REVIEW
かぎりなく優しい、心温まる感動のゲイ映画『幸運の犬』
ちくわフィルムの最新作『幸運の犬』のレビューをお届けします。人生何もいいことがなかったと嘆くヒゲポンに訪れる、奇跡のような、せつないラブストーリー。豪華でセクシーなキャストがこの素敵なお話を彩ります。
ちくわフィルムの最新作『幸運の犬』は、とても優しい、心温まる、感動的な作品です。まちょ監督がついに本気出した!と思いました。ふつうに映画館で上映されそうな作品。1時間弱の中編です。
冒頭の、仕事もうまくいかない、46年間彼氏ができたことがない、せめてGOGOみたいなイケメンとキスしたい人生だった…と絶望するヒゲポンさんの悲哀を描いたシーンには、胸を突かれました。ヒゲポンさんだからこそのリアリティ。真に迫るものがありました(でも、ヒゲポンさんがモテないかっていうと決してそうではなく、ヒゲポンさんのことがタイプっていう人も多いでしょうし、ちゃんとセクシーさも持ち合わせた方なので、そういう意味でも、この映画はヒゲポンさんじゃないと成立しないだろうなと思いました)
「幸運の犬」が現れるところから、この映画、急にファンタジーな展開に?と思わせます。でもそんなに超常現象ってほどでもなく。お守りみたいな感じです。
ストーリーにはあまり触れませんが、「幸運の犬」のおかげで(本当は「幸運の犬」がいなくても起こったかもしれませんが)ヒゲポンに奇跡が訪れ(ラブストーリーは突然に)、恋が芽生える、しかし、イケメンの彼はちょっと困難を抱えていて…というせつないお話です。
ロマンスが中心ではありますが、ヒゲポンさんには大吉くんというとてもいい友達がいて、いざというとき助けてくれるし、浅草のバー「おれん家」のマスター(千葉優人さんが演じています。セクシーな格好での接客、素敵です)もいろいろサポートしてくれます。ヒゲポンさんがちゃんとした人で、ゲイコミュニティに属しているからこそ、奇跡も訪れるのです。
ゲイがみんなハッピーだったりシャイニーだったりするわけじゃなくて、特にお金や名声があるわけでもなく、特にモテたりちやほやされることもなく、特に友達が多いわけでもない方たち、何らかの病気や障害を患っている方たち、いろんな事情を抱えた方たちもいて(そういう方が、このコロナ禍の間、ゲイバーにも行けず、人と会うこともなく、部屋にずっと独りでいたりすると、メンタル的にしんどかったのでは…と心配していました)、きっとそういう方たちは、ヒゲポンというキャラクターに自分を重ね合わせて、応援したり、奇跡を願ったりするんじゃないかと思います。
「運命の恋人」TENさん、あの役にすごくハマってました。脚本、当て書きなのかな?と思うくらい。
セクシーシーンもあって、ファン必見だと思いました。
TENさんだけでなく、フォトジェニックなキャストの多さが光ってました。
千葉優人さんのようなGOGOさんもそうですし、「ねむくま」のアイドル・しゅんくんも、ゲンキマンも、大吉さんも、雄太さんも、岳さんも、荒川さん、masaさんなども登場してました。初登場の風太さんたちもかわいかったです。個人的にはちくわフィルムモデルの中で一押しの栗田さんがカメオ出演してたのが喜びでした(ちくわフィルムのTwitterを見てると、どんどん新たなセクシーキャストが登場してますね。高まる…)
TENさん、しゅんくん、雄太さんの兄弟が全員タンクトップっていうのが素敵でしたね(セクシーかつ面白い)
おやびんさんと一緒に「もふもふ」の猛虎さんがチンピラの役で登場してたのもウケました。いろいろ達者ですね。
そして、DICEさんの「なきむし」という主題歌が、とても沁みました。音楽を作るってなかなか難しいことですが、ちゃんと映画の世界観に沿ったオリジナルの主題歌を作られているのがスゴいと思います。いかにこの作品に思いを込めているか、ということだと思います。
ちくわフィルムの映画って、アイドル化してるキャストの方たちのあれこれを楽しむ部分も強く(ファンダムのための作品)、だからこそタウンハウスとかでイベントをやって、っていうことがセットになると思うのですが、今回の『幸運の犬』はそういう部分もありつつ、どなたがご覧になっても映画として楽しめるようなものになっていたと思います。
次の作品も楽しみです!
映画『幸運の犬』
マイファンズにて配信中
INDEX
- 40歳のゲイの方が養護施設で育った複雑な生い立ちの20歳の男の子を養子に迎え入れ、新しい家族としての生活を始める姿をとらえたドキュメンタリー映画『二十歳の息子』
- 貧しい家庭で妹の面倒を見る10歳のゲイの男の子が新しい世界を切り開こうともがき、成長していく様を描いた映画『揺れるとき』
- ゲイコミュニティへのリスペクトにあふれ、あらゆる意味で素晴らしい、驚異的な名作『エゴイスト』
- ドラァグクイーンの夢のようなロマンスを描いたフランス発の短編映画『パロマ』
- 文藝賞受賞、芥川賞候補の注目作――ブラックミックスのゲイたちによる復讐を描いた小説『ジャクソンひとり』
- ドラァグクイーンによる朗読劇『QUEEN's HOUSE〜あなたの知らないもうひとつの話〜TOKYO』
- 伝説のゲイ・アーティストの大回顧展『アンディ・ウォーホル・キョウト』
- 謎めいたゲイ・アーティストの素顔に迫るドキュメンタリー映画『アンディ・ウォーホル:アートのある生活』
- 『ボヘミアン・ラプソディ』の感動再び… 映画『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』
- 近年稀に見る号泣必至の名作ゲイ映画『世界は僕らに気づかない』
- ぼくらはシンコイに恋をする――『シンバシコイ物語』
- ゲイカップルやたくさんのセクシャルマイノリティの姿をリアルに描いた優しさあふれる群像劇『portrait(s)』ほか
- TheStagPartyShow movies『美しい人』『キミノコエ』
- Visual AIDS短編集『Being & Belonging』
- これ以上ないくらいヘビーな経験をしてきたゲイの方が身近な人たちにカミングアウトする姿を追ったドキュメンタリー映画『カミングアウト・ジャーニー』
- 料理を通じて惹かれ合っていく二人の女性を描いたドラマ『作りたい女と食べたい女』
- ハリー・スタイルズがゲイ役を演じているだけが見どころではない、心揺さぶられる恋愛映画『僕の巡査』
- 劇団フライングステージ 第48回公演『Four Seasons 四季 2022』
- 消防士として働く白人青年と黒人青年のラブ・ストーリーをミュージカル仕立てで描いたゲイ映画『鬼火』(TIFF2022)
- かつてステージで華やかに活躍したトランス女性たちの人生を描いた素敵な映画『ファビュラスな人たち』(TIFF2022)
SCHEDULE
- 09.20PINKHOUSE X vol.157 -25th ANNIVERSARY PARTY-
- 09.21DAYDREAM
- 09.21ジューシィー!
- 09.21デブも専ナイト -15th Anniversary-
- 09.21前髪系ナイト in OSAKA