REVIEW
映画『マーシャ・P・ジョンソンの生と死』
ストーンウォール50周年を迎えるにあたり、ぜひ知ってほしい真実。ストーンウォールの英雄でありゲイ解放運動の始祖であったマーシャ・P・ジョンソンとシルヴィア・リヴェラの人生。水死体で発見されたマーシャの本当の死因は何だったのか…マーシャを敬愛するトランス女性が真相究明のために今、立ち上がります。

例えば、ハーヴェイ・ミルクが同僚のダン・ホワイトの凶弾に倒れ、悲劇的な死を迎えたことはあまりにも有名です(『ミルク』という映画にもなり、主演のショーン・ペンと、脚本のダスティン・ランス・ブラックがアカデミー賞に輝きました)。しかし、ストーンウォール事件の英雄であり、ゲイ解放運動の始祖であるマーシャ・P・ジョンソンが謎多き不審死を遂げ(おそらくは殺され)、しかし、警察は(多くのトランスジェンダーと同様)動こうとせず、真相が解明されないままであるということは、ほとんど知られていないのではないでしょうか?
この『マーシャ・P・ジョンソンの生と死』は、マーシャ・P・ジョンソンとシルヴィア・リヴェラという偉人の功績を伝えながらも、トランスジェンダーが受けてきた理不尽な差別を浮き彫りにする作品です。ストーンウォール50周年を迎えるにあたり、ぜひ知ってほしい真実が、ここに描かれています。
ドラァグクイーンのマーシャ・P・ジョンソンは、トランス女性のシルヴィア・リヴェラとともに、1969年6月27日深夜(6月28日未明)、ストーンウォール・インで最初の抵抗の口火を切った人たちの一人であり、その翌日にはゲイ解放戦線(GLF)という団体を立ち上げ、ゲイ解放運動の最前線で活動してきた伝説の英雄です。二人は勘当されて行き場を失った有色人種のホームレスのトランスジェンダーを保護するためのシェルターの運営なども始めます。
マーシャは、いつも白い歯を見せてニッコリ笑う、グリニッジ・ビレッジの女神のような存在で、コミュニティの人たちに愛されていました(しかし、当時のアメリカでは、黒人の女装者を雇う職場はありませんでした)
そんなマーシャが1992年7月6日、ハドソン川で遺体として発見されましたが、警察は自殺として片付け、ゲイコミュニティの人々は「マーシャが自殺などするはずがない」と納得がいかず、「警察はちゃんと仕事をしろ」とデモを行いました。しかし、当時、黒人のドラァグクイーンに対して警察は冷たく、真相は解明されないままでした。
一方、シルヴィアは、1973年のニューヨーク・プライドの集会で、白人の中流階級のゲイ&レズビアンが多数を占める聴衆から(トランスジェンダーであるがゆえに)あろうことかブーイングを浴びます…。彼女はもうパレードを歩かない、と言いました。
マーシャが謎の死を遂げてから25年。トランス女性アクティビストのヴィクトリア・クルズは、自分が活動からリタイアする前にどうにかしてマーシャの死の真相を突き止めようと決心しました。そんな活動をはじめたそばから、どんどんトランス女性が殺される事件が発生…。このドキュメンタリーは、ヴィクトリアの姿を追いながら、マーシャやシルヴィアの軌跡にスポットライトを当て、そして、未だに終わらないトランス女性への理不尽な差別の現状を浮き彫りにする作品でした。
こうした作品は、これまで、なかなか日本で観ることができなかったと思います。しかし、Netflixがプロデュースし、デヴィッド・フランスというゲイのジャーナリストが監督したこのドキュメンタリー映画は、日本でも、Netflixが日本語字幕付きで見れるようにしてくれたのです。本当に素晴らしいことです。
ストーンウォール50周年の今年、ぜひ、ご覧ください。

なお、Netflixでは「ル・ポールのドラァグレース」や「クィア・アイ」などをはじめとする海外の人気番組をはじめ、LGBTに関するたくさんの映画やドラマをお楽しみいただけます。

『マーシャ・P・ジョンソンの生と死』
2017年/アメリカ/105分/監督: デヴィッド・フランス/出演: ビクトリア・クルス、マーシャ・P・ジョンソン、シルヴィア・リヴェラほか
INDEX
- ハリー・スタイルズがゲイ役を演じているだけが見どころではない、心揺さぶられる恋愛映画『僕の巡査』
- 劇団フライングステージ 第48回公演『Four Seasons 四季 2022』
- 消防士として働く白人青年と黒人青年のラブ・ストーリーをミュージカル仕立てで描いたゲイ映画『鬼火』(TIFF2022)
- かつてステージで華やかに活躍したトランス女性たちの人生を描いた素敵な映画『ファビュラスな人たち』(TIFF2022)
- 笑えて泣ける名作ゲイ映画『シャイニー・シュリンプス!世界に羽ばたけ』爆誕!
- かぎりなく優しい、心温まる感動のゲイ映画『幸運の犬』
- キース・ヘリングの生涯を余すことなく描いたドキュメンタリー映画『キース・ヘリング~ストリート・アート・ボーイ~』
- ディズニー/ピクサー長編アニメとして初の同性カップルのキスシーンが描かれた記念碑的な映画『バズ・ライトイヤー』
- 実在のゲイの生き様・心意気へのオマージュであり、コミュニティへの愛と感謝が込められた感動作:映画『スワンソング』
- ゲイが女性の体を手に入れたら!? 性をめぐるドタバタを素敵に描いた台湾発のコメディドラマ『美男魚(マーメイド)サウナ』
- 家族のホモフォビアゆえに苦悩しながらも家族愛を捨てられないゲイの男の子の「旅」を描いた映画『C.R.A.Z.Y.』
- SATCのダーレン・スターが手がける40代ゲイのラブコメドラマ『シングル・アゲイン』
- 涙、涙の、あの名作ドラマがついにファイナルシーズンへ…『POSE』シーズン3
- 人間の「尊厳」と「愛」を問う濃密な舞台:PLAY/GROUND Creation『The Pride』
- 等身大のゲイのLove&Lifeをリアルに描いた笑いあり涙ありな映画『ボクらのホームパーティー』(レインボー・リール東京2022)
- 近未来の台北・西門を舞台にしたポップでクィアでヅカ風味なシェイクスピア:映画『ロザリンドとオーランドー』(レインボー・リール東京2022)
- 獄中という極限状況でのゲイの純愛を描いた映画『大いなる自由』(レインボー・リール東京2022)
- トランスジェンダーの歴史とその語られ方について再考を迫るドキュメンタリー映画『アグネスを語ること』(レインボー・リール東京2022)
- 「第三の性」「文化の盗用」そして…1秒たりとも目が離せない映画『フィンランディア』(レインボー・リール東京2022)
- バンドやってる男子高校生たちの胸キュン青春ドラマ『サブライム 初恋の歌』(レインボー・リール東京2022)
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