REVIEW
映画『QUEER×APAC 2019 〜アジア・太平洋短編集〜』(レインボー・リール東京2019)
今年も東京ウィメンズプラザでレインボー・リール東京(東京国際レズビアン&ゲイ映画祭)がスタートしました。『QUEER×APAC 2019 〜アジア・太平洋短編集〜』のレビューをお送りします。

今年も7月5⽇(金)に東京ウィメンズプラザでレインボー・リール東京(東京国際レズビアン&ゲイ映画祭)がスタートしました。6日(土)の『QUEER×APAC 2019 〜アジア・太平洋短編集〜』を観たのですが、雨が降りそうなあいにくの天気だったにもかかわらず、また、割と地味めな作品だったにもかかわらず、結構客席が埋まっていました。上映前には、アルファロメオやアメリカンエクスプレス(NEW!)、TOOT、ミーハングループ(NEW!)、ルピシアなどのCMが流れました。『ロケットマン』の予告編も観れましたよ。
今回観た『QUEER×APAC 2019 〜アジア・太平洋短編集〜』は、アジア・太平洋地域でのLGBT映画の支援・振興を目的として2015年に設立されたAsia Pacific Queer Film Festival Alliance (APQFFA)に加盟する映画祭が推薦する短編映画の中から、「ビタースイート」をテーマに5作品をピックアップしたプログラムです(APACは一般的にアジア太平洋という意味です)。オーストラリア、インド、台湾、インドネシア、韓国のクィア作品(短編)を観ることができました。
感想をお伝えします。
◼︎ブラックリップ
密漁されたアワビを高値で売りさばく中国系移民・ホンが、こっそりアワビを獲っているダイバーの住む海辺の小屋を訪ねると、彼氏との情事の真っ最中(ワーオ)、警察に見つからないように抜け道を教えるという名目で車に同乗したケヴィン(だったかな?)は、もうダイバーとの関係が終わりかけだと言い(だって、セックスが下手なんだもん、みたいな、あけすけな物言い)、まさかの展開に…。なかなか独特で印象的な作品でした。「ケチくさいホモ野郎」と言われて、取引相手をボコボコにするシーンにプライドを感じました。
◼︎ヒジュラーの恋
ヒジュラーは南アジアで広く「第三の性」として認知されているMtFトランスジェンダーで、インドではアウトカーストとして、物乞いや男娼をして暮らしながら、聖者として宗教的儀礼に携わることもあるという存在です。ヒジュラーといえば心が女性で好きになるのは男性というのがマジョリティ(ある意味、ストレートですよね)。でも、この映画の主人公・ラッジョは、女性に恋してしまいます。コミュニティには受け入れられないし、彼女との恋を成就させるのも困難で…とてもせつないです。もし日本にいたら、きっと幸せになれたんじゃないかな、と思ったりしました。
◼︎ジェントルマン・スパ
台湾作品らしく、ゲイであることは何の問題もなく、その先にある話として「モテ」を扱っているのが興味深かったです。太っててダサくてモテない、ゲイ向けスパでもマッサージボーイではなく掃除係しかさせてもらえないハオが、あることがきっかけで、水泳のコーチをしているノンケっぽい青年と知り合い、一度は水泳を習ったりするのですが…。これもまた、せつないお話です。たとえ同性婚が認められても、恋愛で幸せになれるとは限らない、それとこれとは別問題なんですよね。ハオをめっちゃ応援したくなりました。
◼︎最高のプレゼント
これは素敵な作品です。イスフィはFtMトランスジェンダーですが、男の子たちの輪の中に入れてもらえていて、でも、家では女扱いで(飯を作れと父親に小突かれる)、学校と家の間で服を着替えながら生活してて、ニタ(てっきり彼女だと思ってたんですが、解説文によると親友だそう)と一緒に過ごすのが何よりの喜びで、そんな大好きなニタのために、イキなプレゼントをします。大人たちが作った息苦しい社会とは異なる少年少女たちの世界の中にきらめく、宝物のような瞬間。原題の「Gift」はプレゼントのことだけでなく、FtMであるということも含意していると思います。ヴェネチア国際映画祭2018オリゾンティ部門短編映画賞を受賞しています。
◼︎帰り道
これもいいお話です。夜道で痴漢に遭ったことをなかなか親友のウンジェに話せず、いつもの通学路を避けるようになる女子高生ムニョンの葛藤。彼女がレズビアン漫画にのめりこむのは、現実の男という存在への恐怖ゆえのことなのか…。男たちの暴力が跋扈する社会の陰で、少女たちは手を取り合い、絆を深めていく、それがたとえレズビアン的な関係であっても、友情であっても、どちらでも構わない、友愛こそがかけがえのないものだと思わせます。
7月14日の11:30からスパイラルでもう1回、上映されるタイミングがありますので、興味のある方は、ぜひご覧ください。
QUEER×APAC 2019 〜アジア・太平洋短編集〜
ブラックリップ
監督:エイドリアン・チャレラ
2018|オーストラリア|15分|英語、北京語
ヒジュラーの恋
監督:ヴィシャル・ヴァサント・アヒレ
2017|インド|15分|ヒンディー語
ジェントルマン・スパ
監督:ユー・ジーハン
2019|台湾|18分|北京語
最高のプレゼント
監督:アディティア・アフマッド
2018|インドネシア|15分|インドネシア語、マカッサル語
帰り道
監督:オ・スヨン
2017|韓国|27分|韓国語
INDEX
- 異国情緒あふれる街で人と人とが心通わせる様にしみじみと感動させられる名作映画『CROSSING 心の交差点』
- ワム!のマネージャーだったゲイの方が監督した真実のドキュメンタリー『ジョージ・マイケル 栄光の輝きと心の闇』
- アート展レポート:ネルソン・ホー「鏡中花、水中月 - A Mere Reflection of Flower and Moon」
- レポート:グループ展 “Pink”@オオタファインアーツ
- アート展レポート:東京都写真美術館「総合開館30周年記念 遠い窓へ 日本の新進作家 vol.22」
- レポート:國學院大學博物館企画展「性別越境の歴史学-男/女でもあり、女/男でもなく-」
- 実は『ハッシュ!』はゲイカップルに育てられた子どもの物語として構想されていた…25年目の真実が明かされた橋口監督×田辺誠一さんによる映画『ハッシュ!』スペシャルトークイベント
- レポート:短編集「Meet Us Where We’re At」上映会
- レビュー:BSSTO「世界の・周りの・私のジェンダー」を見つめるショートフィルム特集
- たとえ社会の理解が進んでも法制度が守ってくれなかったらこんな悲劇に見舞われる…私たちが直面する現実をリアルに丁寧に描いた映画『これからの私たち - All Shall Be Well』
- おじさん好きなゲイにはとても気になるであろう映画『ベ・ラ・ミ 気になるあなた』
- 韓国から届いた、ひたひたと感動が押し寄せる名作ゲイ映画『あの時、愛を伝えられなかった僕の、3つの“もしも”の世界。』
- 心ふるえる凄まじい傑作! 史実に基づいたクィア映画『ブルーボーイ事件』
- 当事者の真実の物語とアライによる丁寧な解説が心に沁み込むような本:「トランスジェンダー、クィア、アライ、仲間たちの声」
- ぜひ観てください:『ザ・ノンフィクション』30周年特別企画『キャンディさんの人生』最期の日々
- こういう人がいたということをみんなに話したくなる映画『ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男』
- アート展レポート:NUDE 礼賛ーおとこのからだ IN Praise of Nudity - Male Bodies Ⅱ
- 『FEEL YOUNG』で新連載がスタートしたクィアの学生を主人公とした作品『道端葉のいる世界』がとてもよいです
- クィアでメランコリックなスリラー映画『テレビの中に入りたい』
- それはいつかの僕らだったかもしれない――全力で応援し、抱きしめたくなる短編映画『サラバ、さらんへ、サラバ』
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