REVIEW
映画『クィア・ジャパン』(レインボー・リール東京2019)
たくさんのクィア・ピープルが登場するドキュメンタリー『クィア・ジャパン』がレインボー・リール東京でワールドプレミア!ということで、立ち見も出るほどの満席で、トークショーなどもすごい熱気でした。レポートをお届けします。

7月15日(月祝)、レインボー・リール東京2019のクロージング作品として、映画『クィア・ジャパン』がワールドプレミア上映されました。スパイラルホールのチケットカウンター前には、キャンセル待ちの長蛇の列ができ(無事にみなさん、入場できた様子。よかったです)、熱気を感じさせました。
読者の方の中にもインタビューを受けた方がいらっしゃるのではないかと思いますが、日本のクィア・シーンの独特の面白さや素晴らしさを世界に伝えたいと感じたグレアムさんが、約3年をかけて日本各地で取材やインタビューを行い、製作されました。途中、資金が底をつくなどのハードルにも直面しつつも、ようやくこのドキュメンタリー『クィア・ジャパン』が完成をみて、レインボー・リール東京でワールドプレミアを迎えることできました。
日本のことを海外に伝える映画によくある「ゲイシャ・フジヤマ」的なところも当然なく、ただ大量の人々のコメントを並べた浅く広くな構成でもなく、予想以上に日本のクィア・コミュニティの魅力や良いところを深く掘り下げて映像に記録していて、確かにこれは『クィア・ジャパン』だ、と思わせる、骨太な作品になっていました。
世界で活躍するゲイ・エロティック・アーティストの田亀源五郎さん、大駱駝艦で舞踏家として活躍する松田篤史さん、『バディ』『G-men』の創刊に携わった後、HIV陽性者団体「JaNP+」を立ち上げた長谷川博史さん、アーティストでありヘイトスピーチに対抗する活動などにも携わってきたアキラ・ザ・ハスラーさん、ピンクドット沖縄を立ち上げた砂川秀樹さん、世田谷区議の上川あやさん、世界で活躍する写真家のレスリー・キーさん、シモーヌ深雪さん(普通に楽屋でしゃべるのではなく、EXPLOSIONのステージでGOGOさんにセクシーな動きをさせながら語っていたのが素晴らしい)をはじめとするドラァグクィーンのみなさん、熊田プウ助さん、コミュニティセンター「akta」や「dista」のみなさんなど、実に多様で多彩な方々が登場していました。
ぼくらが決して入ることのできないレズビアンのクラブパーティの様子は興味深かったですし(たまたま納涼盆踊り大会みたいな感じでした。アイソで)、デパートメントH(「ヘンタイ」をフィーチャーしたパーティ)で芸術的なパフォーマンスを繰り広げる方々や、レズビアンのアーティスト・のぎすみこさんの作品などにも感動を覚えました。まだまだ知らないことや知らない人がたくさんあるんだなぁと、逆に、日本のLGBTメディアでも全貌を把握しきれていないようなことを、これだけたくさん取材して、映像として記録してくれたということに、感嘆とともに、感謝の念を禁じえませんでした。
21日にLAのOUTFEST(LGBTQの映画祭)で上映されるそうですが、今後、海外でたくさん観ていただいて、日本のクィアの素晴らしさが伝わっていくといいな、と思います。
『クィア・ジャパン』 QUEER JAPAN
監督:グレアム・コルビーンズ
2019|日本|101分|日本語
©2019 QUEER JAPAN


上映後には、出演者および監督さんのトークセッションが行われました。
監督のグレアムさんは、「2012年に初めて日本のLGBTコミュニティのことを知り、田亀さんに会って、もっと深く知るようになり、美しい日本のLGBTコミュニティのことを知らせたいと思いました。100本のインタビューを行いました。これは、私の話ではなく、日本のみなさんの声が主役です。世界にたくさん届くことを願っています」といったメッセージを一生懸命、日本語で読み上げてくれました。
田亀さんが「過去のゲイヒストリーというのは資料に乏しい部分がある。今回、このように、海外の方が、日本のLGBTのオーラルヒストリーを映像で残してくれたのは、画期的で、有意義。世界でいろんな反応を期待する」といったことをおっしゃていて、本当にそうだなぁと、大きく頷きました。
会場から質問もありましたし、会場の観客の方も交えてのフォトセッションも行われ、たくさんのシャッター音が鳴り響いていました。たいへん熱気あふれるトークセッションになりました(個人的には、1997年の映画祭のHIV関連短編集の字幕のボランティアをしていた時に、長谷川さんがこのスパイラルホールの前の方に出てきて「今日の映画は最低です。なぜならHIVを死に至る病として描いているから」と語ったことを突然思い出し、長谷川さんもあの時はまるまると肥えていたのにな…と思ったりして、20年以上経って、姿がだいぶ変わったけど、このように晴れやかにスポットライトを浴びている様に、ちょっと言いようのない思いが湧き上がるのを感じました。シモーヌさんとかも会場に来られていましたが、やはり1997年のコンペティションの審査員を務めていた時に「映像の技術云々よりも、ゲイとしての心意気を感じさせる作品が観たい」とおっしゃって、本当にそうだなぁと深く頷いたことを思い出し、そういうコミュニティにとって重要な方々が『クィア・ジャパン』で一堂に会していたということも感慨深いものがありました)
INDEX
- 人間の「尊厳」と「愛」を問う濃密な舞台:PLAY/GROUND Creation『The Pride』
- 等身大のゲイのLove&Lifeをリアルに描いた笑いあり涙ありな映画『ボクらのホームパーティー』(レインボー・リール東京2022)
- 近未来の台北・西門を舞台にしたポップでクィアでヅカ風味なシェイクスピア:映画『ロザリンドとオーランドー』(レインボー・リール東京2022)
- 獄中という極限状況でのゲイの純愛を描いた映画『大いなる自由』(レインボー・リール東京2022)
- トランスジェンダーの歴史とその語られ方について再考を迫るドキュメンタリー映画『アグネスを語ること』(レインボー・リール東京2022)
- 「第三の性」「文化の盗用」そして…1秒たりとも目が離せない映画『フィンランディア』(レインボー・リール東京2022)
- バンドやってる男子高校生たちの胸キュン青春ドラマ『サブライム 初恋の歌』(レインボー・リール東京2022)
- 雄大な自然を背景に、世界と人間、生と死を繊細に描いた『遠地』(レインボー・リール東京2022)
- 父娘の葛藤を描きながらも後味さわやかな、美しくもドラマチックなロードムービー『海に向かうローラ』
- 「絶対に同性愛者と言われへん」時代を孤独に生きてきた大阪・西成の長谷さんの人生を追った感動のドキュメンタリー「93歳のゲイ~厳しい時代を生き抜いて~」
- アジア系ゲイが主役の素晴らしくゲイテイストなラブコメ映画『ファイアー・アイランド』
- ミュージシャンとしてもゲイとしても偉大だったジョージ・マイケルが生前最後に手がけたドキュメンタリー映画『ジョージ・マイケル:フリーダム <アンカット完全版>』
- プライド月間にふさわしい名作! 笑いあり感動ありのドラァグクイーン演劇『リプシンカ』
- ゲイクラブのシーンでまさかの号泣…ゲイのアフガニスタン難民を描いた映画『FLEE フリー』
- 男二人のロマンス“未満”を美味しく描いた田亀さんの読切グルメ漫画『魚と水』
- LGBTQの高校生のリアリティや喜びを描いた記念碑的な名作ドラマ『HEARTSTOPPER ハートストッパー』
- LGBTQユースの実体験をもとに野原くろさんが描き下した胸キュン青春漫画とリアルなエッセイ『トビタテ!LGBTQ+ 6人のハイスクール・ストーリー』
- 台湾での同性婚実現への道のりを詳細に総覧し、日本でも必ず実現できるはずと確信させてくれる唯一無二の名著『台湾同性婚法の誕生: アジアLGBTQ+燈台への歴程』
- 地下鉄で捨てられていた赤ちゃんを見つけ、家族として迎え入れることを決意したゲイカップルの実話を描いた絵本『ぼくらのサブウェイベイビー』
- 永易さんがLGBTQの様々なトピックを網羅的に綴った事典的な本『「LGBT」ヒストリー そうだったのか、現代日本の性的マイノリティー』
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