REVIEW
ドラァグクイーンの夢のようなロマンスを描いたフランス発の短編映画『パロマ』
マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバルでオンライン配信中の短編映画で、ドラァグクイーンの夢のようなロマンスを描いた素敵な作品です。

男として男を愛するゲイの世界にあって、ドラァグクイーンになるということは「モテ」をあきらめるということに等しいと言っても過言ではありません。ある意味、茨の道です。(私は「時々女装してクラブでショーをやってる」とカミングアウトしたら、目の前で「俺はそんな奴と…」と手で顔を覆って泣かれ、その場で捨てられたという苦い経験があります)
しかし、そんなドラァグクイーンにも、ときには恋のチャンスが巡ってくることがあります。ふつうにゲイとしてパートナーを見つける方もいらっしゃいますが、世の中には、トランスジェンダー女性やドラァグクイーンとセックスしたり、つきあったりもするノンケ男性がいて、そういう人と出会うことがあるのです(果たしてそういう男性をノンケと言っていいのかどうかわかりませんが、結構たくさんいるのは確かです。そういう風俗店もありますし、全国のいろんなハッテン場で女装者とノンケ男性とがハッテンしています)
このフランス発の『パロマ』という短編映画は、ドラァグクイーンのロマンスを描いた作品です。
これまで数々のドラァグクイーン映画がありましたが、だいたいが孤高の存在だったり、恋には恵まれない、でもクイーンの仲間たちがいるから支え合って強く生きていけるし、ステージでは最高に輝く、しかし時には仲間の誰か(や恋人)がヘイトクライムにあったり、亡くなったり…といった物語だったと思います。ドラァグクイーンが周囲の人たちを助けたり、「よき隣人」として描かれる作品もありました。
そんななか、こんなに直球で恋を描き、恋で幸せになる姿を描いたセクシーな映画は珍しいです。初めてかもしれません。
<あらすじ>
死んだ恋人の遺灰が入った骨壷を盗んだドラァグクイーンのパロマは、無口で物憂げなトラック運転手のマイクと出会う。トラックでパリまで一緒に行くことになった二人は、途上で孤独感を克服していく…。





ドラァグクイーンのパロマがショーをするためにパリに向かおうとしてトラックに乗せてもらい、その運転手のマイクと心が通いあい…というお話です。このマイクという運転手が、まあ見事に、昔のゲイ雑誌の小説とかに出てきそうなタイプの、口下手で、ファッションにあまり気をつかってなくて、恋に縁がない、ずんぐりむっくりした熊のようなトラック野郎なのです。そんな素朴でイモっぽいトラック野郎が、初めはぶっきらぼうで、ちょっと迷惑そうな感じで接しているのですが、(たぶん女性とのデートや恋愛もずいぶんご無沙汰だと思うのですが)パロマと道中を共にし、いろいろ話したり、一緒にディナーを食べたり、また、ひょんなことからパリのクラブでパロマのショーも見て、すっかりパロマに魅了されてしまうのです…。ああ、なんて素敵なロマンス。夢のよう…一度でいいからこんな恋をしてみたかった…と身悶えしました。
パロマのドラァグのスタイルもショーも素晴らしいし、カッコいいです(パロマは「ドラァグ・レース・フランス」のファーストシーズンにも出演しています。ちなみにパロマという名前はペドロ・アルモドバルの映画と、パロマ・ピカソにインスパイアされて名付けたんだそう)
音楽もフレンチなエレクトロポップで素敵です(最初に「ピート・バーンズに捧げる」と書かれているので、たぶん監督がそういう系の音楽が好きなんだと思います。ちなみに主役のパロマを演じているのが監督です)
とても好きです。あと3回くらい観たいです。
マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル(MyFFF)でオンライン配信されています。しかも無料。2月13日までです。
いろんなメディアがこの映画祭に参加していて、GYAO!もその一つです(※GYAO!は3月いっぱいで終了ですね…これまでたくさんのLGBTQ映画も配信してくれました。ありがとうございました)
(文:後藤純一)
パロマ
2021年/フランス/28分/監督:ユーゴ・バルダン
マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル(MyFFF)で1月13日〜2月13日に配信
INDEX
- 映画『恋人はアンバー』(レインボー・リール東京2021)
- 台湾から届いた感動のヒューマン・ミステリー映画『親愛なる君へ』
- 日本で初めて、公募で選ばれたトランス女性がトランス女性の役を演じた記念碑的な映画『片袖の魚』
- 愛と自由とパーティこそが人生! 映画『シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち』レビュー
- 苛烈なホモフォビアに直面しながらも必死に愛し合おうとするけなげな二人…しかし後半は全く趣旨が変わる不思議な映画『デュー あの時の君とボク』
- かけがえのない命、かけがえのない愛――映画『スーパーノヴァ』
- プライド月間にふさわしい観劇体験をぜひ――劇団フライングステージ『PINK ピンク』『お茶と同情』
- 同性と結婚するパパが許せない娘や息子の葛藤を描いた傑作ラブコメ映画『泣いたり笑ったり』
- 家族的な愛がホモフォビアの呪縛を解き放っていく様を描いたヒューマンドラマ: 映画『フランクおじさん』
- 古橋悌二さんがゲイであること、HIV+であることをOUTしながら全世界に届けた壮大な「LOVE SONG」のような作品:ダムタイプ『S/N』
- 恋愛・セックス・結婚についての先入観を取り払い、同性どうしの結婚を祝福するオンライン演劇「スーパーフラットライフ」
- 『ゴッズ・オウン・カントリー』の監督が手がけた女性どうしの愛の物語:映画『アンモナイトの目覚め』
- 笑いと感動と夢と魔法が詰まった奇跡のような本当の話『ホモ漫画家、ストリッパーになる』
- ラグビーの名門校でホモフォビアに立ち向かうゲイの姿を描いた感動作:映画『ぼくたちのチーム』
- 笑いあり涙ありのドラァグクイーン映画の名作が誕生! その名は『ステージ・マザー』
- 好きな人に好きって伝えてもいいんだ、この街で生きていってもいいんだ、と思える勇気をくれる珠玉の名作:野原くろ『キミのセナカ』
- 同性婚実現への思いをイタリアらしいラブコメにした映画『天空の結婚式』
- 女性にトランスした父親と息子の涙と歌:映画『ソレ・ミオ ~ 私の太陽』(マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル)
- 女性差別と果敢に闘ったおばあちゃんと、ホモフォビアと闘ったゲイの僕との交流の記録:映画『マダム』(マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル)
- 小さな村のドラァグクイーンvsノンケのラッパー:映画『ビューティー・ボーイズ』(マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル)
SCHEDULE
- 01.23LADY GAGA NIGHT







