REVIEW
ゴージャス&セクシーだけじゃない、感動の『SATC2』
いよいよ待望の『SATC2』が公開されました。4人のキャラのはじけっぷりやとびっきりのゴージャスさはそのままに、世の女性たち(とゲイ)に対する作り手の「思い」がジンジン伝わってくるような、泣ける映画でもありました。
まずはオープニングにヤラれます。いきなりゲイ、ゲイ、ゲイ!な展開に、顔がほころびっぱなし…でもいつの間にか涙が…。マイケル・パトリック・キング監督(彼もゲイです)やサラ・ジェシカ・パーカー(プロデューサーも務めています)からの最高の贈り物に、その心意気に感謝したい気持ちでいっぱいになります。
それから、キャリー、サマンサ、ミランダ、シャーロット、それぞれの人生の行方が、あいかわらずゴージャスに、そして彼女たちらしく、描かれていきます。
キャリーとMr.BIGの幸せな結婚生活にも「2年目の魔物」が訪れます。ミランダは女性シャットアウトな職場でのイライラをつのらせています。シャーロットはナニー(ベビーシッター)とハリーの浮気を心配しながら、2人の娘の子育てに疲れぎみ。サマンサはあいかわらず自由を謳歌しています。
そんな時、ふとした幸運が舞い込み、4人はUAEのアブダビ(ロケはモロッコ)にひとっ飛び。まるで千夜一夜物語のように、アラビアのロレンスのように、王様気分を味わい、夢のようなロマンスや、あっと驚く「運命のいたずら」を体験します。その中で、ニューヨークでの生活がもたらした傷や疲弊を癒していくのです。ミランダとシャーロットがホテルのバーでたまったウップンをはきだしあうシーンは本当に痛快です。「よくぞ言ってくれました!」という世界中の母親たちの拍手が聞こえてくるようでした。
そして、サマンサが今回も、期待に違わぬ「活躍」を見せてくれました。女性の肌の露出が禁じられている中東でエロ全開のサマンサがどんなことになるか…ぜひお楽しみに。ここがまちがいなく、今回のゲイ的見所。キャーキャー言っちゃいます。
他にも見所はいろいろあります。ニューヨークに出てきたばかりの頃の4人の80年代ファッションには思わず笑ってしまいます(一瞬ですので、目をサラのようにして観ましょう)。それと、マイリー・サイラスやペネロペ・クルス、ライザ・ミネリのカメオ出演にも注目! 特にライザ・ミネリの出演シーンは拍手モノ。ゲイへの最高のプレゼントだと思います。これまでのSATCが「恋も仕事も素敵にこなす輝ける独身女性(とゲイ)への応援歌」だとすると、今回のSATC2は「結婚生活に迷いや悩みを持つ女性や子育てに奮闘するすべての女性たち(とゲイ)」への讃歌でした。
ジェニファー・ハドソンとレオナ・ルイスが歌うエンディング・テーマを聴きながら、うっとりするような、心から癒されたような気持ちで、映画の余韻にひたることができると思います。
セックス・アンド・ザ・シティ2
2010年/アメリカ/配給:ワーナー/監督:マイケル・パトリック・キング/出演:サラ・ジェシカ・パーカー、キム・キャトラル、クリスティン・デイヴィス、シンシア・ニクソンほか/6月4日(金)、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
INDEX
- “怪物”として描かれてきたわたしたちの物語を痛快に書き換える傑作アニメーション映画『ニモーナ』
- 映画『怪物』レビュー
- 恋に翻弄されるゲイの愚かで滑稽で愛すべき姿態をオゾン流にキャムプに描いた大傑作メロドラマ『苦い涙』
- ドリアン・ロロブリジーダさん主演の素敵な短編映画『ストレンジ』
- クラシックの世界のリアルを描いた登場人物がクィアだらけの映画『TAR/ター』
- 僕らはこんな漫画をずっと読みたかったんだ…田亀源五郎『魚と水』単行本
- PrEPについて楽しく学べるポップでセクシーな映画『The PrEP Project』
- ゲイカップルが世界の運命を決める――M.ナイト・シャマランの最新作『ノック 終末の訪問者』
- レポート:『OUT IN JAPAN 2023 Spring 写真展 by LESLIE KEE』『アキラ・ザ・ハスラー 「Here’s Your Playground」』
- 高校生のひと夏の恋と成長を描いた青春ドラマにして最高のクィア・コメディ映画『あの夏のアダム』
- 中国で男娼として生きる主人公やその周囲の若者たちの群像をせつなく美しく描いた映画『マネーボーイズ』
- 50代以上のゲイの方たちの食事会の様子を通じて人生を映し出した映画『変わるまで、生きる』
- これまで見捨てられがちだった人々をも包み込んで慈しむような素晴らしいゲイ映画『老ナルキソス』
- 驚くべき魂を持った人間の崇高な最期を描いた映画『ザ・ホエール』
- ゲイと女性2人の美大同級生たちの人生模様を料理とともに描くドラマ『かしましめし』
- ゲイである父、娘たち、元彼の人間模様を描き、人間の「尊厳」や「愛」を問う映画『すべてうまくいきますように』
- レビュー:リン・モンホワン『同棲時間』公演記録映像上映+アフタートーク
- レビュー:リン・モンホワン『赤い風船』『アメリカ時間』
- 大興奮!大傑作!本当に面白いクィアSFアクションムービー『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
- 実にポップでインテレクチュアルでエモーショナルで画期的な『極私的梅毒展』@akta
SCHEDULE
- 05.18An Evening with ALASKA
- 05.18SPECTRUM vol.1
- 05.18GLOBAL KISS
- 05.18PIERROT OKINAWA 19th anniversary
- 05.19OPULENCE Vol.4