REVIEW
幾多の困難を乗り越えてドラァグクイーンを目指すゲイの男の子の実話に基づいた感動のミュージカル映画『Everybody’s Talking About Jamie ~ジェイミー~』
映画版『Everybody’s Talking About Jamie ~ジェイミー~』がついに公開されました。これは名作。泣けます。勇気を持って自分らしさを貫くことはそれだけで革命的なことなんだと教えてくれる映画でした。
映画版『Everybody’s Talking About Jamie ~ジェイミー~』がアマプラでついに公開されました。先にオリジナルの舞台版を観ていて、ストーリーも音楽も何もかも知っていたはずなのに、それでも、何度も泣かされました。これはまぎれもなく、新たなドラァグクイーン映画の名作の誕生です。レビューをお送りします。(後藤純一)
<ストーリー>
英国・シェフィールドに暮らす16歳の高校生ジェイミー・ニューは、将来ドラァグクイーンになることを夢見ているゲイの男の子。母親やその親友・レイ、親友のプリティ、ドラァグ用品店の店主などが応援してくれて、真っ赤なヒールやドレスもプレゼントしてもらい、プロムにドラァグクイーンとして出席しようとしますが、理解のない父親や教師、クラスの男子などから投げつけられた心ない言葉に傷つき、何度となく挫折しそうになります。果たしてジェイミーはドラァグクイーンになれるのか……
とてもよかった。すごくよかったです。
舞台では不可能な、あっという間にメイクが完成するという「魔法」が使えるのも映画のアドバンテージだし、まるでアーティストのMVのような、モノクロ映像のクールな演出も光ってたし、ジェイミーの子ども時代のシーンも観ることができたし、映画だからこそのいいところはたくさんあるのですが、何よりも素晴らしかったのは、監督さんがオリジナルの舞台の良さを踏まえたうえで、さらに厚みを加え、より良くしてくれたことです。
舞台版にはなかったシーンがいろいろ付け加えられていましたが、そこにゲイコミュニティやドラァグカルチャーへのリスペクトが込められていて、胸を打たれました。私が(というか、たぶん世界的にもたくさんの人が)最も偉大なドラァグクイーンと仰ぐリー・バウリーの姿が見えた瞬間、思わず息を呑みました。感動しました。
ジェイミーとお母さんの固い絆、お父さんや学校の先生との確執、親友プリティとの友情、そして宿敵ディーンとのやりとり(ありがちですが、いじめっ子であるディーンがいちばんかわいかったりします)…そうした人間関係のなかでジェイミーが成長していく様が鮮やかに伝わってきました。もちろん、偉大なメンターであるロコ・シャネルやお姉さんクイーンたちも素敵でした。
勇気を持って自分らしさを貫くことは、それだけで革命的なことなんだということを教えてくれる映画でした。そして、人生でいちばん大切なのは愛なのだということも。
こんな名作が映画館で上映されないなんて!と思います。
現代のカミング・オブ・エイジ・ムービーとして、LGBTQ教育の教材として、子どもから大人まで観て楽しめる、感動的できる作品なのに…もったいない。全国の学校で上映したらいいのでは?と思ったりします(PTAから苦情が来るでしょうか?)
エンドロールはぜひ観てください。ジーンときます。
Everybody’s Talking About Jamie ~ジェイミー~
2021年/英国・米国/115分/監督:ジョナサン・バターレル/出演:マックス・ハーウッド, サラ・ランカシャー, ローレン・パテルほか
Amazon Prime Videoにて配信中
INDEX
- 米史上初のゲイの大統領になるか?と騒がれた人物の素顔に迫る映画『ピート市長 〜未来の勝利宣言〜』
- 1920年代のベルリンに花開いたクィアの自由はどのように奪われたのか――映画『エルドラド: ナチスが憎んだ自由』
- クィアが「体感」できる名著『慣れろ、おちょくれ、踏み外せ』
- LGBTQは登場しないものの素晴らしくキャムプだったガールズムービー『バービー』
- TORAJIRO 個展「UNDER THE BLUE SKY」
- ただのラブコメじゃない、現代の「夢」を見せてくれる感動のゲイ映画『赤と白とロイヤルブルー』
- 台湾映画界が世界に送る笑えて泣ける“同性冥婚”エンタメ映画『僕と幽霊が家族になった件』
- 生き直し、そして希望…今まで観たことのなかったゲイ・ブートキャンプ・ムービー『インスペクション ここで生きる』
- あらゆる方に読んでいただきたいトランスジェンダーに関する決定版的な入門書『トランスジェンダー入門』
- 世界をトリコにした名作LGBTQドラマの続編が配信開始! 『ハートストッパー』シーズン2
- 映画『CLOSE クロース』レビュー
- 映画『ローンサム』(レインボー・リール東京2023)
- 映画『ココモ・シティ』(レインボー・リール東京2023)
- FANTASTIC ASIA! ~アジア短編プログラム~(レインボー・リール東京2023)
- 映画『マット』(レインボー・リール東京2023)
- 映画『秘密を語る方法』(レインボー・リール東京2023)
- 映画『クリッシー・ジュディ』(レインボー・リール東京2023)
- 映画『孔雀』(レインボー・リール東京2023)
- クィアな若者がコスメ会社で働きながら人生を切り開いていくコメディドラマ『グラマラス』
- 愛という生地に美という金糸で刺繍を施したような、「心の名画」という抽斗に大切にしまっておきたい宝物のような映画『青いカフタンの仕立て屋』
SCHEDULE
- 05.05“AVALON -RESCUE-”
- 05.05BLACK SAFARI
- 05.05よつんばいナイト8歩目
- 05.05GLOBAL KISS
- 05.06huGe+Xposure – ふんどし祭り –