REVIEW
バンドやってる男子高校生たちの胸キュン青春ドラマ『サブライム 初恋の歌』(レインボー・リール東京2022)
第30回レインボー・リール東京、シネマート新宿にて開催中です。7月11日(火)は高校でバンドを組んでる男の子たちの胸キュン青春ドラマ『サブライム 初恋の歌』が上映されました。
アルゼンチンから届いた映画『サブライム 初恋の歌』は、海辺の小さな町でバンドをやってる男の子たちの青春ボーイズ・ムービーであり、思春期の性の目覚めや揺れ動く気持ちを丁寧に繊細に描いた作品です。さわやかな後味。ハッピーな気持ちになれます。
ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門出品作だそうです。
<あらすじ>
海辺の小さな町に住む16歳のマヌエルは、親友たちと組んだロックバンドでベースを弾いている。バンドのメンバーの一人であるフェリペとは、幼い頃から固い友情で結ばれていた。ガールフレンドとの初体験を迎えようとした時、マヌエルはフェリペに対する友情とは異なる気持ちに気づくが、関係が壊れることを恐れて一歩を踏み出せず…。
こんなさわやかな青春ドラマ、ひさしぶりに観たかも!と思いました。
Z世代よりも若い、ゲイに対する偏見がほとんどない、イマドキの男の子たちを描いたハッピーなボーイズ・ムービー。バンドの曲がとても良いので(そんなにハードじゃない、耳なじみのよい曲です。フェリペが作る曲はコード進行がザ・キュアーの「Boys Don't Cry」に似てると思ったり)、超ロングバージョンのミュージック・ビデオを観ているような感覚にもなりました。
高校の同級生でバンドを組んでる4人の男の子たち、マヌエル(Ba)、フェリペ(Gt,Cho)、フラン(Vo,Gt)、マウロ(Dr)は、バンドの練習のとき以外でも浜辺でサッカーに興じたり、世界中どこにでもいるような、青春真っ盛りな男の子たちです。
主人公のマヌエルは子どもの頃からフェリペのことが大好きで、二人は幼なじみとして一緒に成長し、他愛もないことを言い合う気のおけない親友です。二人はそれぞれに彼女がいて、森の中に秘密基地のような場所を作って女の子との初セックスを計画します。でも、マヌエルはうまくできず…やがて、本当に好きなのはフェリペだと気づくのです。
起承転結の「転」に行くまでが結構長くて、前半はバンドのお話がメインだったかも。いい曲を書けずに悩んだり。ボーカル(フロントマン)のフランがちょっとフェリペと対立したり。男の子バンドにありがちなお話です。マヌエルの両親が仲が良くなくて、とか、学校の授業のシーンなども、ごくありふれた感じです。
一瞬、フランがマヌエルとフェリペの仲の良さを「結婚したらどう?」と茶化すシーンがあって、ホモフォビックだな…と思ったのですが、よく考えると、「お前らホモか」ではなく、「結婚したらどう?」というセリフだったので、同性婚が実現して12年も経っている(彼らが物心ついた時にはすでに同性どうしの結婚が当たり前になっている)ことを考え合わせると、性別関係なく単に仲の良さをからかった(あるいはちょっと嫉妬した)と受け取ることもできると思いました。
「転」以降のお話は伏せますが、ちょっとハラハラさせつつ、なんだかんだ言ってみんないい人ばかりで、ハートウォーミングで「やさしい世界」でした。ちょっと泣けて、「こういう世界になるといいよね」という願いが込められているようなハッピーエンディングで、後味さわやかでした。
ちなみに原題の「sublime」とは、荘厳な美しさ、崇高な美という意味だそう。ちょっと大げさな気もしますが、たしかに彼らの友愛や、親友を傷つけまいと思いやる姿はとても美しいと感じました。
重苦しさや難しさが全くなく、深く考えずに観て楽しめる作品です。蒸し暑い今の季節に観るにはピッタリな映画かも?
このあと、17日(日)21:05からスパイラルホールで、また、大阪では19日19:30からシネマート心斎橋で上映されます。
サブライム 初恋の歌
英題:Sublime
監督:マリアーノ・ビアシン
2022|アルゼンチン|100分|スペイン語
[ドラマ] [青春] [ロマンス] / [G]
後援:アルゼンチン共和国大使館/インスティトゥト・セルバンテス東京
7月12日(火)18:50- @シネマート新宿
7月17日(日)21:05- @スパイラルホール
7月19日(火)19:30- @シネマート心斎橋
INDEX
- ゲイが女性の体を手に入れたら!? 性をめぐるドタバタを素敵に描いた台湾発のコメディドラマ『美男魚(マーメイド)サウナ』
- 家族のホモフォビアゆえに苦悩しながらも家族愛を捨てられないゲイの男の子の「旅」を描いた映画『C.R.A.Z.Y.』
- SATCのダーレン・スターが手がける40代ゲイのラブコメドラマ『シングル・アゲイン』
- 涙、涙の、あの名作ドラマがついにファイナルシーズンへ…『POSE』シーズン3
- 人間の「尊厳」と「愛」を問う濃密な舞台:PLAY/GROUND Creation『The Pride』
- 等身大のゲイのLove&Lifeをリアルに描いた笑いあり涙ありな映画『ボクらのホームパーティー』(レインボー・リール東京2022)
- 近未来の台北・西門を舞台にしたポップでクィアでヅカ風味なシェイクスピア:映画『ロザリンドとオーランドー』(レインボー・リール東京2022)
- 獄中という極限状況でのゲイの純愛を描いた映画『大いなる自由』(レインボー・リール東京2022)
- トランスジェンダーの歴史とその語られ方について再考を迫るドキュメンタリー映画『アグネスを語ること』(レインボー・リール東京2022)
- 「第三の性」「文化の盗用」そして…1秒たりとも目が離せない映画『フィンランディア』(レインボー・リール東京2022)
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- 雄大な自然を背景に、世界と人間、生と死を繊細に描いた『遠地』(レインボー・リール東京2022)
- 父娘の葛藤を描きながらも後味さわやかな、美しくもドラマチックなロードムービー『海に向かうローラ』
- 「絶対に同性愛者と言われへん」時代を孤独に生きてきた大阪・西成の長谷さんの人生を追った感動のドキュメンタリー「93歳のゲイ~厳しい時代を生き抜いて~」
- アジア系ゲイが主役の素晴らしくゲイテイストなラブコメ映画『ファイアー・アイランド』
- ミュージシャンとしてもゲイとしても偉大だったジョージ・マイケルが生前最後に手がけたドキュメンタリー映画『ジョージ・マイケル:フリーダム <アンカット完全版>』
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- ゲイクラブのシーンでまさかの号泣…ゲイのアフガニスタン難民を描いた映画『FLEE フリー』
- 男二人のロマンス“未満”を美味しく描いた田亀さんの読切グルメ漫画『魚と水』
- LGBTQの高校生のリアリティや喜びを描いた記念碑的な名作ドラマ『HEARTSTOPPER ハートストッパー』
SCHEDULE
- 01.17しゃぶしゃぶガールズ
- 01.18令和のぺ祭 -順平 BIRTHDAY PARTY-
- 01.18GLOBAL KISS