REVIEW
映画『GF*BF』
昨年、アジアンクィア映画祭で上映され、立ち見が出るほどの人気を博した台湾映画『GF*BF』が、待望の一般公開を果たしました。激動の時代を背景に、男女3人の27年間にわたる友情と三角関係を描いた青春映画で、台湾のアカデミー賞で観客賞も受賞しています。ぜひ、ご覧ください!
昨年、アジアンクィア映画祭で上映され、立ち見が出るほどの人気を博した台湾映画『GF*BF』。レポートで「これがなぜ一般上映されないのか不思議です」と書かせていただきましたが、約1年のブランクを経て、待望の一般公開を果たしました(しかも北海道から沖縄まで、全国で)。激動の時代を背景に、男女3人の27年間にわたる友情と三角関係を描いた青春映画で、台湾のアカデミー賞で観客賞も受賞している作品です。あらためて、レビューをお届けしたいと思います。(後藤純一)
それに加えて今作は、もう一人の主人公を演じるリディアン・ボーンもまた、とてもゲイ受けすると思います。天真爛漫で「やんちゃな男の子」な魅力が全開で、本当にカワイイのです。
この二人が主役を張ってるだけでも観る価値があるというものですが、映画としてのクオリティがめちゃくちゃ高いところがまた素晴らしいです。
1985年、高雄。ライアム(ジョセフ・チャン)はハンサムな水泳部の男子。周囲には、同じ水泳部のメイベル(グイ・ルンメイ)とつきあっていると思われているし、メイベルもそのつもりでした。でも、新聞部のアーロン(リディアン・ボーン)が2人の間に割って入ってきます。アーロンはメイベルのことが好きで、でもライアムはアーロンのことが好きで…。3人はいっしょにつるむようになります。メイベルは結局、アーロンのおちゃめさや笑顔の魅力に負けて、つきあうことにします。
1992年、台北。ライアムとアーロンの2人は大学紛争をやっています。エアロの講師になったメイベルは、まだアーロンとつきあっていますが、学園闘争のさなか、アーロンが別の女性といい関係になっていることに気づきます。そしてライアムは…
1997年、台北。3人がひさしぶりに揃って会食することになります。そこでライアムは、すでに結婚したアーロンが、まだメイベルと関係を持っていることを知り…
ラストシーンは、もう、息を呑むような…。結末を語らずにお伝えすることは難しいのですが、ただ、そんな愛のかたちがあるなんて…という感動がひたひたと押し寄せ、ハラハラと泣けました。
少しも無駄がなく、すべてがカンペキなゲイ映画でした。惜しみなく拍手を送りたい気持ちです。
音楽もよかったです。古臭くなくて、とても効果的で。
台湾映画、恐るべし、です。
台湾のゲイ映画と言えば、(アメリカとの合作ですが)偽装結婚の騒動を描いたコメディ『ウェディング・バンケット』(1993)、衝撃的なまでに重いツァイ・ミンリャンの『河』(1997)を経て、2005年には、アジアで初めてゲイパレードのシーンを描くなど、徹底的にポップで前向きなゲイ・ラブコメとなった『僕の恋、彼の秘密』が発表され(『ゴー!ゴー!Gボーイズ!』(2006)もそんな感じでした)、同時に『花蓮の夏』(2006)のようなさわやかでほろ苦い青春映画も熱い支持を得ました。そういう流れの中で、『GF*BF』は、同性結婚式(ライアムではありません)のシーンも盛り込みつつ、ゲイを肯定したうえで、『花蓮の夏』的な青春ドラマに大河ドラマ的な要素も加えた、集大成的な作品になっていると思います。
そして、個人的には、ジョセフ・チャン演じるライアムは、たとえば『トーチソング・トリロジー』のアーノルドや『ブロークバック・マウンテン』のイニス&ジャックなどとともに、一生忘れられないような「泣かせる」ゲイ・キャラクターになりました(詳しく書けないのがもどかしいのですが、「泣かせる」のはその愛の深さゆえです。もともと正義のヒーローでもなく、どちらかというと自分を貶めてしまうタイプの人間が、愛ゆえに、ここまで前に進めるのか…という感動です)
まだご覧になっていない方はぜひ、劇場に足を運んでみてください。
『チョコレートドーナツ』とはまた違った意味で、泣ける名作です。
『GF*BF』女朋友。男朋友 GF*BF
2012年/台湾/配給:太秦/監督:ヤン・ヤーチェ/出演:グイ・ルンメイ、ジョセフ・チャン(張孝全)、リディアン・ボーン(鳳小岳)/シネマート六本木ほかで公開中
INDEX
- 依存症の問題の深刻さをひしひしと感じさせる映画『ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー』
- アート展レポート:ジルとジョナ
- 一人のゲイの「虎語り」――性的マイノリティの視点から振り返る『虎に翼』
- アート展レポート:西瓜姉妹@六本木アートナイト
- ラベンダー狩りからエイズ禍まで…激動の時代の中で愛し合ったゲイたちを描いたドラマ『フェロー・トラベラーズ』
- 女性やクィアのために戦い、極悪人に正義の鉄槌を下すヒーローに快哉を叫びたくなる映画『モンキーマン』
- アート展レポート「MASURAO GIGA -益荒男戯画展-」
- アート展レポート:THE ART OF OSO ORO -A GALLERY SHOW CELEBRATING 15 YEARS OF GLOBAL BEAR ART
- 1970年代のブラジルに突如誕生したクィアでキャムプなギャング映画『デビルクイーン』
- こんなに笑えて泣ける映画、今まであったでしょうか…大傑作青春クィアムービー「台北アフタースクール」
- 最高にロマンチックでセクシーでドラマチックで切ないゲイ映画『ニュー・オリンポスで』
- 時代に翻弄されながら人々を楽しませてきたクィアコメディアンたちのドキュメンタリー 映画『アウトスタンディング:コメディ・レボリューション』
- トランスやDSDの人たちの包摂について考えるために今こそ読みたい『スポーツとLGBTQ+』
- 夢のイケオジが共演した素晴らしくエモいクィア西部劇映画『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』
- アート展レポート:Tom of Finland「FORTY YEARS OF PRIDE」
- Netflixで配信中の日本初の男性どうしの恋愛リアリティ番組『ボーイフレンド』が素晴らしい
- ストーンウォール以前にゲイとして生き、歴史に残る偉業を成し遂げた人物の伝記映画『ラスティン:ワシントンの「あの日」を作った男』
- アート展レポート:第七回美男画展
- アート展レポート:父親的錄影帶|Father’s Videotapes
- 誰にも言えず、誰ともつながらずに生きてきた長谷さんの人生を描いたドキュメンタリー映画『94歳のゲイ』
SCHEDULE
記事はありません。