REVIEW
幾多の困難を乗り越えてドラァグクイーンを目指すゲイの男の子の実話に基づいた感動のミュージカル映画『Everybody’s Talking About Jamie ~ジェイミー~』
映画版『Everybody’s Talking About Jamie ~ジェイミー~』がついに公開されました。これは名作。泣けます。勇気を持って自分らしさを貫くことはそれだけで革命的なことなんだと教えてくれる映画でした。
![困難を乗り越えてドラァグクイーンを目指す男の子のミュージカル映画『ジェイミー!』 困難を乗り越えてドラァグクイーンを目指す男の子のミュージカル映画『ジェイミー!』](assets/images/FEATURES/E2021/September/Jamie2.jpg)
映画版『Everybody’s Talking About Jamie ~ジェイミー~』がアマプラでついに公開されました。先にオリジナルの舞台版を観ていて、ストーリーも音楽も何もかも知っていたはずなのに、それでも、何度も泣かされました。これはまぎれもなく、新たなドラァグクイーン映画の名作の誕生です。レビューをお送りします。(後藤純一)
<ストーリー>
英国・シェフィールドに暮らす16歳の高校生ジェイミー・ニューは、将来ドラァグクイーンになることを夢見ているゲイの男の子。母親やその親友・レイ、親友のプリティ、ドラァグ用品店の店主などが応援してくれて、真っ赤なヒールやドレスもプレゼントしてもらい、プロムにドラァグクイーンとして出席しようとしますが、理解のない父親や教師、クラスの男子などから投げつけられた心ない言葉に傷つき、何度となく挫折しそうになります。果たしてジェイミーはドラァグクイーンになれるのか……
とてもよかった。すごくよかったです。
舞台では不可能な、あっという間にメイクが完成するという「魔法」が使えるのも映画のアドバンテージだし、まるでアーティストのMVのような、モノクロ映像のクールな演出も光ってたし、ジェイミーの子ども時代のシーンも観ることができたし、映画だからこそのいいところはたくさんあるのですが、何よりも素晴らしかったのは、監督さんがオリジナルの舞台の良さを踏まえたうえで、さらに厚みを加え、より良くしてくれたことです。
舞台版にはなかったシーンがいろいろ付け加えられていましたが、そこにゲイコミュニティやドラァグカルチャーへのリスペクトが込められていて、胸を打たれました。私が(というか、たぶん世界的にもたくさんの人が)最も偉大なドラァグクイーンと仰ぐリー・バウリーの姿が見えた瞬間、思わず息を呑みました。感動しました。
ジェイミーとお母さんの固い絆、お父さんや学校の先生との確執、親友プリティとの友情、そして宿敵ディーンとのやりとり(ありがちですが、いじめっ子であるディーンがいちばんかわいかったりします)…そうした人間関係のなかでジェイミーが成長していく様が鮮やかに伝わってきました。もちろん、偉大なメンターであるロコ・シャネルやお姉さんクイーンたちも素敵でした。
勇気を持って自分らしさを貫くことは、それだけで革命的なことなんだということを教えてくれる映画でした。そして、人生でいちばん大切なのは愛なのだということも。
こんな名作が映画館で上映されないなんて!と思います。
現代のカミング・オブ・エイジ・ムービーとして、LGBTQ教育の教材として、子どもから大人まで観て楽しめる、感動的できる作品なのに…もったいない。全国の学校で上映したらいいのでは?と思ったりします(PTAから苦情が来るでしょうか?)
エンドロールはぜひ観てください。ジーンときます。
Everybody’s Talking About Jamie ~ジェイミー~
2021年/英国・米国/115分/監督:ジョナサン・バターレル/出演:マックス・ハーウッド, サラ・ランカシャー, ローレン・パテルほか
Amazon Prime Videoにて配信中
INDEX
- 獄中という極限状況でのゲイの純愛を描いた映画『大いなる自由』(レインボー・リール東京2022)
- トランスジェンダーの歴史とその語られ方について再考を迫るドキュメンタリー映画『アグネスを語ること』(レインボー・リール東京2022)
- 「第三の性」「文化の盗用」そして…1秒たりとも目が離せない映画『フィンランディア』(レインボー・リール東京2022)
- バンドやってる男子高校生たちの胸キュン青春ドラマ『サブライム 初恋の歌』(レインボー・リール東京2022)
- 雄大な自然を背景に、世界と人間、生と死を繊細に描いた『遠地』(レインボー・リール東京2022)
- 父娘の葛藤を描きながらも後味さわやかな、美しくもドラマチックなロードムービー『海に向かうローラ』
- 「絶対に同性愛者と言われへん」時代を孤独に生きてきた大阪・西成の長谷さんの人生を追った感動のドキュメンタリー「93歳のゲイ~厳しい時代を生き抜いて~」
- アジア系ゲイが主役の素晴らしくゲイテイストなラブコメ映画『ファイアー・アイランド』
- ミュージシャンとしてもゲイとしても偉大だったジョージ・マイケルが生前最後に手がけたドキュメンタリー映画『ジョージ・マイケル:フリーダム <アンカット完全版>』
- プライド月間にふさわしい名作! 笑いあり感動ありのドラァグクイーン演劇『リプシンカ』
- ゲイクラブのシーンでまさかの号泣…ゲイのアフガニスタン難民を描いた映画『FLEE フリー』
- 男二人のロマンス“未満”を美味しく描いた田亀さんの読切グルメ漫画『魚と水』
- LGBTQの高校生のリアリティや喜びを描いた記念碑的な名作ドラマ『HEARTSTOPPER ハートストッパー』
- LGBTQユースの実体験をもとに野原くろさんが描き下した胸キュン青春漫画とリアルなエッセイ『トビタテ!LGBTQ+ 6人のハイスクール・ストーリー』
- 台湾での同性婚実現への道のりを詳細に総覧し、日本でも必ず実現できるはずと確信させてくれる唯一無二の名著『台湾同性婚法の誕生: アジアLGBTQ+燈台への歴程』
- 地下鉄で捨てられていた赤ちゃんを見つけ、家族として迎え入れることを決意したゲイカップルの実話を描いた絵本『ぼくらのサブウェイベイビー』
- 永易さんがLGBTQの様々なトピックを網羅的に綴った事典的な本『「LGBT」ヒストリー そうだったのか、現代日本の性的マイノリティー』
- Netflixで今月いっぱい観ることができる貴重なインドのゲイ映画:週末の数日間を描いたロマンチックな恋愛映画『ラ(ブ)』
- トランスジェンダーのリアルを描いた舞台『イッショウガイ』の記録映像が期間限定公開
- 宮沢賢治の保阪嘉内への思いをテーマにしたパフォーマンス公演「OM-2×柴田恵美×bug-depayse『椅子に座る』-Mの心象スケッチ-」
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