REVIEW
映画『WEEKEND ウィークエンド』
こんなにも等身大でリアルなゲイの週末の恋を描ききった映画ってあるでしょうか。ロマンティックで切なくて泣ける、美しい作品です。きっと「今年観たなかでいちばんよかった映画」になると思います。

『WEEKEND ウィークエンド』は、アンドリュー・ヘイ監督が2011年にインディーズ(自主製作)映画として製作した長編デビュー作です。ロンドン映画批評家協会賞で新人監督賞、英国インディペンデント映画賞で新人俳優賞(トム・カレン)と製作業績賞を獲得しましたが、例えば『ブロークバック・マウンテン』や『ムーンライト』のような世界的な大ヒットや輝かしい受賞にはつながりませんでした(が、本当に名作なので、アンドリュー・ヘイ監督に声がかかり、ドラマ『Looking/ルッキング』が製作されることになったのです)。日本では、2012年の東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で上映され、静かな感動を呼びましたが、一般公開されることも、DVD化されることもありませんでした。
しかし、ようやくいま、劇場公開されることとなりました。『ゴッズ・オウン・カントリー』のように、きっと、「あの映画は本当によかった」としみじみ語り継がれていくだろう、ゲイ映画の名作ランキングにも挙げられるだろう(海外では実際に挙がっています)名作です。
<あらすじ>
金曜の夜、友人たちとのパーティのあと、ラッセルは一夜限りのパートナーを求めて立ち寄ったゲイバーでグレンと出会い、ともに朝を迎える。ラッセルは仕事(プールの監視員)に出かけるが、グレンは帰りを待っていて、再び二人は、親密な時間を過ごす。ラッセルは孤児院育ちで、その時の仲間と、今も強い絆で結ばれていて、今の生活に満足している。グレンはゲイを侮蔑したり抑圧したりする世のノンケたちに怒りを抱いていて、アートの力でそんな状況を変えていきたいと思っている。そんなことを語りながら、二人は次第に惹かれ合っていくが、グレンは特定のパートナーは持たない主義だと宣言する。しかも、日曜日にはアメリカに留学するために出発するという。二人がつきあうということはありえないのだろうか……
2012年に映画祭で観たときのことは、たった2日間だけど、惹かれあって、でも、一方はアメリカに旅立つことが決まっていて、別れるのがせつなくて、ラストシーンで泣けた、みたいなことしか憶えてなくて、あとは、ラッセルがすごくかわいい(あの笑った時の目尻のシワとか、毛深さとか)っていう印象でした。
7年の年月を経て、2回目に観たとき、この見せ方は本当にうまいなぁとか、ちゃんと裸やセックスも描いてたんだなぁとか、このシーンはゲイの監督じゃなきゃ絶対に撮れないなぁとか、LGBT的な意味でこんなに深いことが描かれていたなんて…などなど、感動することしきりで、あらためて、本当に名作だなぁと再認識させられました。
冒頭、ラッセルがお風呂に入ってて、毛深くて、決してGOGOとかビデオモデルとかじゃないタイプの裸が画面いっぱいに映し出されるところで、すでにこの映画の素晴らしさが約束されている、その辺のノンケ監督が撮ったゲイ映画とは一線を画している、これは僕らの映画であると思えます(ちなみに、一瞬、ちらっと映りますので、瞠目してください)
そのすぐあと、ラッセルがゲイバーに行って、最初、グレンを見て、いいなあと思って、トイレに追いかけて行くのですが、グレンは興味なさそうに去ってしまい、でもラッセルはたまたま隣で用を足していた男の子と目があって、そのあといちゃいちゃしたりもして、次のシーンで、ラッセルの部屋になり、朝、コーヒーをいれてベッドまで持って行くのですが、ベッドにいた彼がこちらを振り返ると、そのいちゃいちゃクンじゃなくてグレンだったっていうのが、遊び心があって実にいいシーンでした。
ラッセルとグレンは、生い立ちやバックボーンも違うし、趣味や価値観も合わないし、結婚に対する考え方も違うし、同じ空間で同じノリで過ごすのもつらそうだし、そもそもグレンは特定のパートナーは作らない主義だと言い張ってるし、おまけにアメリカに行くことが決まってるという、とてもじゃないけど、この先つきあっていけるとは思えない二人なわけです。それでも、恋に落ちちゃうんです。恋の魔法。奇跡です。
二人とも、本当におたがいのことを好きになっちゃったんだなぁっていうのが、セリフじゃなくて、画面から伝わってきます(その表現というか、描き方が、実にいいです。素晴らしいです)
たぶん惚れっぽいし、恋人がほしいと思ってるラッセルと違って、グレンはとんがってる人で、恋人も要らないって肩肘張ってるのに、しかも、すぐに離れ離れになることがわかってるのに、それでも、ラッセルのことを本気で好きになってしまうところがミラクルなのですが、あ、いまヤラれたな…っていう、わかる、惚れちゃうよね〜って思う、ラッセルの内面的な魅力にキュンとするシーンがあります。たぶんですが、スクリーンの中の二人のどちらかに、恋しちゃう人、少なくないと思います。
「自分はラッセルだ」「自分はグレンだ」と感情移入できて、グレンって素敵だな、とか、ラッセルってかわいいな、とか思える人、多いでしょうし、そうでなくても、二人になんとか幸せになってほしいって思えたり、ああ、恋ってこういうことだったよな…って思えたり、そのロマンチックさにヤラれることでしょう。
さりげなく、ラッセルが職場で昼休みに、同僚の、女とどんなセックスをしたみたいな話を聞かされて「やれやれ」みたいになってたり、道端で「あれ絶対ゲイだと思うよ」っていう会話が聞こえてきたり、露骨に「ホモ!」って罵られたり(週末だけで、そんなにあるんですよ)、そういうことがリアルな日常として描かれていて、なぜグレンはそういうノンケたちに「掘り倒すぞゴルァ!」とか突っかかっていったり、アートを志すのか、ということに説得力を与えています。その流れの延長線上に、ちょっと今まで見たことがないような、感動的な名シーンが待っています。
あと、ラッセルの孤児院時代のノンケ友達が、マジ、みんないいやつなんですよね。きっと真実だと思う。世の中にはフォビアでクソなノンケも多いけど、こんなに味方になってくれるノンケもいるんだよっていうことを、ちゃんと描いてます。泣かせます。
この何とも言えない、幸福感のような余韻は何なんだろう…と考えたのですが、少し言語化できるようになってきたので、お伝えすると、GOGO BOYのように特別にカッコいいわけでもキラキラしてるわけでもなく、過剰にオネエでもなく、野郎ぶってるわけでもなく、どこにでもいるような二人のゲイが惹かれ合う様「だけ」を丁寧に描いたこの映画は、言ってみれば、屈託のない世代のゲイである監督から、僕ら(ゲイピープルそのもの)への限りない愛を綴ったラブレターのようなものだと思うのです。大丈夫だよ、信じていいよって。幸せをあきらめないでって。こんなに大きな愛ってある?って思いました。
きっと「今年観たなかでいちばんよかったゲイ映画は『WEEKEND ウィークエンド』」とおっしゃる方がたくさん現れるだろうことは間違いありません。今この自由で寛容な時代に、恋愛することの不自由をヒシヒシと痛感し、「真実の愛」を渇望しているすべての方に観ていただきたい、繊細でロマンティックで美しい、現代の名作ゲイ映画です。
ちなみに、YEBISU GARDEN CINEMAでは、2人で行って、どちらかが50歳以上であれば、夫婦50割を適用していただけます(電話で確認しました)
YEBISU GARDEN CINEMAでは、もうあと1週間くらいで上映が終わってしまうので、ぜひこの週末(ウィークエンド)にお出かけください!
WEEKEND ウィークエンド
2011年/イギリス/97分/監督:アンドリュー・ヘイ/出演:トム・カレン、クリス・ニュー/9月27日、YEBISU GARDEN CINEMA他でロードショー
INDEX
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- 決して同性愛が許されなかった時代に、激しくひたむきに愛し合った高校生たちの愛しくも切ない恋−−台湾が世界に放つゲイ映画『君の心に刻んだ名前』
- 束の間結ばれ、燃え上がる女性たちの真実の恋を描ききった、美しくも切ないレズビアン映画の傑作『燃ゆる女の肖像』
- 東京レインボープライドの杉山文野さんが苦労だらけの半生を語りつくした本『元女子高生、パパになる』
- ハリウッド・セレブたちがすべてのLGBTQに贈るラブレター 映画『ザ・プロム』
- ゲイが堂々と生きていくことが困難だった時代に天才作家として社交界を席巻した「恐るべき子ども」の素顔…映画『トルーマン・カポーティ 真実のテープ』
- ハッピーな気持ちになれるBLドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(チェリまほ)
- 僕らは詩人に恋をする−−繊細で不器用なおっさんが男の子に恋してしまう、切ない純愛映画『詩人の恋』
- 台湾で婚姻平権を求めた3組の同性カップルの姿を映し出した感動のドキュメンタリー『愛で家族に〜同性婚への道のり』
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- 『ルポールのドラァグ・レース』と『クィア・アイ』のいいとこどりをした感動のドラァグ・リアリティ・ショー『WE'RE HERE~クイーンが街にやって来る!~』
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