REVIEW
近未来の台北・西門を舞台にしたポップでクィアでヅカ風味なシェイクスピア:映画『ロザリンドとオーランドー』(レインボー・リール東京2022)
近未来の台北・西門を舞台に、シェイクスピアの喜劇『お気に召すまま』をオール女性キャストで大胆に脚色した作品です。ファンタジックでポップでキュートでクィアな素敵映画でした。

近未来の台北・西門を舞台に、シェイクスピアの喜劇『お気に召すまま』をオール女性キャストで大胆に脚色した作品です。男性の役をボーイッシュな女性が演じている、タカラヅカのような魅惑のワールドになっていて、第30回レインボー・リール東京のクロージングにふさわしい、とてもファンタジックでポップで素敵な映画でした。監督は、第18回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で上映された『キャンディレイン』のチェン・ホンイー監督です。
<あらすじ>
近未来の台北・西門町。行方不明の父親を捜すために外国から戻ったロザリンドは、レーシングドライバーのオーランドーと出会い、互いにひと目惚れ。しかし、真実の愛を信じていないロザリンドは男性に変装し、オーランドーの気持ちを試すことに…。



こんなに素敵な女性の俳優さんたちがたくさん…そして近未来感、ポップなデザイン…なんてかわいい、台湾すごい!と思いました。
主要キャストを全員女性(に見える方)たちが演じているところがポイントです。ショートヘアで髭を描いてたりもする「男役」の方がたくさん登場します。なので、宝塚の舞台を観ているときのような多幸感があります。原作の『お気に召すまま』と同様、主役のロザリンドが男装してオーランドーの前に現れ、オーランドーは男装したロザリンドの正体に気づかず、”彼”に恋の告白の稽古相手になってもらったりするシーンがあるのですが、そのジェンダーの撹乱の様や、オーランドーが「君が男でも構わない」と言いはじめるセクシュアリティの自由さが、この作品のクィア的な視点での最大の見どころだと思います(ちなみにエンドロールで流れる歌も、男も女も関係ないという歌詞でした)
「シェイクスピアとその時代に舞台に上がれなかった女性たちへ捧げる」という文言が最後に映し出されました。この作品は、シェイクスピアへのオマージュであるとともに、(日本でも明治時代まで女性が舞台に上がることはできませんでしたが)かつて舞台に上がれなかった女性たちへのオマージュでもあったのです。
なんとなく台湾って垢抜けてないイメージがあるのではないかと思うのですが、この作品にはビックリするくらい美しい方たちが多数、登場しますし、映像も素晴らしくハイクオリティ、セットも素晴らしくポップでオシャレで、台湾すごい!と思わせます。監督のチェン・ホンイーがもともとCMディレクターで数々の広告賞に輝いてるような方だそうで、なるほどな、と。とてもお金がかかってる(ように見える)作品でした。
西門を舞台にしたのは、西門が台北の原宿と呼ばれるような若者が集まるオシャレタウンだからということもあるでしょうが、もちろん、紅楼劇場のゲイバー街も擁する台湾のLGBTQのシーンの中心地でもあるということを踏まえているはずです。原作の「アーデンの森」が西門になっていて、そこに入るとインターネットが使えない別世界が現出するという趣向でした。「アーデンの森」西門に入ったときの、街行く人たちがみんな女性や、男装した女性(トランスジェンダーかも)ばかりのキラキラしたシーンは、楽園感がありました。
西門の駅前だけでなく、峨眉街の裏路地とかも出てきて、郷愁と言ったら変ですが、懐かしい!台北また行きたい!台湾LOVE!(早く台湾に行きたいわん)という気持ちにもさせるような映画でした。
ロザリンドとオーランドー
英題:As We Like It
原題:揭大歡喜
2021年/台湾/107分/監督:チェン・ホンイー(陳宏一)、ウェイ・インチェン(魏瑛娟)
INDEX
- 同性婚実現への思いをイタリアらしいラブコメにした映画『天空の結婚式』
- 女性にトランスした父親と息子の涙と歌:映画『ソレ・ミオ ~ 私の太陽』(マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル)
- 女性差別と果敢に闘ったおばあちゃんと、ホモフォビアと闘ったゲイの僕との交流の記録:映画『マダム』(マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル)
- 小さな村のドラァグクイーンvsノンケのラッパー:映画『ビューティー・ボーイズ』(マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル)
- 世界エイズデーシアター『Rights,Light ライツライト』
- 『逃げ恥』新春SPが素晴らしかった!
- 決して同性愛が許されなかった時代に、激しくひたむきに愛し合った高校生たちの愛しくも切ない恋−−台湾が世界に放つゲイ映画『君の心に刻んだ名前』
- 束の間結ばれ、燃え上がる女性たちの真実の恋を描ききった、美しくも切ないレズビアン映画の傑作『燃ゆる女の肖像』
- 東京レインボープライドの杉山文野さんが苦労だらけの半生を語りつくした本『元女子高生、パパになる』
- ハリウッド・セレブたちがすべてのLGBTQに贈るラブレター 映画『ザ・プロム』
- ゲイが堂々と生きていくことが困難だった時代に天才作家として社交界を席巻した「恐るべき子ども」の素顔…映画『トルーマン・カポーティ 真実のテープ』
- ハッピーな気持ちになれるBLドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(チェリまほ)
- 僕らは詩人に恋をする−−繊細で不器用なおっさんが男の子に恋してしまう、切ない純愛映画『詩人の恋』
- 台湾で婚姻平権を求めた3組の同性カップルの姿を映し出した感動のドキュメンタリー『愛で家族に〜同性婚への道のり』
- HIV内定取消訴訟の原告の方をフィーチャーしたフライングステージの新作『Rights, Light ライツ ライト』
- 『ルポールのドラァグ・レース』と『クィア・アイ』のいいとこどりをした感動のドラァグ・リアリティ・ショー『WE'RE HERE~クイーンが街にやって来る!~』
- 「僕たちの社会的DNAに刻まれた歴史を知ることで、よりよい自分になれる」−−世界初のゲイの舞台/映画をゲイの俳優だけでリバイバルした『ボーイズ・イン・ザ・バンド』
- 同性の親友に芽生えた恋心と葛藤を描いた傑作純愛映画『マティアス&マキシム』
- 田亀源五郎さんの『僕らの色彩』第3巻(完結巻)が本当に素晴らしいので、ぜひ読んでください
- 『人生は小説よりも奇なり』の監督による、世界遺産の街で繰り広げられる世にも美しい1日…『ポルトガル、夏の終わり』
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