REVIEW
抱腹絶倒&号泣! 最高によかった『劇場版 おっさんずラブ 〜LOVE or DEAD〜』
お待たせしました。おっさんずラブ映画版のレビューをお届けします。いやあ、期待以上の傑作でした。ゲラゲラ笑えて、ボロボロ泣ける…誰もが観てよかったと思えるエンタメ作品です。脚本も素晴らしいし、役者さんも素晴らしい。最高!です。

<あらすじ>
春田創一が上海、香港転勤から1年ぶりに日本へ帰ってきた。黒澤武蔵をはじめとする天空不動産第二営業所のメンバーたちが春田を歓迎するなか、天空不動産本社で新たに発足したプロジェクトチーム「Genius7」のメンバーが春田たちの前に現れた。リーダーの狸穴(まみあな)迅は、春田たちに即刻営業所から立ち去るよう言い放つ。狸穴の側に本社に異動した牧凌太の姿を目にして激しく動揺する春田を、新入社員のジャスティスこと山田正義が元気づける。そして、あの時終わったはずだった黒澤の恋心にも再び火がついてしまい……。
あまり詳しく言わないようにしますが、脚本が実に素晴らしかったです。もともと最初からドラマのおっさんずラブを手がけてた人なんですね。なので、基本的な設定や、登場人物のキャラクター(性格)なども少しもブレず、きちんとドラマから続いてて、でも、映画だから映画らしくドカーンと、派手にやってて、面白かったです。
黒澤部長と牧、二人が春田を取り合うだけじゃなくて、今回は新たに、マミアナ(沢村一樹)と、ジャスティス(志尊淳)というクセモノが、二人の恋を邪魔しにかかる存在となります。二人ともベテランだし、二人もともゲイの役を演じたことがあるし。前からいたんじゃないかと思えるくらい、このおっさんずラブの世界に見事にハマってました。
ドラマ版では、第1話、部長が花束を持って「はるたん」に正々堂々とプロポーズするシーンと、第5話辺りでしたっけ?牧がデートの時に「僕と一緒にいるの、恥ずかしいですか?」と悲しそうに言うと、春田が翌朝、会社の朝礼で全員にカミングアウトしたというシーンが本当に好きでした。愛の真っ直ぐさが「ゲイプライド」につながってるところが素晴らしく、感動させられました。
今回も、一点の曇りもなく、愛でした。そして「プライド」でした。ゲイという言葉こそ発せられないものの、「男どうしだと結婚もできないし、子どもも…」と言うセリフが出てきます(ビックリなシチュエーションで)。そして、これでもかという、映画史に残るんじゃないかという、熱い熱い、真っ直ぐな、一生に一度でいいから言われてみたい、本気の愛のセリフ(プロポーズと言ってよいでしょうか)。もうね、泣きましたよね…これ、もし映画館じゃなく一人で観たら(人目を気にしなくてよかったら)号泣してたと思いますマジで…。
で、こんなに素晴らしいゲイ映画が、LGBTの当事者じゃない、ノンケの人たち(アライと言っていいと思います)の中から出てきたっていうのが、実に今の時代を象徴していると思いました。日本も捨てたもんじゃないって思えるし、むしろアライの人たちのほうが先行ってるんですよね。
ラストシーンから考えるに、これはまた続編の映画があるんじゃないかな?と。ちゃんと次につながるような「のりしろ」が感じられます(いやこのまま美しく終わってもいいんですけどね)。また違うパターンで二人を引き裂こうとする男たちが現れて、ドタバタの展開になって、でも最後には…みたいなことを何作でもシリーズでやれると思うんですよね。いくらでも観たいし。
で、ちょっと思ったのは、これ、現代の「寅さん」になるんじゃないかと。笑って泣ける国民的なシリーズものとして何十作もイケるんじゃないかと思います。マドンナならぬイケメンの「間男」が毎回入れ替わり立ち替わりして。そうなったら面白いなぁと思いました。
劇場版 おっさんずラブ 〜LOVE or DEAD〜
2019年製作/114分/G/日本/監督:瑠東東一郎/脚本:徳尾浩司/田中圭、吉田鋼太郎、林遣都、沢村一樹、志尊淳ほか
INDEX
- ベトナムから届いたなかなかに稀有なクィア映画『その花は夜に咲く』
- また一つ、永遠に愛されるミュージカル映画の傑作が誕生しました…『ウィキッド ふたりの魔女』
- ようやく観れます!最高に笑えて泣けるゲイのラブコメ映画『ブラザーズ・ラブ』
- 号泣必至!全人類が観るべき映画『野生の島のロズ』
- トランス女性の生きづらさを描いているにもかかわらず、幸せで優しい気持ちになれる素晴らしいドキュメンタリー映画『ウィル&ハーパー』
- 「すべての愛は気色悪い」下ネタ満載の抱腹絶倒ゲイ映画『ディックス!! ザ・ミュージカル』
- 『ボーイフレンド』のダイ(中井大)さんが出演した『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』第2話
- 安堂ホセさんの芥川賞受賞作品『DTOPIA』
- これまでにないクオリティの王道ゲイドラマ『あのときの僕らはまだ。』
- まるでゲイカップルのようだと評判と感動を呼んでいる映画『ロボット・ドリームズ』
- 多様な人たちが助け合って暮らす団地を描き、世の中捨てたもんじゃないと思えるほのぼのドラマ『団地のふたり』
- 夜の街に生きる女性たちへの讃歌であり、しっかりクィア映画でもある短編映画『Colors Under the Streetlights』
- シンディ・ローパーがなぜあんなに熱心にゲイを支援してきたかということがよくわかる胸熱ドキュメンタリー映画『シンディ・ローパー:レット・ザ・カナリア・シング』
- 映画上映会レポート:【赤色で思い出す…】Day With(out) Art 2024
- 心からの感謝を込めて――【スピンオフ】シンバシコイ物語 –少しだけその先へ−
- 劇団フライングステージ第50回公演『贋作・十二夜』@座・高円寺
- トランス男性を主演に迎え、当事者の日常や親子関係をリアルに描いた画期的な映画『息子と呼ぶ日まで』
- 最高!に素晴らしい多様性エンターテイメント映画「まつりのあとのあとのまつり『まぜこぜ一座殺人事件』」
- カンヌのクィア・パルムに輝いた名作映画『ジョイランド わたしの願い』
- 依存症の問題の深刻さをひしひしと感じさせる映画『ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー』