REVIEW
映画『お江戸のキャンディー』
完全MEN ONLYにして耽美的な「EDOワンダーランド」という虚構の世界で繰り広げられる、男どうしの恋物語。あまりにも美しいボーイズラブな「白鳥の湖」。ゲイフレンドリーな広田レオナさんが監督した最新作です。









『白鳥の湖』といえば、マシュー・ボーン(ゲイの振付家)による男性だけで演じられるバレエ『白鳥の湖』や、男だけで『白鳥の湖』を踊るグランディーバ・バレエ団が有名で、もちろんチャイコフスキーもゲイですから、ある意味、『白鳥の湖』はゲイの鉄板ネタと言えるでしょう(ナタリー・ポートマンが女性どうしのセックス・シーンを演じた『ブラック・スワン』も話題になりましたね)
『お江戸のキャンディー』でも、『白鳥の湖』がBGMとして使われ、物語も『白鳥の湖』をベースにしています(と言っても、『白鳥の湖』は悲劇で終わるもともとの物語のほかに、ハッピーエンドとなるバージョンもあり、映画の終わりがどちらを踏まえたものか、わかりません。見てのお楽しみとなります)。もともとのバレエはこんなストーリーでした。
舞踏会で花嫁を選ぶように言われたジークフリート王子。夜、湖の白鳥たちが月の光を浴びて娘の姿になったのを見て、王子はその中でひときわ美しいオデットに一目惚れし、オデットに舞踏会に来るように告げます。王宮の舞踏会で王子は、黒い衣装で現れた女性をオデットだと思い込み、花嫁として選びますが、それは悪魔が魔法を使ってオデットのように似せていた娘のオディールだったのです…
『お江戸のキャンディー』の舞台設定は、森に囲まれ、男しかいない架空の街「EDOワンダーランド」。そこには吉原のような男娼館…ではなく、クラブみたいなフロアでGOGO BOYのように踊るボーイを指名して一晩いっしょにお酒を飲める「若衆茶屋」というお店があり、毎夜パーティで盛り上がっています。ときには男花魁による花魁道中も行われたりしています。ここで働くボーイがもし客と恋に落ち、恋を成就しようとすれば、お店を「足抜け」し、川に身投げして心中するしかありません。
さて、EDO随一の美貌を誇る白鳥太夫(真山明大)は、寵愛していた男の子が客と心中し、悲しみに暮れていましたが、川べりで手を合わせていたとき、若衆茶屋「飴屋」でNo.1の人気を誇るフリ松と出会い、電撃的に恋に落ちます。が、それを知った将軍(吹越満)は、恋愛禁止令を出し、そして、白鳥にそっくりなお伝(真山さんが黒い衣装で演じています)をフリ松のもとに送り込み…
男だらけのこの世界では、いわゆるイケメンなボーイたちが断然もてはやされているのですが、見た目は二枚目半だけど空手の演武が得意なボーイとか、コメディ役者(竹中直人)などもそれなりに人気を博しています。また、ひげが生えたり、髪がモヒカンだったり、タトゥーが入っていたりするワイルドな男たちも登場します(彼らは「くるうじんぐ」という奇病に冒されているという設定です)。キホン、モテ筋な人は男っぽくて、オネエさんはモテないという設定もリアルです(ただし、男っぽすぎて怖い人はNG)。いろんな意味でゲイの世界に通じるようなところがあって、面白いと思います。
これまで、ノンケの方が映画にゲイを登場させる場合、見た目イマイチなおじさんが女装してゲイバーのママを演じるというステレオタイプだったり、ビジュアルで拒絶反応を起こさせるようなパターンがほとんどでした。が、この作品は、完全に男どうしの愛を賛美し、カッコいいものとして描いているところが素晴らしいと思います。よくぞこんなに!と驚くほど、クオリティの高いイケメンを集めてきたところもスゴいし、ボーイたちのヘッドセットのオシャレさ加減はまるでドラァグクイーンのよう…と思っていたら、クレジットにHossy先生の名前がありました(さすがです!)
それから、ナレーション(現実の声)を桃井かおりさんがつとめているところもポイントです。吹越満さん、竹中直人さんというベテラン俳優陣の演技の妙にもシビれました(大いに楽しませていただきました)
BL好きな方やイケメン好きなゲイの方なら、間違いなくビジュアル面で大満足していただけますし、特にイケメン好きではないゲイの方にとっても、楽しんでいただける作品になっていると思います。

『お江戸のキャンディー』
2014年/日本/監督:広田レオナ/出演:真山明大、高橋ひろ無、橋本淳、南羽翔平、渡辺潤、村上昂史、吹越満、竹中直人ほか/配給:アイエスフィールド、アルゴ・ピクチャーズ/池袋シネマロサほか全国で公開
INDEX
- 何食べにオマージュを捧げつつ、よりゲイのリアルを追求した素敵な漫画『ふたりでおかしな休日を』
- ゲイの青年がベトナムに帰郷し、多様な人々と出会いながら自身のルーツを探るロードムービー『MONSOON モンスーン』
- アウティングのすべてがわかる本『あいつゲイだって ――アウティングはなぜ問題なのか?』
- ホモソーシャルとホモセクシュアル、同性愛嫌悪、女性嫌悪が複雑に絡み合った衝撃的な映画『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
- 世紀の傑作『RENT』を生んだジョナサン・ラーソンへの愛と喝采――映画『tick, tick… BOOM!:チック、チック…ブーン!』
- 空を虹色に塗ろう――トランスジェンダーの監督が世界に贈ったメッセージとは? 映画『マトリックス レザレクションズ』
- 人種や性の多様性への配慮が際立つSATC続編『AND JUST LIKE THAT... セックス・アンド・ザ・シティ新章』
- M検のエロティシズムや切ない男の恋心を描いたヒューマニズムあふれる傑作短編映画『帰り道』
- 『グリーンブック』でゲイを守る用心棒を演じたヴィゴ・モーテンセンが、自らゲイの役を演じた映画『フォーリング 50年間の想い出』
- ショーや遊興の旅一座として暮らすクィアの生き様を描ききったベトナム映画『フウン姉さんの最後の旅路』
- 鬼才ライナー・ベルナー・ファスビンダー監督の愛と性をリアルに描いた映画『異端児ファスビンダー』
- ぜひ映画館で「歴史」を目撃してください――マーベル映画初のゲイのスーパーヒーローが登場する『エターナルズ』
- 等身大のゲイの恋愛を魅力的なキャストで描いたラブリーな映画『クロスローズ』
- リアルなゲイたちの愛や喜び、苦悩、希望、PRIDEに寄り添う、心揺さぶる舞台『すこたん!』
- 愛と笑顔のハッピームービー『沖縄カミングアウト物語〜かつきママのハグ×2珍道中!〜』
- ムーミンの作者、トーベ・ヤンソンの同性愛をありのままに描いた映画『TOVE/トーベ』
- 伝説のデザイナーのゲイライフに光を当てたドラマ『HALSTON/ホルストン』
- 幾多の困難を乗り越えてドラァグクイーンを目指すゲイの男の子の実話に基づいた感動のミュージカル映画『Everybody’s Talking About Jamie ~ジェイミー~』
- ドラァグクイーンに憧れる男の子のミュージカル『Everybody's Talking About Jamie』
- LGBTQ版「チャーリーズ・エンジェル」的な傑作アニメ『Qフォース』がNetflixで配信されました






