーパーフラットライフ」
- 『ゴッズ・オウン・カントリー』の監督が手がけた女性どうしの愛の物語:映画『アンモナイトの目覚め』
- 笑いと感動と夢と魔法が詰まった奇跡のような本当の話『ホモ漫画家、ストリッパーになる』
- ラグビーの名門校でホモフォビアに立ち向かうゲイの姿を描いた感動作:映画『ぼくたちのチーム』
- 笑いあり涙ありのドラァグクイーン映画の名作が誕生! その名は『ステージ・マザー』
- 好きな人に好きって伝えてもいいんだ、この街で生きていってもいいんだ、と思える勇気をくれる珠玉の名作:野原くろ『キミのセナカ』
- 同性婚実現への思いをイタリアらしいラブコメにした映画『天空の結婚式』
- 女性にトランスした父親と息子の涙と歌:映画『ソレ・ミオ ~ 私の太陽』(マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル)
- 女性差別と果敢に闘ったおばあちゃんと、ホモフォビアと闘ったゲイの僕との交流の記録:映画『マダム』(マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル)
- 小さな村のドラァグクイーンvsノンケのラッパー:映画『ビューティー・ボーイズ』(マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル)
- 世界エイズデーシアター『Rights,Light ライツライト』
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- 束の間結ばれ、燃え上がる女性たちの真実の恋を描ききった、美しくも切ないレズビアン映画の傑作『燃ゆる女の肖像』
- 東京レインボープライドの杉山文野さんが苦労だらけの半生を語りつくした本『元女子高生、パパになる』
- ハリウッド・セレブたちがすべてのLGBTQに贈るラブレター 映画『ザ・プロム』
- ゲイが堂々と生きていくことが困難だった時代に天才作家として社交界を席巻した「恐るべき子ども」の素顔…映画『トルーマン・カポーティ 真実のテープ』
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