REVIEW
小さな村のドラァグクイーンvsノンケのラッパー:映画『ビューティー・ボーイズ』(マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル)
『キンキーブーツ』のエッセンスをフランスの田舎町で17分に凝縮させたような、清々しくも美しい、ドラァグ短編映画でした。
![小さな村のドラァグクイーン:映画『ビューティー・ボーイズ』 小さな村のドラァグクイーン:映画『ビューティー・ボーイズ』](assets/images/review/CINEMA2/MyFFF/beautyboys.jpg)
1/15〜2/15にオンラインで開催中の「マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル(MyFFF)」。「若手映画制作者によるフランス映画のショーケース」というコンセプトで実施され、クィア作品もたくさん盛り込まれています。1000円ちょっとで全部まとめて視聴できます。
その「マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル」で配信されている作品の中から、第1弾として、田舎の小さな村でドラァグクイーンとしてステージに上がるゲイの「ビューティー・ボーイズ」と、ホモフォビアむきだしなノンケ男との確執を描いた短編『ビューティー・ボーイズ』をご紹介します。
<あらすじ>
小さな村で生まれ育ち、17歳になったレオとその友人たちは化粧の楽しさに夢中になる。レオの兄ジュールは仲間からバカにされることを恐れ、弟の情熱を理解しようとしない。村でオープンマイクイベントが開催された夜、レオは兄の意見をきかず、ドラァグクイーンに扮してステージに立つ…。
『キンキーブーツ』のエッセンスをフランスの田舎で17分に凝縮させたような、清々しくも美しい作品でした。
牧歌的な地方の村で暮らすゲイの男の子2人が、こんな保守的な村でそんなことしたらどんな目に遭うか…的な不安もありつつ、仲良しの女の子の励ましもあって、ドラァグショーをやろう!と決意します。その初々しさは、すべてのクイーンたちが通ってきた道。ジーンときます。応援したくなります。
彼らをいじめるのが、ラップをやってるドノンケたち。永遠にわかりあえないように見える天敵ですが、幸か不幸か、そのラップの2人組のうちの1人が、ゲイの主人公レオの実の兄で、ただ敵対して終わるわけじゃないところが、感動ポイントです。しかも、兄がめっちゃイケメンです。下手なラップもキュンキュンきます。
2人がショーで使う音楽がトドリック・ホールの「Nails, Hair, Hips, Heels」だったのですが、ドラァグ・ショーといえば、マドンナやシェール、ブリトニー、ビヨンセ、ガガ、アリアナとか、女性の歌が定番でありセオリーだったのに、イマドキのゲイはトドリック・ホールでショーをやるんだなぁ…というところで変に感心してしまいました。
あと、初めてなのにドラァグメイクが異様に上手いのが非現実的で逆によかったです。
ホントにあっさり終わるのですが、ぜひ続きが観たいな、と思わせる映画でした。
ビューティー・ボーイズ
2020年/17分50秒/監督・脚本:Florent Gouëlou/出演:Simon Royer, Marvin Dubart, Mathias Houn, Louise Malek
INDEX
- 東京レインボープライドの杉山文野さんが苦労だらけの半生を語りつくした本『元女子高生、パパになる』
- ハリウッド・セレブたちがすべてのLGBTQに贈るラブレター 映画『ザ・プロム』
- ゲイが堂々と生きていくことが困難だった時代に天才作家として社交界を席巻した「恐るべき子ども」の素顔…映画『トルーマン・カポーティ 真実のテープ』
- ハッピーな気持ちになれるBLドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(チェリまほ)
- 僕らは詩人に恋をする−−繊細で不器用なおっさんが男の子に恋してしまう、切ない純愛映画『詩人の恋』
- 台湾で婚姻平権を求めた3組の同性カップルの姿を映し出した感動のドキュメンタリー『愛で家族に〜同性婚への道のり』
- HIV内定取消訴訟の原告の方をフィーチャーしたフライングステージの新作『Rights, Light ライツ ライト』
- 『ルポールのドラァグ・レース』と『クィア・アイ』のいいとこどりをした感動のドラァグ・リアリティ・ショー『WE'RE HERE~クイーンが街にやって来る!~』
- 「僕たちの社会的DNAに刻まれた歴史を知ることで、よりよい自分になれる」−−世界初のゲイの舞台/映画をゲイの俳優だけでリバイバルした『ボーイズ・イン・ザ・バンド』
- 同性の親友に芽生えた恋心と葛藤を描いた傑作純愛映画『マティアス&マキシム』
- 田亀源五郎さんの『僕らの色彩』第3巻(完結巻)が本当に素晴らしいので、ぜひ読んでください
- 『人生は小説よりも奇なり』の監督による、世界遺産の街で繰り広げられる世にも美しい1日…『ポルトガル、夏の終わり』
- 職場のLGBT差別で泣き寝入りしないために…わかりやすすぎるSOGIハラ解説新書『LGBTとハラスメント』
- GLAADメディア賞に輝いたコメディドラマ『シッツ・クリーク』の楽しみ方を解説します
- カトリックの神父による児童性的虐待を勇気をもって告発する男たちの連帯を描いた映画『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』
- 秀才な女子がクラスの男子にラブレターの代筆を頼まれるも、その相手は実は自分が密かに想いを寄せていた女子だった…Netflix映画『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』
- 映画やドラマでトランスジェンダーがどのように描かれてきたかが本当によくわかるドキュメンタリー『Disclosure トランスジェンダーとハリウッド: 過去、現在、そして』
- 人生のどん底から抜け出す再起の物語−-映画『ペイン・アンド・グローリー』
- マドンナ「ヴォーグ」の時代のボールルームの人々をシビアにあたたかく描く感動のドラマ、『POSE』シーズン2
- 「夢の国」の黄金時代をゲイや女性や有色人種の視点から暴いた傑作ドラマ『ハリウッド』
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